[PF45] 中国の大学生のネット友人関係と孤独感との関連に関する研究
Keywords:, 孤独感, ネット友人関係
問題と目的
インターネット友人(ネット友人)とは,インターネットを利用して,作った友人のことである。ネット友人は現実の友人と異なり,距離,人種,言語などによる制限が少ない。安藤ら(2005)の研究で,中学生はネットを利用することで,孤独感に対してポジティブな効果が認められた。近年中国もインターネットの発展で,青年期と思春期の人々はインターネットに依存することが年々増えてきている(中国青少年网瘾报告,2016)。この報告によれば,2400万人の青年期と思春期の人たちがインターネットに依存していた。このうち約半数はオンラインゲームに依存しており。13%はネット友人に依存していた。この調査では,しつけの厳しい親からのストレスがネットに依存する原因の一つと考えられた。上記の二つの研究だけでも,ネット友人を作ることにはメリットとデメリットがあることが示唆される。
本研究は,友人関係と孤独感という側面からインターネットを通じた友人関係について検討することを目的とする。
方 法
調査対象者は中国在住の大学生であった。今回の調査はインターネットを利用して,質問項目を作成した。そして,ネット上で質問項目を中国の大学生に配信して,データを収集した。回収できた大学生は53名(男性32名,女性21名)であった。平均年齢は23歳であった。
質問項目の構成尺度はUCLA孤独感尺度(20項目)とネット友人関係尺度(20項目)を用いて作成した。UCLA孤独感尺度は中国語に翻訳した。ネット友人関係尺度の項目は上東ら(2016)の研究の項目を参考にして,新たな質問項目を作成した上で中国語に翻訳した。
結 果
ネット友人関係尺度を因子分析(主成分分析,プロマックス法)した結果,3因子が抽出された。第一因子を「ネット友人に頼る」(α=.766),第二因子を「ネット友人のメリット」(α=.860),第三因子を「ネット友人への関心」(α=.618)と命名した。第一因子と第二因子の信頼性は高かったが第三因子の信頼性はやや低いという結果であった。
UCLA孤独感尺度の因子分析を(主成分分析,プロマックス法)因子負荷量が低い2項目を削除して行ったところ,2因子が抽出された。第一因子を「孤立感」(α=.814),第二因子を「グループ感」(α=.824)と命名した。
友人関係尺度とUCLA孤独感尺度の下位因子間の相関を求めると,「ネット友人に頼る」と「ネット友人のメリット」とに間には中程度の正の相関関係が認められた(r=.667,p<.01)。「ネット友人のメリット」と「ネット友人への関心」との間には弱い負の相関関係が認められた(r=-.287,p<.05)。また,「ネット友人に頼る」と「孤立感」との間に弱い正の相関関係が認められた(r=.300,p<.05)。他の因子の間には有意な相関が認められなかった。
考 察
分析の結果,中国の大学生のネット友人関係と孤独感との間に有意な相関は見られなかった。下位因子間の相関で,大学生がネット友人を頼る頻度が高いほど,孤立感が増す傾向が認められた。これは,孤立感を解消するためにインターネッ友人に依存しても,現実の人間関係が変わらないと認識して,さらに孤立感が増すことによるためではないかと考えられる。インターネット上の友人関係は実際の人間関係と異なり,関係が希薄で孤独感を解消するほどの影響力はないと考えられる。
今回の調査をもとにして,質問項目をさらに厳選したうえで新たに作成し調査対象を増やして日本と中国の大学生の国際比較研究を行いたいと考えている。
引用文献
安藤玲子・高比良美詠子・坂元 章 (2005) インターネット使用が中学生の孤独感・ソーシャルサポートに与える影響 パーソナリティ研究 14,169-79
中国青少年网瘾报告(2016) 中国青少年网络协会 上東伸洋 坂部創一 山崎秀夫 (2016) SNS交流と共感力との関係性 環境情報科学論文集 30 273-278
インターネット友人(ネット友人)とは,インターネットを利用して,作った友人のことである。ネット友人は現実の友人と異なり,距離,人種,言語などによる制限が少ない。安藤ら(2005)の研究で,中学生はネットを利用することで,孤独感に対してポジティブな効果が認められた。近年中国もインターネットの発展で,青年期と思春期の人々はインターネットに依存することが年々増えてきている(中国青少年网瘾报告,2016)。この報告によれば,2400万人の青年期と思春期の人たちがインターネットに依存していた。このうち約半数はオンラインゲームに依存しており。13%はネット友人に依存していた。この調査では,しつけの厳しい親からのストレスがネットに依存する原因の一つと考えられた。上記の二つの研究だけでも,ネット友人を作ることにはメリットとデメリットがあることが示唆される。
本研究は,友人関係と孤独感という側面からインターネットを通じた友人関係について検討することを目的とする。
方 法
調査対象者は中国在住の大学生であった。今回の調査はインターネットを利用して,質問項目を作成した。そして,ネット上で質問項目を中国の大学生に配信して,データを収集した。回収できた大学生は53名(男性32名,女性21名)であった。平均年齢は23歳であった。
質問項目の構成尺度はUCLA孤独感尺度(20項目)とネット友人関係尺度(20項目)を用いて作成した。UCLA孤独感尺度は中国語に翻訳した。ネット友人関係尺度の項目は上東ら(2016)の研究の項目を参考にして,新たな質問項目を作成した上で中国語に翻訳した。
結 果
ネット友人関係尺度を因子分析(主成分分析,プロマックス法)した結果,3因子が抽出された。第一因子を「ネット友人に頼る」(α=.766),第二因子を「ネット友人のメリット」(α=.860),第三因子を「ネット友人への関心」(α=.618)と命名した。第一因子と第二因子の信頼性は高かったが第三因子の信頼性はやや低いという結果であった。
UCLA孤独感尺度の因子分析を(主成分分析,プロマックス法)因子負荷量が低い2項目を削除して行ったところ,2因子が抽出された。第一因子を「孤立感」(α=.814),第二因子を「グループ感」(α=.824)と命名した。
友人関係尺度とUCLA孤独感尺度の下位因子間の相関を求めると,「ネット友人に頼る」と「ネット友人のメリット」とに間には中程度の正の相関関係が認められた(r=.667,p<.01)。「ネット友人のメリット」と「ネット友人への関心」との間には弱い負の相関関係が認められた(r=-.287,p<.05)。また,「ネット友人に頼る」と「孤立感」との間に弱い正の相関関係が認められた(r=.300,p<.05)。他の因子の間には有意な相関が認められなかった。
考 察
分析の結果,中国の大学生のネット友人関係と孤独感との間に有意な相関は見られなかった。下位因子間の相関で,大学生がネット友人を頼る頻度が高いほど,孤立感が増す傾向が認められた。これは,孤立感を解消するためにインターネッ友人に依存しても,現実の人間関係が変わらないと認識して,さらに孤立感が増すことによるためではないかと考えられる。インターネット上の友人関係は実際の人間関係と異なり,関係が希薄で孤独感を解消するほどの影響力はないと考えられる。
今回の調査をもとにして,質問項目をさらに厳選したうえで新たに作成し調査対象を増やして日本と中国の大学生の国際比較研究を行いたいと考えている。
引用文献
安藤玲子・高比良美詠子・坂元 章 (2005) インターネット使用が中学生の孤独感・ソーシャルサポートに与える影響 パーソナリティ研究 14,169-79
中国青少年网瘾报告(2016) 中国青少年网络协会 上東伸洋 坂部創一 山崎秀夫 (2016) SNS交流と共感力との関係性 環境情報科学論文集 30 273-278