The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 4:00 PM - 6:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF68] 先延ばしの簡便なタイプ分類方法の開発(1)

クラスタ数の決定と平均値によるタイプ分類

小浜駿1, 高田治樹2 (1.宇都宮共和大学, 2.目白大学)

Keywords:先延ばし, 類型化, 決定木分析

問題と目的
 期末テストやレポート,公共料金の支払いなど,何らかのなすべきことを行わない現象は先延ばしと呼ばれる。小浜(2012;2014)によって開発された先延ばしのタイプ分類方法は,精神的健康への悪影響が生じやすい「否定感情タイプ」と課題遂行への悪影響が生じやすい「楽観タイプ」と適応的な「計画タイプ」に分類可能という利点がある。しかし,この分類方法は多数の項目を分析対象とした多変量解析が必要であることから,教育現場での運用が難しいという欠点がある。そこで,より簡便な方法でタイプ分類を行う方法を開発する。

方  法
調査時期 2017年1月下旬に実施された(注1。
回答者数 マクロミル社保有サンプルの4年制大学生1,032名(男性402名,平均年齢20.04歳±2.05)を対象とした。
調査内容 先延ばし意識特性尺度(小浜, 2010)の7下位尺度を測定した。その他の項目も測定したが,分析には用いなかったため割愛する。

結果と考察
 タイプ数の探索と各タイプの特徴 まず,回答者を分類するうえで望ましいタイプ数を探索するために,混合正規分布モデルによるクラスタリング(Normal Mixture Modeling; 以下, NMMとする)を実施した。無効回答者を除外し,先延ばし意識特性尺度の7下位尺度の算術平均値を投入してクラスタ数別のBICを算出した。各クラスタのBICは,4クラスタが-15431.6,5クラスタが-15464.7, 6クラスタ-15450.1であり,4クラスタのモデルの適合度が最も良好であった。そのため,4クラスタ解釈を採用することとした。
 4クラスタ指定でNMMを実施し,クラスタごとに先延ばし意識特性尺度の標準化得点を算出した。クラスタ1は,「状況の楽観視」と「先延ばし中の肯定的感情」が低く,「計画性」が最も高かったため,「計画群」と命名した。クラスタ2は,「先延ばし前の否定的感情」,「先延ばし中の否定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」の得点が平均値よりも低く,「計画性」と「先延ばし中の肯定的感情」,「気分の切り替え」が平均値よりも高かったため,「計画切替群」と命名した。クラスタ3は,「状況の楽観視」,「先延ばし中の肯定的感情」,「気分の切り替え」が平均値よりも高かったため,「楽観群」と命名した。クラスタ4は,「状況の楽観視」が平均値よりも高い得点を示すと同時に,「先延ばし前の否定的感情」,「先延ばし中の否定的感情」,「先延ばし後の否定的感情」がいずれも平均値より高かったことから,「否定感情群」と命名した。
 決定木分析による分類 NMMによって導出された4クラスタを,多変量解析による推定を用いずに分類するために,決定木分析を実施した。
 まず,回答者の分類に有効な変数を探索するために,ランダムフォレストを用いて各変数の重要度を算出した結果,「状況の楽観視」(正確度154.11, ジニ係数133.03),「先延ばし中の肯定的感情」(正確度66.41, ジニ係数52.99),「先延ばし後の否定的感情」(正確度64.01, ジニ係数38.63),「先延ばし中の否定的感情」(正確度47.54, ジニ係数34.35)の順に高かったことから,以上の4変数を説明変数として用いることとした。
 次に,NMMによって導出されたクラスタを目的変数とし,ランダムフォレストの結果として有効と考えられた先延ばし意識特性尺度の4下位尺度を説明変数とした決定木分析を実施した。
 「先延ばし中の否定的感情」が除外され,「状況の楽観視」,「先延ばし後の否定的感情」,「先延ばし中の肯定的感情」の3下位尺度によって4クラスタが分類された。まず,「状況の楽観視」が分類基準の変数となり,3.2が基準値となった。3.2未満の回答者のうち,「状況の楽観視」がさらに2.6未満の回答者が 「計画群」に分類された。「状況の楽観視」が3.2未満2.6以上の回答者は「先延ばし後の否定的感情」3.5が基準となり,更なる分類が行われた。3.5以上の場合に「計画群」に分類され,3.5未満の場合には「計画切替群」に分類された。「状況の楽観視」が3.2以上の回答者は「先延ばし中の肯定的感情」が3.5以上の場合には「楽観群」に分類された。残りの回答者は「先延ばし後の否定的感情」が3.5未満の場合に再び「楽観群」に分類され,3.5以上の場合に「否定感情群」に分類された。
 以上より,平均値をもとにした簡便な手続きで,先延ばしを4タイプに分類することが可能となった。

注1 本調査は,平成28年度公益信託福原心理教育研究振興基金の助成を受けて行われた。
注2 図表および引用文献は当日配布資料に掲載する。