The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 4:00 PM - 6:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF50] 大学生の不登校傾向と大学適応感との関連(2)

大学適応感が不登校傾向に与える影響の検討

坂原泰子1, 石川健介2 (1.金沢工業大学大学院, 2.金沢工業大学)

Keywords:大学生の不登校, 大学生不登校傾向尺度, 大学適応感

問題と目的
 大学生の不登校は,大学が高等教育機関であること,学生が成人に近い年齢であることから,学校へ行かないことは学生の自由意思であると考えられてきた。しかし,その数は,全国で0.7~2.9%と推定され(水田,2009),長期欠席の結果,単位を取得できずに休学や中途退学に至る。中途退学した学生の正規雇用率は低く(労働政策支援研究・研修機構,2014),ひきこもりやニートに至るケースも多い(厚生労働省,2003)。一方,履修登録が学生に任されているため,早期発見が難しく,学生と連絡が取れない,学生が支援を拒否するなど,支援の困難さも報告されている(水田,2010)。
 そこで本研究では,長期欠席が始まる前に生じる学校へ行きたくない気持や大学を休みがちになる不登校傾向に焦点を当てる。大学生の不登校に影響を与える要因として大学適応感を想定して,大学適応感が不登校傾向に与える影響を検討することを目的とした。

方  法
対象者 中部地方の大学に在籍する1年生から3年生の学生を対象とした。研究に先立ち,研究趣旨とプライバシー保護,研究参加の自由について説明を行い,8名が辞退した。その結果,1年生38人,2年生58人,3年生45人を対象とした。
質問紙 不登校傾向を測定するために,堀井(2013)の大学生不登校傾向尺度を使用した。大学適応感は,先行研究から大学が支援できる可能性のある「対人関係」「学業」「大学生活」に関する質問項目を収集して大学適応感尺度を作成した。
大学適応感尺度の因子分析の結果,「周囲にとけこめている」「頼りあえる友だちがいる」からなる対人関係因子,「講義に集中している」「いろんなことを学ぶのは楽しい」からなる学業ポジティブ因子(学業P),「授業の進み方が速く,ついていけない」「大学での勉強法が分からない」からなる学業ネガティブ因子(学業N),「自分のことを気にかけてくれる先生がいる」「大学の施設やサービスを自分に活かせる」「相談できる人や場所がある」からなる大学生活ポジティブ因子(大学生活P),「将来,やりたいことが定まらない」「なんとなく日々を送っている」からなる大学生活ネガティブ因子(大学生活N)の5つの因子を抽出した。
手続き 不登校傾向調査は,4月から7月の授業の空き時間を利用して隔週に7回行った。大学適応感調査は,4月と6月に不登校傾向の調査を行わない日に実施した。

結果と考察
 不登校傾向得点は4月から7月にかけて徐々に上昇し,学期末に最も高いことが分かった。
 そこで,学期はじめと学期半ばの大学適応感が学期末の不登校傾向得点に与える影響を検討するために不登校傾向得点を目的変数,大学適応感の各因子を説明変数とする重回帰分析を行った。
 Table 1及びTable 2から,1年生では学期はじめの大学生活Pが,2年生では学期はじめの大学生活Pと学期半ばの学業Pが,3年生では学期半ばの学業Pが,学期末の不登校傾向得点に有意な影響を与えていることが分かった。このことは,1年生では学期はじめに大学内で相談できる人や場所があり,先生が自分のことを気にかけてくれていると感じられること,2年生では, 1年生と同様の支援に加えて徐々に増えてくる専門科目を学ぶことが将来に繋がるとイメージできること,3年生では学期半ばの就職活動を控えての学業に対するポジティブな気持ちが学期末の不登校傾向を低下させるのに有意な影響を与えると考えられた。