[PE61] 自己像の不安定性がいじめ加害行動に及ぼす影響
1学年間による縦断調査
Keywords:自己像の不安定性, いじめ加害経験, いじめ被害経験
問題と目的
平成27年度における小学校のいじめの認知件数は151,692件,中学校では59,502件も報告されており(文部科学省, 2017),火急に取り組まなければならない課題である。
いじめに関与していない者の多くは,その後もいじめに関与しない傾向がみられ,安定していることが示されているものの,加害者や被害者,加害者と被害者の両方の立場で関与しているものは,その立場が変わる場合もあることが示されている(Burk, Armstrong, Park, Zahn-Waxler, Klein, & Essex, 2011)。いじめ被害者に関しても,常に被害者であるとは限らず,加害者となる場合もあると報告されている(Hazler & Carney, 2000)。
いじめ被害者が加害行動を行うことには,自己像の不安定さが関係していると考えられる(原田, 2016)。自己像とは,自己を客体視する時に浮上する自己に対する像であり,その自己像が体制化されて体形的に統合されたものが自己概念である(榎本, 2013)。これまでの研究では,いじめ被害や自己像の不安定性がいじめ加害と関係する可能性が示唆されているものの(原田, 2016),いじめ被害と自己像の不安定性の因果関係は明らかにされてこなかった。そこで,本研究では3時点の調査によってこれらの関係を明らかにすることが第1の目的である。また,原田 (2016) では中学生が対象であったが,小学生でもこの関係がみられるかを検証することが第2の目的である。
方 法
調査対象者 小学校5,6年生420名(男子222名,女子198名),中学校1~3年生942名(男子449名,女子493名)の計1,362名であった。
調査時期 1学期,2学期,3学期の各学期において1回ずつ調査を実施した。
調査手続き 学級単位で質問紙調査を実施した。
質問紙の構成 自己像の不安定性:小塩 (2001) の5項目であった。いじめの被害経験と加害経験: 岡安・高山 (2000) で用いられているいじめ加害経験に関する3項目といじめ被害経験に関する3項目を使用した。第1回目の調査では,今の学年になってから回答時までのことを回答してもらった。第2回目,第3回目の調査では,それぞれ第1回目の調査,第2回目の調査以降から回答時までのことを回答してもらった。これらの項目を,あてはまらない(1点),あまりあてはまらない(2点),どちらでもない(3点),ややあてはまる(4点),とてもあてはまる(5点)の5件法で尋ねた。
結 果
自己像の不安定性 因子分析(最尤法)を行ったところ,第1~3回目のいずれにおいても1因子構造であった。
いじめの被害経験と加害経験 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行ったところ,第1~3回目のいずれにおいても2因子構造であった。
尺度の得点化 それぞれの項目間の信頼性係数は十分高かったので(α=.75~.81),1項目あたりの平均値を算出し,尺度得点とした。
いじめ被害経験/加害経験の縦断分析 Figure1の交差遅延モデルを構築し(誤差項の記載は省略),多母集団同時分析を行った。モデルは採択され(χ2(12)=11.48, n.s.),適合度指標や情報量規準はGFI=1.00,AGFI=.99,CFI=1.00,RMSEA=.00,AIC=167.48であった。有意または有意傾向が示されたパス係数はTable1の通りであった。
平成27年度における小学校のいじめの認知件数は151,692件,中学校では59,502件も報告されており(文部科学省, 2017),火急に取り組まなければならない課題である。
いじめに関与していない者の多くは,その後もいじめに関与しない傾向がみられ,安定していることが示されているものの,加害者や被害者,加害者と被害者の両方の立場で関与しているものは,その立場が変わる場合もあることが示されている(Burk, Armstrong, Park, Zahn-Waxler, Klein, & Essex, 2011)。いじめ被害者に関しても,常に被害者であるとは限らず,加害者となる場合もあると報告されている(Hazler & Carney, 2000)。
いじめ被害者が加害行動を行うことには,自己像の不安定さが関係していると考えられる(原田, 2016)。自己像とは,自己を客体視する時に浮上する自己に対する像であり,その自己像が体制化されて体形的に統合されたものが自己概念である(榎本, 2013)。これまでの研究では,いじめ被害や自己像の不安定性がいじめ加害と関係する可能性が示唆されているものの(原田, 2016),いじめ被害と自己像の不安定性の因果関係は明らかにされてこなかった。そこで,本研究では3時点の調査によってこれらの関係を明らかにすることが第1の目的である。また,原田 (2016) では中学生が対象であったが,小学生でもこの関係がみられるかを検証することが第2の目的である。
方 法
調査対象者 小学校5,6年生420名(男子222名,女子198名),中学校1~3年生942名(男子449名,女子493名)の計1,362名であった。
調査時期 1学期,2学期,3学期の各学期において1回ずつ調査を実施した。
調査手続き 学級単位で質問紙調査を実施した。
質問紙の構成 自己像の不安定性:小塩 (2001) の5項目であった。いじめの被害経験と加害経験: 岡安・高山 (2000) で用いられているいじめ加害経験に関する3項目といじめ被害経験に関する3項目を使用した。第1回目の調査では,今の学年になってから回答時までのことを回答してもらった。第2回目,第3回目の調査では,それぞれ第1回目の調査,第2回目の調査以降から回答時までのことを回答してもらった。これらの項目を,あてはまらない(1点),あまりあてはまらない(2点),どちらでもない(3点),ややあてはまる(4点),とてもあてはまる(5点)の5件法で尋ねた。
結 果
自己像の不安定性 因子分析(最尤法)を行ったところ,第1~3回目のいずれにおいても1因子構造であった。
いじめの被害経験と加害経験 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行ったところ,第1~3回目のいずれにおいても2因子構造であった。
尺度の得点化 それぞれの項目間の信頼性係数は十分高かったので(α=.75~.81),1項目あたりの平均値を算出し,尺度得点とした。
いじめ被害経験/加害経験の縦断分析 Figure1の交差遅延モデルを構築し(誤差項の記載は省略),多母集団同時分析を行った。モデルは採択され(χ2(12)=11.48, n.s.),適合度指標や情報量規準はGFI=1.00,AGFI=.99,CFI=1.00,RMSEA=.00,AIC=167.48であった。有意または有意傾向が示されたパス係数はTable1の通りであった。