[PG02] 子どもを持つ成人の息子は父親との関係をどのようにとらえているのか?
成人アタッチメント面接の内容分析から
Keywords:父親-息子関係, アタッチメント
問題と目的
不 安や危機感を養育者によって,どのように調整されたのかの積み重なりがやがて,アタッチメントの内的作業モデルとなり,人格や対人関係などの枠組みを作っていく。また,自分が親となったときには,その養育に大きく影響を与えることもわかっている。実際の養育の中心は母親であることが多いことから,母子関係や祖母-母親関係についての報告は多いが,父親と息子に関する研究は特に日本ではあまり存在していない。主たる養育者が母親であるとしても,父親からの影響をどのように息子はとらえているのであろうか。本研究は子どもを持つ息子とその父親との養育に関わる関係について,アタッチメントの視点から明らかにすることを目的としている。
方 法
調査対象 男性の養育に関する研究に応募してきた家族の中から, 息子と父親の両方が参加した12ペアで,息子は20代後半から40代前半の年齢,父親は50代から70代後半で分布していた。
面接調査 アタッチメント表象を測定するAdult Attachment Interview(AAI)をプロトコール通りに行い,逐語で作成したトランスクリプトについて,規定通りにコーダーの資格を持つ3名がアタッチメントの評定を行った。安定自律型(F)は被養育経験の正負両面について認識しておりアタッチメントが安定している。アタッチメント軽視型(Ds)は負の記憶について防衛的でおおむね「良く育てられた」とした総括を維持している。とらわれ型(E)は現在も対象者に心的に固執している状態で,そのためバランスを欠いた情動が活性化されやすい。未解決型(U)は過去の喪失やトラウマ的な出来事に対して,現在も(無意識的に)こだわりがあり,解決できずにいる状態を指す。これらの評定に加えて,養育に関する内容を豊富に含むトランスクリプトを質的に検討し,主観的な被養育経験に関する振り返りを分析した。
結果と考察
アタッチメント分類の結果はTable 1に示す通りである。息子は2名を除いてF型であった。父親ではU型が半数を占め,これは通常の一般サンプルにおける割合(15%前後)より大幅に多かった。U型の父親のうち3名は,戦争を直接体験しており,それに関連した喪失やトラウマ的な出来事に
息子のほとんどがF型であり,父親との間での関連が見受けられないことは,息子を主に育てた者は父親以外であったこと(たいていは母親や祖母)と関係するだろう。
息子と父親が両方ともF型であったペアにおいては,息子は父親を場合によっては母親よりも身近に感じており,「怒らない」「旅行」「思いやり」「釣り」などのキーワードとともにそれを裏付けるに値する率直で具体的な語りが行われていた。また,父親が率先して子育てに関わっていた場合(わが子に遊びなどで多く関わるだけではなく,隣近所の家と一緒の食事や行事を自ら行うなど),母親がそのようなことをしていなくても,息子も父親と同じような行動を今の子育ての中で行っていた。
父親がDs型である場合には,息子に対して,不適切な養育とも思われる行動をとっていることが多かった。息子は父親のような行動は自分の子どもとのかかわりで極力行わないようにしていると述べていた。ただ,一部の息子で,しつけと称して自動的に手が出てしまう場面もあることがわかった。
息子にとって,母親のみならず父親とのアタッチメントが養育・被養育の文脈でその中核的な役割を果たしていることが明らかとなった。
不 安や危機感を養育者によって,どのように調整されたのかの積み重なりがやがて,アタッチメントの内的作業モデルとなり,人格や対人関係などの枠組みを作っていく。また,自分が親となったときには,その養育に大きく影響を与えることもわかっている。実際の養育の中心は母親であることが多いことから,母子関係や祖母-母親関係についての報告は多いが,父親と息子に関する研究は特に日本ではあまり存在していない。主たる養育者が母親であるとしても,父親からの影響をどのように息子はとらえているのであろうか。本研究は子どもを持つ息子とその父親との養育に関わる関係について,アタッチメントの視点から明らかにすることを目的としている。
方 法
調査対象 男性の養育に関する研究に応募してきた家族の中から, 息子と父親の両方が参加した12ペアで,息子は20代後半から40代前半の年齢,父親は50代から70代後半で分布していた。
面接調査 アタッチメント表象を測定するAdult Attachment Interview(AAI)をプロトコール通りに行い,逐語で作成したトランスクリプトについて,規定通りにコーダーの資格を持つ3名がアタッチメントの評定を行った。安定自律型(F)は被養育経験の正負両面について認識しておりアタッチメントが安定している。アタッチメント軽視型(Ds)は負の記憶について防衛的でおおむね「良く育てられた」とした総括を維持している。とらわれ型(E)は現在も対象者に心的に固執している状態で,そのためバランスを欠いた情動が活性化されやすい。未解決型(U)は過去の喪失やトラウマ的な出来事に対して,現在も(無意識的に)こだわりがあり,解決できずにいる状態を指す。これらの評定に加えて,養育に関する内容を豊富に含むトランスクリプトを質的に検討し,主観的な被養育経験に関する振り返りを分析した。
結果と考察
アタッチメント分類の結果はTable 1に示す通りである。息子は2名を除いてF型であった。父親ではU型が半数を占め,これは通常の一般サンプルにおける割合(15%前後)より大幅に多かった。U型の父親のうち3名は,戦争を直接体験しており,それに関連した喪失やトラウマ的な出来事に
息子のほとんどがF型であり,父親との間での関連が見受けられないことは,息子を主に育てた者は父親以外であったこと(たいていは母親や祖母)と関係するだろう。
息子と父親が両方ともF型であったペアにおいては,息子は父親を場合によっては母親よりも身近に感じており,「怒らない」「旅行」「思いやり」「釣り」などのキーワードとともにそれを裏付けるに値する率直で具体的な語りが行われていた。また,父親が率先して子育てに関わっていた場合(わが子に遊びなどで多く関わるだけではなく,隣近所の家と一緒の食事や行事を自ら行うなど),母親がそのようなことをしていなくても,息子も父親と同じような行動を今の子育ての中で行っていた。
父親がDs型である場合には,息子に対して,不適切な養育とも思われる行動をとっていることが多かった。息子は父親のような行動は自分の子どもとのかかわりで極力行わないようにしていると述べていた。ただ,一部の息子で,しつけと称して自動的に手が出てしまう場面もあることがわかった。
息子にとって,母親のみならず父親とのアタッチメントが養育・被養育の文脈でその中核的な役割を果たしていることが明らかとなった。