日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

2018年9月16日(日) 16:00 〜 18:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF06] 自分の行動を他者が決定をすることに対する判断に関する発達的検討

村瀬俊樹1, 増田早希#2 (1.島根大学, 2.島根大学)

キーワード:社会的領域理論, 小中学生, 決定者

問  題
 本研究は,社会的領域理論に基づき,各領域の行動を他者が決定することの正当性をどのように考えるのか,その発達過程を検討した。道徳,慣習,個人の3つの領域に,自己管理領域,そして,クラスという集団に関する行動としての集団領域を加えた5つの領域の行動に関する他者決定を取り上げた。また,他者としては,先生による決定,クラスによる決定を比較検討した。

方  法
研究協力者 
 小学3年生75名,5年生49名,中学2年生53名,大学生46名が研究協力者となった。研究協力者をクラス決定群,先生決定群の2群に振り分けた。
実験計画 
 領域(道徳,慣習,集団,個人,自己管理)×学年(小3,小5,中2,大学生)×決定者(クラス決定,先生決定)の3要因であった。
各領域の行動
 道徳領域は「人のものを勝手に取らない」,慣習領域は「家の中ではくつを脱ぐ」,集団領域は「学級文集の締め切りをいつにするか」,個人領域は「天気の日は室内ではなく外で遊ぶ」,自己管理領域は「毎日,ごはんがわりにおかしを食べない」とした。
決定者
 クラス決定は,「クラスのみんなで多数決をしてあることを決めようとしている」,先生決定は,「先生があることを決めようとしている」とした。
質問内容
(1)そうすることを決定者が決めてもよいか(正当性判断),(2)決めた場合,いやでも従わなければならないと思うか(従属義務判断),(3)決めた場合,あなたはその通り行動するか(従属行動),(4)決めなかった場合にその通りにしなくていいと思うか(非決定時従属義務がないことの判断)について,4件法で回答を求めた。
手続き
 質問紙により調査を実施した。教示は小学生には各クラス担任が行い,中学生・大学生には調査者が行った。

結  果
 4つの質問項目への回答について,領域×学年×決定者の3要因分散分析を行ったところ,ほぼ同様の結果が得られた。ここでは,正当性判断の分析結果を記述する。
正当性判断
 学年の主効果が見られ,小3は他の学年よりも他者決定の正当性を認めていた。また,小5は中2よりも他者決定の正当性を認めていなかった。領域の主効果も見られ,個人領域よりも慣習領域・自己管理領域に対して,またそれら3領域よりも集団領域・道徳領域に対して他者決定の正当性を認めていた。決定者の主効果も見られ,クラス決定よりも先生決定の正当性を認めていた。
 領域×学年の交互作用が見られ,個人領域は小3から他の領域よりも他者決定の正当性を認めていないが,自己管理領域と慣習領域は中2になって道徳領域や集団領域よりも他者決定の正当性を認めないようになっていた。また,どの領域においても小3は他の学年よりも他者決定の正当性を認めているが,どの領域も小5になると他者決定を認めない傾向が強まっていた。また,中2になって道徳領域や集団領域は小5よりもむしろ他者決定を認めるようになり,慣習領域については中2から大学生にかけても他者決定を認めないようになっていた。(Figure 1)

考  察
 他者決定の正当性判断から見ると,個人領域と道徳領域の区別は小3よりすでにみられているが,自己管理領域は,中2になって道徳領域と区別されるようである。また慣習領域と集団領域の区別も中2になってされ始めるようである。
 小3が他者決定の正当性を認めているのに対して,小5で一旦すべてにわたって認めなくなるのは,自我の発達が関係していると考えられる。
(増田早希の現所属は新潟県庁である)