[PF60] ソーシャルスキルトレーニングを定着させるコンサルテーション
Keywords:ソーシャルスキルトレーニング, コンサルテーション
問題と目的
児童生徒の対人関係の未熟さからソーシャルスキルを身に付けるための活動を効果的に取り入れることが重視される中(文部科学省,2008),SSTプログラムは学校現場に幅広く導入されその有効性が検討されてきた(原田・渡辺,2011;他)。積極的に実践されるだけでなく,期待にこたえる実践を可能にするためには研修が重要であり(渡辺・小林,2009;他),また,教員研修の実施は,評価・改善を繰り返す中でよりよい研修プログラムを提供していく必要がある(岡田,2015)。この教員研修については,これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上(文部科学省,2015)や児童生徒の社会性を育むための実践的指導力などを含む教員研修の体系化である教員育成指標(文部科学省,2016)において,教員が積極的に参加することが推奨されている。これまでの研修では外部講師を依頼する傾向が強く,専門家と連携しながら教員がスキルを高めるという方法がとられている。このような教師に対する心理の専門家の支援活動はコンサルテーションの観点から問題解決型,研修型,システム型の3つがあり(石隈,1999),先述した研修は問題解決型とされている(岡田,2015)。しかし,教員と心理の専門家である大学教員との協働の視点から研修を捉えたとき,互いに自発的・主体的に参加し協働的であること(Larney,2003)が求められる一方,指示的関係になりがち(Witt,1990)という指摘もある。すなわち,互恵的な研修としての教員と専門家の協働については十分に検討がなされていない。そこで,本研究では研修型コンサルテーションに着目し,協働プロセスとその成果について検討する。
方 法
(1)対象者:公立高校1年生学級担任8名。(2)SSTの概要:担任教師と教職課程の学生TAがペアとなりLHRの時間で行う道徳の授業を4回実施するうち,コミュニケーションⅠ(話す)・Ⅱ(聴く)・感情のコントロールの3回を,20XX年10月中旬から11月上旬にかけて週に1度行った。(3)研修概要:心理学を専門とする大学教員と校内道徳推進教師が研修講師となった。SST理論と授業のポイントを確認する教員全員を対象とした研修(実施1週間前),研修を欠席した教員に参加を促しつつ同時に質問や疑問に個別対応する自主勉強会(実施3日前),教員と教職学生TAとの打ち合わせ(当日授業前),授業の振り返りと次回授業の研修(当日授業後)の流れで研修が組まれた。SST実施1週間前から大学教員が監修したSSTの授業の視聴ビデオを校内PCに設定し,研修の一環として教員の自主的学びの環境を整備した。研修目的は,教員の不安軽減,授業目的と内容の共通理解,教員のスキル向上であった。(4)質問紙:SST経験,研修ビデオ視聴の有無と理解度・満足度の評価(5件法)及び研修の振り返り。
結果と考察
研修会参加状況についてTable1に示した。空き時間や放課後に視聴し,授業の流れやポイントが確認でき(4.8),満足した(4.8)と研修ビデオの評価は高かった。一方,視聴しなかった経験有り教員は視聴時間がなく,経験無し教員は視聴をし損ねたという理由であった。ビデオの効果について評価が高いことからも視聴期間と促しの工夫を検討する必要があると考えられた。研修については,全教員が満足して本形式を今後も希望し,特に授業後の研修は,「参加しやすい」「学生の意見が参考になった」と評価が高い傾向にあった。般化や次年度教育の計画が協働支援で継続されることからも,大学教員の授業への参与的観察は研修内容に反映でき,同時に,道徳教育推進教師と協働で行う研修は生徒の実態にあう授業の工夫につながるコンサルテーションになったと考えられる。今後は,問題解決型・研修型・システム型の3者を関係づけて検討する必要があろう。
児童生徒の対人関係の未熟さからソーシャルスキルを身に付けるための活動を効果的に取り入れることが重視される中(文部科学省,2008),SSTプログラムは学校現場に幅広く導入されその有効性が検討されてきた(原田・渡辺,2011;他)。積極的に実践されるだけでなく,期待にこたえる実践を可能にするためには研修が重要であり(渡辺・小林,2009;他),また,教員研修の実施は,評価・改善を繰り返す中でよりよい研修プログラムを提供していく必要がある(岡田,2015)。この教員研修については,これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上(文部科学省,2015)や児童生徒の社会性を育むための実践的指導力などを含む教員研修の体系化である教員育成指標(文部科学省,2016)において,教員が積極的に参加することが推奨されている。これまでの研修では外部講師を依頼する傾向が強く,専門家と連携しながら教員がスキルを高めるという方法がとられている。このような教師に対する心理の専門家の支援活動はコンサルテーションの観点から問題解決型,研修型,システム型の3つがあり(石隈,1999),先述した研修は問題解決型とされている(岡田,2015)。しかし,教員と心理の専門家である大学教員との協働の視点から研修を捉えたとき,互いに自発的・主体的に参加し協働的であること(Larney,2003)が求められる一方,指示的関係になりがち(Witt,1990)という指摘もある。すなわち,互恵的な研修としての教員と専門家の協働については十分に検討がなされていない。そこで,本研究では研修型コンサルテーションに着目し,協働プロセスとその成果について検討する。
方 法
(1)対象者:公立高校1年生学級担任8名。(2)SSTの概要:担任教師と教職課程の学生TAがペアとなりLHRの時間で行う道徳の授業を4回実施するうち,コミュニケーションⅠ(話す)・Ⅱ(聴く)・感情のコントロールの3回を,20XX年10月中旬から11月上旬にかけて週に1度行った。(3)研修概要:心理学を専門とする大学教員と校内道徳推進教師が研修講師となった。SST理論と授業のポイントを確認する教員全員を対象とした研修(実施1週間前),研修を欠席した教員に参加を促しつつ同時に質問や疑問に個別対応する自主勉強会(実施3日前),教員と教職学生TAとの打ち合わせ(当日授業前),授業の振り返りと次回授業の研修(当日授業後)の流れで研修が組まれた。SST実施1週間前から大学教員が監修したSSTの授業の視聴ビデオを校内PCに設定し,研修の一環として教員の自主的学びの環境を整備した。研修目的は,教員の不安軽減,授業目的と内容の共通理解,教員のスキル向上であった。(4)質問紙:SST経験,研修ビデオ視聴の有無と理解度・満足度の評価(5件法)及び研修の振り返り。
結果と考察
研修会参加状況についてTable1に示した。空き時間や放課後に視聴し,授業の流れやポイントが確認でき(4.8),満足した(4.8)と研修ビデオの評価は高かった。一方,視聴しなかった経験有り教員は視聴時間がなく,経験無し教員は視聴をし損ねたという理由であった。ビデオの効果について評価が高いことからも視聴期間と促しの工夫を検討する必要があると考えられた。研修については,全教員が満足して本形式を今後も希望し,特に授業後の研修は,「参加しやすい」「学生の意見が参考になった」と評価が高い傾向にあった。般化や次年度教育の計画が協働支援で継続されることからも,大学教員の授業への参与的観察は研修内容に反映でき,同時に,道徳教育推進教師と協働で行う研修は生徒の実態にあう授業の工夫につながるコンサルテーションになったと考えられる。今後は,問題解決型・研修型・システム型の3者を関係づけて検討する必要があろう。