[PF38] 大学生における稼得意識のタイプ
Keywords:キャリア, 将来展望, ジェンダー
目 的
若者の貧困や非正規雇用が問題となっている現在,自ら稼ぐ意志の育成が重要である。松並・上野(2018)は稼ぐ意志を測定する稼得意識尺度を作成した。稼得意識尺度は,お金の話や稼ぐことをタブー視し扶養されることを志向する「稼得回避」(10項目),十分に稼ぎたいという「稼得意欲」(8項目),金銭に最上の価値をおく「稼得最重視」(7項目),良い収入を得る自信および経済的知識である「稼得自信・知識」(7項目)の4因子から成る。本研究の目的は,稼得意識尺度を用い,大学生にどのような稼得意識のタイプが存在するのか明らかにし,稼得意識を高めるのに有効なキャリア教育への示唆を得ることである。
方 法
2017年12月から2018年1月にかけ,大学生450名(女性200名,男性250名)を対象にweb調査を行った。平均年齢は19.64歳であった(SD=1.15)。
稼得意識尺度(松並・上野, 2018) 5件法。
平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)
(鈴木, 1994) 5件法。
時間的展望体験尺度(白井, 1994) 目標指向性因子のみを使用した。5件法。
結 果
稼得意識尺度の「稼得回避」(α=.72),「稼得意欲」(α=.72),「稼得最重視」(α=.72),「稼得自信・知識」(α=.68)の因子得点でクラスター分析(Ward法)を行い,稼得回避のみ低く他は高い「稼得意識高群」(n=117, 26.00%),稼得回避のみ高く他は低い「稼得意識低群」(n=38, 8.44%),稼得意欲も自信・知識もあるが同時に稼得を回避する「両価群」(n=137, 30.44%),稼得意欲が高く回避は低いが自信・知識がない「自信・知識無群」(n=158, 35.11%)の4クラスターに分類した。χ2検定の結果,男性は女性より稼得意識高群が,女性は男性より自信・知識無群が多かった(Table 1)。
SESRA-S(α=.85)と目標指向性(α=.81)がジェンダーおよびクラスターで異なるかを分散分析で検討した(Table2)。SESRA-Sではいずれの主効果も有意であり,女性が男性より高く,自信・知識無群が両価群および稼得意識高群より高かった。目標指向性では交互作用が有意だったので単純主効果の検定を行った。稼得意識低群で男性が女性より高く(F(1, 442)=4.08, p<.05),自信・知識無群で女性が男性より高かった(F(1, 442)=9.48, p<.01)。また,稼得意識低群の女性は他群の女性より目標指向性が低かった(F(3, 442)=9.80, p<.001)。
考 察
大学生の稼得意識は4タイプに分類され,稼得意識の高い群,低い群だけでなく,稼得に対する意欲と回避を併せ持つ群,稼ぎたいと思っていても自信や知識のない群も存在し,後者は女性に多いことが明らかとなった。また,通常女性では性役割にとらわれないことが稼得意識を高めると考えられるが,結果は異なり,男女とも稼ぎたいが自信・知識のない群が最も平等主義的性役割態度を有していた。仕事と家庭の両立を志向するからこそ,その困難さを感じ稼得への自信が低くなる可能性が考えられる。さらに,稼得意識の低さは将来の目標のなさと関連していたが,その様相はジェンダーによって違いもあった。ジェンダーの違いに考慮しながら,金銭に関する話をタブー視せず,将来の目標を持たせ稼得への自信や知識を高めるキャリア教育が必要と言える。
若者の貧困や非正規雇用が問題となっている現在,自ら稼ぐ意志の育成が重要である。松並・上野(2018)は稼ぐ意志を測定する稼得意識尺度を作成した。稼得意識尺度は,お金の話や稼ぐことをタブー視し扶養されることを志向する「稼得回避」(10項目),十分に稼ぎたいという「稼得意欲」(8項目),金銭に最上の価値をおく「稼得最重視」(7項目),良い収入を得る自信および経済的知識である「稼得自信・知識」(7項目)の4因子から成る。本研究の目的は,稼得意識尺度を用い,大学生にどのような稼得意識のタイプが存在するのか明らかにし,稼得意識を高めるのに有効なキャリア教育への示唆を得ることである。
方 法
2017年12月から2018年1月にかけ,大学生450名(女性200名,男性250名)を対象にweb調査を行った。平均年齢は19.64歳であった(SD=1.15)。
稼得意識尺度(松並・上野, 2018) 5件法。
平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)
(鈴木, 1994) 5件法。
時間的展望体験尺度(白井, 1994) 目標指向性因子のみを使用した。5件法。
結 果
稼得意識尺度の「稼得回避」(α=.72),「稼得意欲」(α=.72),「稼得最重視」(α=.72),「稼得自信・知識」(α=.68)の因子得点でクラスター分析(Ward法)を行い,稼得回避のみ低く他は高い「稼得意識高群」(n=117, 26.00%),稼得回避のみ高く他は低い「稼得意識低群」(n=38, 8.44%),稼得意欲も自信・知識もあるが同時に稼得を回避する「両価群」(n=137, 30.44%),稼得意欲が高く回避は低いが自信・知識がない「自信・知識無群」(n=158, 35.11%)の4クラスターに分類した。χ2検定の結果,男性は女性より稼得意識高群が,女性は男性より自信・知識無群が多かった(Table 1)。
SESRA-S(α=.85)と目標指向性(α=.81)がジェンダーおよびクラスターで異なるかを分散分析で検討した(Table2)。SESRA-Sではいずれの主効果も有意であり,女性が男性より高く,自信・知識無群が両価群および稼得意識高群より高かった。目標指向性では交互作用が有意だったので単純主効果の検定を行った。稼得意識低群で男性が女性より高く(F(1, 442)=4.08, p<.05),自信・知識無群で女性が男性より高かった(F(1, 442)=9.48, p<.01)。また,稼得意識低群の女性は他群の女性より目標指向性が低かった(F(3, 442)=9.80, p<.001)。
考 察
大学生の稼得意識は4タイプに分類され,稼得意識の高い群,低い群だけでなく,稼得に対する意欲と回避を併せ持つ群,稼ぎたいと思っていても自信や知識のない群も存在し,後者は女性に多いことが明らかとなった。また,通常女性では性役割にとらわれないことが稼得意識を高めると考えられるが,結果は異なり,男女とも稼ぎたいが自信・知識のない群が最も平等主義的性役割態度を有していた。仕事と家庭の両立を志向するからこそ,その困難さを感じ稼得への自信が低くなる可能性が考えられる。さらに,稼得意識の低さは将来の目標のなさと関連していたが,その様相はジェンダーによって違いもあった。ジェンダーの違いに考慮しながら,金銭に関する話をタブー視せず,将来の目標を持たせ稼得への自信や知識を高めるキャリア教育が必要と言える。