[PF22] 大学の専門的知識における反復学習の効果
Keywords:反復, 記憶定着, テスト
問題と目的
薬学教育において専門用語に関する知識の習得は重要であり,国家試験における必須事項である。記憶における頑健な現象として分散効果が知られているが(北尾,2000),これは反復学習をする場合に一定の時間的間隔をあけることの有効性を示唆している。水野(2002)は,分散効果に関して再活性化量が記憶を規定するという再活性化説を提唱した。再活性化説に従えば,学校教育において最適な時(再活性化量が最大になる時)に再学習することが奨励される。すなわち,いつ復習するかということが記憶成績を規定するのである。いつ復習するのが適切かという問題に関しては個人差があるので検討は難しいが,単に反復学習の効果を検討する意義はある。大学の授業において反復学習は少ないが,本報では大学生における薬学に関する専門用語について反復学習の導入が,専門用語の記憶定着に貢献するか否かを検討する。
方 法
参加者 薬学専攻の大学生であり,4年生94名(男51,女43),6年生103名(男54,女49)であった。これらの者は,外部模擬試験である試験(以下,IT-Ⅰ)を受験させ,講義開始前の学力を測定した。ただし,これらの参加者の中で下記のテストを1回でも受験しなかった者は分析から除外した(分析対象は4年生80名,6年生83名)。
材料 a)小テスト テストの形式については,1問1答形式を採用し,正誤問題の合計10問とした3種類の小テスト(以下,ST-A,ST-B,ST-Cとする。)を作成した。また,ST-A,ST-B,ST-Cの試験範囲については,前回の講義内容(A,B,C)からの出題とした。さらに,4年生のテストについては前回に実施したテストの内容と全く同一とならないよう,問題の順番について配慮した様式(ST-BA,ST-CBA)を採用した。b)解答用紙 解答用紙として,マークシートを採用した。c)採点 採点にはマークシートリーダーを使用した。
手続き 各テストは,参加者への事前の説明や予告をせず,授業開始前5分の時間帯を利用し,抜き打ちで実施された。問題用紙と解答用紙の各々1枚ずつを1セットとし,配布した。参加者は,正しい問題は1,誤っている問題は2とマークシートにマークをつけていった。4年生の小テストは,反復学習の効果を検証するために,以前に実施したテストの問題を含めて出題(ST-BA,ST-CBA)した。6年生の小テストは,前回の講義からの出題(ST-A, ST-B, ST-C)に限定した。両学年ともに最終の小テストは先に実施したテスト(ST-A, ST-B, ST-C)を組合せた合計30問からなるテスト(ST-ABC)であった。各テストの解答時間は1問につき30秒であり,解答終了後にマークシートを回収した。マークシートを回収した後,薬学生全員に正解を伝えるとともに,各自,問題用紙に正答を転記させた。
結果と考察
学年間の比較 Table 1には,IT-I及びST-ABCにおける各講義内容(A,B,C及びABC)に対応する正答率が示されている。IT-I正答率を比較したところ,6年生が4年生よりもその率の高かった(t=8.31, p <.001)。しかし,ST-ABCにおけるAに関する正答率(t=5.06, p <.001)及びABC全体正答率は4年生が6年生より正答率が高く(t=3.66, p <.001),B及びCには学年間の差はなかった。
反復学習の効果 4年生に対しては講義内容に関する小テストを反復実施したところ,Aの正答率が1回目は59.75(SD=15.08),2回目は64.50(20.12),3回目は75.50(21.38),4回目は81.88(18.17)となった(F=39.14, p<.001)。また,Bに関しても1回目が90.93(10.16),2回目が96.50(8.96),3回目が98.75(3.67)であった(F=25.52, p<.001)。さらに,Cの正答率も1回目が74.63(12.54),2回目が88.88(14.05)であった(F=82.50, p<.001)。
これらの結果は,当初の正答率が低かった4年生が反復学習をすることによって6年生よりもその正答率が向上し,情報の保持率が高まったことを示している。今後は,反復学習の時間間隔,回数についても検証し,専門的知識の定着に特化した教授法の工夫を提案することが課題である。
薬学教育において専門用語に関する知識の習得は重要であり,国家試験における必須事項である。記憶における頑健な現象として分散効果が知られているが(北尾,2000),これは反復学習をする場合に一定の時間的間隔をあけることの有効性を示唆している。水野(2002)は,分散効果に関して再活性化量が記憶を規定するという再活性化説を提唱した。再活性化説に従えば,学校教育において最適な時(再活性化量が最大になる時)に再学習することが奨励される。すなわち,いつ復習するかということが記憶成績を規定するのである。いつ復習するのが適切かという問題に関しては個人差があるので検討は難しいが,単に反復学習の効果を検討する意義はある。大学の授業において反復学習は少ないが,本報では大学生における薬学に関する専門用語について反復学習の導入が,専門用語の記憶定着に貢献するか否かを検討する。
方 法
参加者 薬学専攻の大学生であり,4年生94名(男51,女43),6年生103名(男54,女49)であった。これらの者は,外部模擬試験である試験(以下,IT-Ⅰ)を受験させ,講義開始前の学力を測定した。ただし,これらの参加者の中で下記のテストを1回でも受験しなかった者は分析から除外した(分析対象は4年生80名,6年生83名)。
材料 a)小テスト テストの形式については,1問1答形式を採用し,正誤問題の合計10問とした3種類の小テスト(以下,ST-A,ST-B,ST-Cとする。)を作成した。また,ST-A,ST-B,ST-Cの試験範囲については,前回の講義内容(A,B,C)からの出題とした。さらに,4年生のテストについては前回に実施したテストの内容と全く同一とならないよう,問題の順番について配慮した様式(ST-BA,ST-CBA)を採用した。b)解答用紙 解答用紙として,マークシートを採用した。c)採点 採点にはマークシートリーダーを使用した。
手続き 各テストは,参加者への事前の説明や予告をせず,授業開始前5分の時間帯を利用し,抜き打ちで実施された。問題用紙と解答用紙の各々1枚ずつを1セットとし,配布した。参加者は,正しい問題は1,誤っている問題は2とマークシートにマークをつけていった。4年生の小テストは,反復学習の効果を検証するために,以前に実施したテストの問題を含めて出題(ST-BA,ST-CBA)した。6年生の小テストは,前回の講義からの出題(ST-A, ST-B, ST-C)に限定した。両学年ともに最終の小テストは先に実施したテスト(ST-A, ST-B, ST-C)を組合せた合計30問からなるテスト(ST-ABC)であった。各テストの解答時間は1問につき30秒であり,解答終了後にマークシートを回収した。マークシートを回収した後,薬学生全員に正解を伝えるとともに,各自,問題用紙に正答を転記させた。
結果と考察
学年間の比較 Table 1には,IT-I及びST-ABCにおける各講義内容(A,B,C及びABC)に対応する正答率が示されている。IT-I正答率を比較したところ,6年生が4年生よりもその率の高かった(t=8.31, p <.001)。しかし,ST-ABCにおけるAに関する正答率(t=5.06, p <.001)及びABC全体正答率は4年生が6年生より正答率が高く(t=3.66, p <.001),B及びCには学年間の差はなかった。
反復学習の効果 4年生に対しては講義内容に関する小テストを反復実施したところ,Aの正答率が1回目は59.75(SD=15.08),2回目は64.50(20.12),3回目は75.50(21.38),4回目は81.88(18.17)となった(F=39.14, p<.001)。また,Bに関しても1回目が90.93(10.16),2回目が96.50(8.96),3回目が98.75(3.67)であった(F=25.52, p<.001)。さらに,Cの正答率も1回目が74.63(12.54),2回目が88.88(14.05)であった(F=82.50, p<.001)。
これらの結果は,当初の正答率が低かった4年生が反復学習をすることによって6年生よりもその正答率が向上し,情報の保持率が高まったことを示している。今後は,反復学習の時間間隔,回数についても検証し,専門的知識の定着に特化した教授法の工夫を提案することが課題である。