[PE58] 小学生いじめ観と児童の心理的側面を起因とする教育的諸課題の要因との関連の検討
Keywords:いじめ, 自尊感情, 意欲
問題と目的
教育現場には，児童生徒の心理的側面を起因とする様々な諸課題が山積されるが，これら教育的諸課題に対応するために，「学級崩壊」「学習意欲」「自尊感情」等様々な視点をふまえて，対策となるアプローチがなされている。しかし，それらは各課題一つ一つに丁寧に対応されることを想定されており，教育現場の多忙な状況をふまえると，実践を行うためには十分な時間確保ができないとも考えることができる。これに対応するため，教育的諸課題を把握するためのいくつかの視点が互いに関連をしていることが明らかになれば，それらに対する取り組みをより包括的なアプローチとすることができると考える。
そこで本研究は，教育的諸課題の中でも特に深刻な課題とも考えらえる「いじめ問題」を核に据え，その他教育的諸課題との関連を検討したい。
方 法
(1)調査時期2017年6～7月。
(2)調査対象大阪府下及び兵庫県下小学校４～６年生314名のうち，いずれの質問項目にも欠損値がない303名を分析対象者とした。
(3)倫理的配慮
本調査は，名古屋大学大学院教育発達科学研究科倫理委員会の承認並びに大阪教育大学倫理委員会の承認を受け実施した。
(4)調査内容：①「小学生いじめ観」の測定
四辻・水野（投稿中）の「小学生いじめ観尺度」3因子11項目を使用した。
②「小学校高学年児童自己成長意欲」の測定
四辻・水野（2016）の「小学校高学年児童自己成長意欲尺度」2因子14項目を使用した。
③「小学生学級生活志向性」の測定
四辻・水野（投稿中）の「小学生学級生活志向性尺度」5因子20項目を使用した。
④「自尊感情」の測定
Rosenberg（1965）の自尊感情尺度を山本ら（1982）が翻訳したものを小学生が理解しやすいよう修正した1因子10項目を使用した。
⑤「学級満足度」及び「学校生活意欲」の測定
QU（河村，2007）を実施した。「学級満足度」は2因子12項目，「学校生活意欲」は3因子9項目から構成される。
結 果
「小学生いじめ観」「小学校高学年児童自己成長意欲」「小学生学級生活志向性」「自尊感情」の関連
「小学生学級生活志向性」が「小学生いじめ観」「小学校高学年児童自己成長意欲」「自尊感情」「学級満足度」「学校生活意欲」に影響を与えるパス，「小学生いじめ観」が「小学校高学年児童自己成長意欲」「学級満足度」「学校生活意欲」に影響を与えるパス，「自尊感情」が「小学校高学年児童自己成長意欲」「学級満足度」「学校生活意欲」に与えるパスという仮説モデルを作成し，パス解析を行った。その際， 5％水準で有利とならなかったパスを消去しながら分析を繰り返し行った。その結果，最終的なモデルの適合度は，χ2(79)＝158.355(p<.01)，GFI=.939 AGFI=.896，CFI=.943，RMSEA=.058であり，一定の適合度が得られた。
考 察
「他者重視」より，「いじめ解決可能」「社会性スキル成長意欲」「学習性スキル成長意欲」「承認」「学習意欲」への有意な正のパス，「先生重視」より「社会性スキル成長意欲」「学習性スキル成長意欲」「承認」「友達関係」「学習意欲」「学級の雰囲気」への有意な正のパス，「自分重視」より「いじめ一定理解」「被侵害」への有意な正のパス，「自分重視」より「自尊感情」への有意な負のパス，「楽しさ重視」から「いじめ一定理解」「社会性スキル成長意欲」「学習意欲」への有意な正のパス，「親友重視」から「いじめ解決可能」への有意な負のパス，「自尊感情」より「承認」「友達関係」「学習意欲」「学級の雰囲気」への有意な正のパス，「自尊感情」より「被侵害」への有意な負のパスが見られた。これらより，「小学生いじめ観」とその他，児童の心理的側面を起因とする教育的諸課題の要因との関連があることが示唆された。
教育現場には，児童生徒の心理的側面を起因とする様々な諸課題が山積されるが，これら教育的諸課題に対応するために，「学級崩壊」「学習意欲」「自尊感情」等様々な視点をふまえて，対策となるアプローチがなされている。しかし，それらは各課題一つ一つに丁寧に対応されることを想定されており，教育現場の多忙な状況をふまえると，実践を行うためには十分な時間確保ができないとも考えることができる。これに対応するため，教育的諸課題を把握するためのいくつかの視点が互いに関連をしていることが明らかになれば，それらに対する取り組みをより包括的なアプローチとすることができると考える。
そこで本研究は，教育的諸課題の中でも特に深刻な課題とも考えらえる「いじめ問題」を核に据え，その他教育的諸課題との関連を検討したい。
方 法
(1)調査時期2017年6～7月。
(2)調査対象大阪府下及び兵庫県下小学校４～６年生314名のうち，いずれの質問項目にも欠損値がない303名を分析対象者とした。
(3)倫理的配慮
本調査は，名古屋大学大学院教育発達科学研究科倫理委員会の承認並びに大阪教育大学倫理委員会の承認を受け実施した。
(4)調査内容：①「小学生いじめ観」の測定
四辻・水野（投稿中）の「小学生いじめ観尺度」3因子11項目を使用した。
②「小学校高学年児童自己成長意欲」の測定
四辻・水野（2016）の「小学校高学年児童自己成長意欲尺度」2因子14項目を使用した。
③「小学生学級生活志向性」の測定
四辻・水野（投稿中）の「小学生学級生活志向性尺度」5因子20項目を使用した。
④「自尊感情」の測定
Rosenberg（1965）の自尊感情尺度を山本ら（1982）が翻訳したものを小学生が理解しやすいよう修正した1因子10項目を使用した。
⑤「学級満足度」及び「学校生活意欲」の測定
QU（河村，2007）を実施した。「学級満足度」は2因子12項目，「学校生活意欲」は3因子9項目から構成される。
結 果
「小学生いじめ観」「小学校高学年児童自己成長意欲」「小学生学級生活志向性」「自尊感情」の関連
「小学生学級生活志向性」が「小学生いじめ観」「小学校高学年児童自己成長意欲」「自尊感情」「学級満足度」「学校生活意欲」に影響を与えるパス，「小学生いじめ観」が「小学校高学年児童自己成長意欲」「学級満足度」「学校生活意欲」に影響を与えるパス，「自尊感情」が「小学校高学年児童自己成長意欲」「学級満足度」「学校生活意欲」に与えるパスという仮説モデルを作成し，パス解析を行った。その際， 5％水準で有利とならなかったパスを消去しながら分析を繰り返し行った。その結果，最終的なモデルの適合度は，χ2(79)＝158.355(p<.01)，GFI=.939 AGFI=.896，CFI=.943，RMSEA=.058であり，一定の適合度が得られた。
考 察
「他者重視」より，「いじめ解決可能」「社会性スキル成長意欲」「学習性スキル成長意欲」「承認」「学習意欲」への有意な正のパス，「先生重視」より「社会性スキル成長意欲」「学習性スキル成長意欲」「承認」「友達関係」「学習意欲」「学級の雰囲気」への有意な正のパス，「自分重視」より「いじめ一定理解」「被侵害」への有意な正のパス，「自分重視」より「自尊感情」への有意な負のパス，「楽しさ重視」から「いじめ一定理解」「社会性スキル成長意欲」「学習意欲」への有意な正のパス，「親友重視」から「いじめ解決可能」への有意な負のパス，「自尊感情」より「承認」「友達関係」「学習意欲」「学級の雰囲気」への有意な正のパス，「自尊感情」より「被侵害」への有意な負のパスが見られた。これらより，「小学生いじめ観」とその他，児童の心理的側面を起因とする教育的諸課題の要因との関連があることが示唆された。