The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 4:00 PM - 6:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF01] 小中学校における学級の攻撃行動の捉え方と攻撃行動の関連

関口雄一 (山形大学)

Keywords:攻撃行動, 学級規範, 児童生徒

題と目的
 児童期・青年期において,仲間集団と攻撃行動の関連は多くの研究で指摘されている。例えば,関係性攻撃が頻繁にみられる学級に在籍する児童は,1年後により関係性攻撃を示すようになることが報告されている(Kuppens,Grietens,Onghena, Michiels,& Subramanian,2008)。また,学級の攻撃行動への容認性が,児童の攻撃行動を促進させることも明らかにされている(Henry et al.,2000;Werner & Hill,2011)。これらの先行研究より,仲間集団内における攻撃行動の生起頻度や寛容性などの攻撃行動の捉え方が,児童生徒個人の攻撃行動傾向に関連する可能性が考えられる。しかし,先行研究には,対象とされた攻撃行動の形態が限定されており,網羅的な検討が行われていないという問題がある。そこで,本研究では表出性攻撃と関係性攻撃の2つの攻撃行動の形態に関する捉え方と攻撃行動の関連について,マルチレベルモデルをあてはめ,学級水準と児童水準の両方の検討を行うことを目的とする。

方  法
(1) 対象者 関東圏内の2県に属する小学校4校と中学校3校の児童生徒1010名(小学生285名,中学生725名),37学級であった。
(2) 調査内容 (a)攻撃行動の捉え方尺度20項目。本研究で独自に作成した表出性攻撃と関係性攻撃の容認性や頻度について問う質問項目で,「正当化」,「頻度・有用性」,「否定的認識」の3下位尺度から構成される。4件法であった。(b)小学生用P-R攻撃性質問紙(坂井・山崎, 2004)から「表出性攻撃」と「関係性攻撃」7項目ずつ計14項目を抜粋した。4件法であった。
(3) 調査手続き 調査協力の同意を得られた学校にて,学級ごとに一斉配布で調査を実施した。
(4) 倫理的配慮 調査協力の同意における児童生徒の自己決定の権利,個人情報の保護等を質問紙表紙に記載の上,調査時に説明を行った。なお,本研究は著者の所属機関の研究倫理審査委員会の許可を得て実施された。

結果と考察
 本研究で使用する尺度の平均値と標準偏差,内的一貫性,級内相関係数およびデザインエフェクトをTable 1に示す。
 学級の攻撃行動の捉え方と児童生徒の攻撃行動の関連を検討するために,Mplus8によるマルチレベル構造方程式モデリングによる分析を行った(Table 2)。モデルの適合度は,CFI=1.00,TLI=1.00,RMSEA=0.00,SRMR(Between)=0.01,SRMR(Within)=0.00であった。
 学級レベルでは,攻撃行動の捉え方のうち「頻度・有用性」のみが2種類の攻撃行動に対して有意な正の関連を示した。すなわち,攻撃行動を頻繁に生じるものと捉えている学級の傾向と,そこに在籍する児童生徒の攻撃行動に関連があることが示された。なお,児童生徒レベルでは攻撃行動の捉え方の3下位尺度得点の全てが攻撃行動と有意な関連を示した。この結果から,学級内で規範とされたり,標準的とされる行動が,モデリングや社会的相互作用を通して,児童生徒の攻撃行動の形成にかかわっている可能性が示唆された。

付  記
本研究はJPSP科研費(課題番号16K20941)の助成を受けて実施された。