The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 4:00 PM - 6:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF51] 言葉かけが受け手の感情と動機づけに与える影響

自己愛に着目して

中澤優1, 小倉正義2 (1.鳴門教育大学, 2.鳴門教育大学)

Keywords:感情, 動機づけ, 自己愛

問題と目的
 現代青年の友人関係の問題として,その希薄化が指摘されている。このことは「傷つける」「傷つけられる」ことを恐れているためだと考えられ,自己愛の「過敏性」との関連があると考えられる。しかし,極端な恐れや高い不安は精神的健康に負の影響を与えることが予想されるため,言葉かけが相手にどのような影響を与えるかを検討することは重要である。また,自己愛研究では自己愛を動機づけとして理解することを有力とされており,速水(2015)は活性化の強いネガティブ感情の方が強く動機づけに作用するのではないかと考察している。そこで本研究では,ネガティブな状況にあるときに,親密な他者から言葉かけを受けたときの感情に関して,自己愛傾向(誇大性,過敏性)の高さによって違いがあるのか,どのような感情が動機づけの高低に影響するのかを検討することを目的とする。

方  法
 大学生111名を対象に質問紙による調査を行った。質問紙は,気持ちへの言葉かけを受ける場面3場面,批判的な言葉かけを受ける場面2場面,それぞれの場面で感情6項目(怒り,悲しさ,不安,うれしさ,はずかしさ,罪悪感(申し訳なさ)),意欲評定値(動機づけ)を測る項目(6件法),評価過敏性―誇大性自己愛尺度(18項目,5件法)で構成された。大学の授業を受講している学生に対して質問紙を配布し,記入上の注意について口頭で説明を行い,回答を求めた。

結果と考察
 各言葉かけ場面において,自己愛の下位因子(評価過敏性,誇大性)得点を独立変数,感情得点と動機づけ得点を従属変数としたパス解析を行った。その結果,「気持ちへの言葉かけを受ける場面」では,最終的なモデル適合度はχ² = 15.875, p =.404, GFI = .965, AGFI = .921, RMSEA = .020であった。評価過敏性得点から怒り得点への標準化パス係数が有意であった。また誇大性得点から怒り得点と動機づけ得点へのパス係数が有意であった。さらに,うれしさ得点から動機づけ得点への標準化パス係数が有意であった。
 これらの結果から,ネガティブな状況で親密な他者から気持ちへの言葉かけを受ける場面では,評価過敏性が高い場合,誇大性が高い場合に「怒り」の感情が生起することが示唆された。このことについて,過敏性が高い場合に「怒り」が生じたのは,他者の意図を歪んだ認知で捉える傾向になるために,言葉かけをネガティブな状況に直面化させるものとして捉えたためだと考えられる。また,誇大性が高い場合に「怒り」が生じたのは言葉かけが自分の能力不足を感じさせるものとして働いたためだと考えられる。さらに,誇大性が高い場合には動機づけが下がる傾向にあること,「うれしさ」の感情が動機づけを高めることが示唆された。
 「批判的な言葉かけを受ける場面」では,最終的なモデル適合度はχ² = 32.551, p = .038, GFI = .938, AGFI = .888, RMSEA = .077であった。評価過敏性得点から怒り得点への標準化パス係数が有意であった。また悲しさ得点から動機づけ得点への標準化パス係数が有意であった。これらの結果から,ネガティブな状況で親密な他者から批判的な言葉かけを受ける場面では,評価過敏性が高い場合には「怒り」の感情が生起すること,「悲しさ」の感情が動機づけを高めることが示唆された。自己評価が下がり,自己評価を上げる働きかけを求めている状況で,拒絶するような批判的な言葉かけをしたために「怒り」の感情が生起したと考えられる。また「悲しさ」と動機づけについては悲しい状況を悲しいと受け入れ,その現状から抜け出したいという思いが生まれたことで動機づけにつながったと推察される。
 また,2種類の言葉かけはどちらも「うれしさ」といったポジティブな感情との関連がみられなかった。このことから,自己愛傾向の人にとって気持ちへの言葉かけが情緒的サポートを含んだ言葉として機能しなかった可能性があるため,自己評価に影響を及ぼす可能性が低かったと考えられる。

今後の課題
 本研究では,仮想場面で生起する感情について検討するための教示が言葉かけに対する感情を尋ねているかどうかが曖昧であったため,状況に対する感情を測っている可能性が否定できない。そのため,「言葉に対してどのような感情を抱きますか?」のように限定的な教示をする必要がある。

付記:本研究は,平成29年度鳴門教育大学大学院学校教育研究に提出した修士論文を加筆修正したものである。