[PE41] 子どもを育む学校・家庭・地域間連携に関する研究(1)
地域に根ざした学校運営におけるチームワーク尺度の作成
Keywords:地域連携, 学校運営チームワーク, 基準関連妥当性
学校教育における地域住民・保護者との連携,すなわち学校運営チームワークは,規範意識や社会性の向上をはじめとする子どもへの教育効果が期待され,教育政策上のニーズが高い問題であるものの(文部科学省, 2015),その測定方法は確立されていない。そこで本研究では,学校運営におけるチームワーク尺度を作成し,信頼性と妥当性を検証することを目的とする。学校運営におけるチームワークは,看護師チームを対象とした尺度を作成した三沢ら(2009)と同様,チーム志向性,チーム・リーダーシップ,チームプロセスの3因子構造を持つと考えられる(吉田ら, 2017)。基準関連妥当性の検証のため,地域住民と教師への信頼,集団アイデンティティ,そして集団内葛藤を取り上げる。地域住民と教師への信頼に対しては3因子いずれも正の影響を示し,集団内葛藤に対してはいずれも負の影響を示すと予測した。リーダーシップは集団アイデンティティとは独立した概念であるとの知見(Hirst et al., 2009)を踏まえ,集団アイデンティティにはチーム志向性とチームプロセスが正の影響を示すと予測した。
方 法
対象者と手続き 株式会社クロス・マーケティングに依頼し,小中学校に通う子どもの保護者500名を対象にweb調査を実施した。対象の年齢層は30歳代から50歳代の間とした。回答者自身がPTA会長または副会長であると回答した5名を除外し,495名を分析対象とした。
測定内容 下記の心理尺度への回答を求めた。(1) 学校運営チームワーク 学校運営に携わる当事者の発話が3因子に対応することを見いだした吉田ら(2017)の面接調査を踏まえ,36項目を作成した(5件法)。(2) 教師と地域住民への信頼 一般的信頼尺度(山岸, 1998)のうち,対象を限定した測定が可能な4項目の表現を一部変更して用いた(5件法)。(3) 集団アイデンティティ 尾関・吉田(2007)の尺度の主語を「この集団(の一員)」に変更して用いた(12項目5件法)。(4) 集団内葛藤 村山・三浦(2012)の尺度を用いて,教師・地域住民と保護者との間の葛藤認識について尋ねた(9項目7件法)。
結果と考察
学校運営におけるチームワーク尺度の因子構造の検討 固有値の減衰状況やMAPをもとに因子数を3と指定した探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を実施したところ,想定どおりの3因子に分かれた。次に3因子モデルについて確認的因子分析を実施した。十分な適合度が得られなかったことから,修正指標と負荷量,および意味内容の重複を考慮して5項目を削除したうえで再度分析を行った。その結果,RMSEA = 0.058, CFI = 0.934, TLI = 0.929, SRMR = 0.044であったことから,モデルは適合したと判断した。信頼性係数を算出したところ,十分な信頼性が確認された(ωs > .93)。
基準関連妥当性の検討 各基準関連変数を目的変数とした重回帰分析(強制投入法)を実施した(Table 1)。教師と地域住民への信頼および集団アイデンティティに対しては予測どおりの影響が見られた。集団内葛藤に対してチームプロセスが有意な影響を示さなかったのは,積極的なコミュニケーションをとる保護者集団では葛藤が低減されるだけでなく,意見の対立を招くこともあるため,その影響が相殺されたものと考えられる。
以上のことから,学校運営におけるチームワーク尺度は一定の因子的妥当性と基準関連妥当性を備えているものと判断できる。今後はこの尺度を利用して,地域に根差した学校運営の教育効果を検証することが望まれる。
方 法
対象者と手続き 株式会社クロス・マーケティングに依頼し,小中学校に通う子どもの保護者500名を対象にweb調査を実施した。対象の年齢層は30歳代から50歳代の間とした。回答者自身がPTA会長または副会長であると回答した5名を除外し,495名を分析対象とした。
測定内容 下記の心理尺度への回答を求めた。(1) 学校運営チームワーク 学校運営に携わる当事者の発話が3因子に対応することを見いだした吉田ら(2017)の面接調査を踏まえ,36項目を作成した(5件法)。(2) 教師と地域住民への信頼 一般的信頼尺度(山岸, 1998)のうち,対象を限定した測定が可能な4項目の表現を一部変更して用いた(5件法)。(3) 集団アイデンティティ 尾関・吉田(2007)の尺度の主語を「この集団(の一員)」に変更して用いた(12項目5件法)。(4) 集団内葛藤 村山・三浦(2012)の尺度を用いて,教師・地域住民と保護者との間の葛藤認識について尋ねた(9項目7件法)。
結果と考察
学校運営におけるチームワーク尺度の因子構造の検討 固有値の減衰状況やMAPをもとに因子数を3と指定した探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を実施したところ,想定どおりの3因子に分かれた。次に3因子モデルについて確認的因子分析を実施した。十分な適合度が得られなかったことから,修正指標と負荷量,および意味内容の重複を考慮して5項目を削除したうえで再度分析を行った。その結果,RMSEA = 0.058, CFI = 0.934, TLI = 0.929, SRMR = 0.044であったことから,モデルは適合したと判断した。信頼性係数を算出したところ,十分な信頼性が確認された(ωs > .93)。
基準関連妥当性の検討 各基準関連変数を目的変数とした重回帰分析(強制投入法)を実施した(Table 1)。教師と地域住民への信頼および集団アイデンティティに対しては予測どおりの影響が見られた。集団内葛藤に対してチームプロセスが有意な影響を示さなかったのは,積極的なコミュニケーションをとる保護者集団では葛藤が低減されるだけでなく,意見の対立を招くこともあるため,その影響が相殺されたものと考えられる。
以上のことから,学校運営におけるチームワーク尺度は一定の因子的妥当性と基準関連妥当性を備えているものと判断できる。今後はこの尺度を利用して,地域に根差した学校運営の教育効果を検証することが望まれる。