The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 4:00 PM - 6:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF35] 英単語記憶再生にプロソディと文脈が及ぼす影響

小田真実1, 湯澤正通2 (1.広島大学, 2.広島大学)

Keywords:プロソディ, リスニング

問題と目的
 日本人英語学習者が英語リスニングを苦手とする一因として,発話内容を有意味な単語のまとまりに区切る際に日本語と英語で単位が異なることが挙げられる。
 このような発話の分節の際には,超音節的情報であるプロソディが関連しているが(McQueen et al.,2001),特に言語のリズムが分節単位であることが多い。具体的には,日本語の場合は,子音と母音の組合せであるモーラ(Otake et al.,1993),英語は強勢であるストレス(Cutelr & Carter,1987)に基づいて分節が行われる。
 しかし,分節方略は言語への習熟によって変化しうることが指摘されている(水口・湯澤・李,2013)。また,これまでの分節方略に関する研究は,単語を呈示することで音素への分節に着目したものが多く,実際の発話場面において,分節単位がリスニングに対して,どのような影響をもつのかは検討されていない。
 したがって,本研究では,英語の分節単位であるストレス情報に着目し,ストレス情報が日本人英語学習者のリスニングに及ぼす影響を,単語分節時と,実際の発話形式に近い文章分節時の双方で検討する。また,英語リスニングにおける分節方略に関わることが予測される英語習熟度の影響も同時に検討する。

方  法
 実験計画 ストレス情報(参加者内:ストレス・フラット)×習熟度(参加者間:高・低)×呈示形式(参加者内:単語・文章)の3要因混合計画
 参加者 大学生・大学院生24名(平均年齢22.1歳,SD=1.9)。うち,男性6名。
 英語習熟度 参加者にTOEICテストにおける総合スコアを尋ねた。参加者のTOEICテストにおける平均点は,586.7点(SD=114.5)であった。
 英単語記憶再生課題 参加者に対して,単語形態または文章形態で英単語記憶再生課題を実施した。記憶再生対象語として,計24語を選定したが,単語頻出度が高く,かつ,日本語英語として常用されていない英単語であった。24語に対して,4パターンの刺激を作成した。刺激の内訳は,(1)ストレスの付随している英単語,(2)単調に発話された英単語,(3)ストレスの付随している英文,(4)単調に発話された英文の4つである。
 手続き 刺激の呈示はコンピュータで行い,実験参加者にはヘッドホンの着用を求めた。各刺激において,6刺激を音声呈示したのち,覚えている単語を口頭で再生を求めた。
 刺激は動画を用いて呈示した。単語刺激の場合,単語の文字数分のアンダーラインと音声を連動させて呈示した。文章刺激の場合,文章中の単語の文字数分のアンダーラインを呈示したが,口頭再生の対象となる単語は,その他のアンダーラインとは異なる色とし,その色の単語がターゲットとなることを明示する形で呈示した。刺激は全てカウンターバランスをとって呈示した。

結  果
 参加者全体のTOEICテストの平均スコアに基づき,平均スコア以上を習熟度高群,平均スコア以下を習熟度低群とした。習熟度高低群別の各刺激における平均再生数をTable1に示す。
 ストレス情報×習熟度×呈示形式の3要因分散分析を実施した。その結果,英語習熟度(F(1,22)=4.72,p<.05),ストレス情報(F(1,22)=12.14,p<.001)が有意,英語習熟度×呈示形式の交互作用が有意傾向であった(F(1,22)=3.52,p<.10)。
 ストレス情報×習熟度×呈示形式の交互作用における多重比較の結果から,習熟度低群は,文章刺激呈示におけるストレス情報(F(1,11)=9.84,p<.05)および,呈示形式(F(1,11)=8.25,p<.05)に有意差が見られた。すなわち,ストレスの付随した文章における単語再生成績が最も高く,他の刺激パターンにおける再生成績に有意差は見られなかった。
 他方,習熟度高群においては,ストレス情報に有意差が見られた(F(1,11)=9.91,p<.05)。よって,ストレスの付随した単語および文章は,単調に発話された単語および文章よりも再生成績が有意に高いという結果が得られた。