[PG21] ワークショップ型授業の実践力育成プログラムの開発
学校教育におけるワークショップの可能性と限界
Keywords:現職教員, ワークショップ型授業, 学習観
問題と目的
ワークショップは「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく,参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学びあったり,創り出したりする学びと創造のスタイル」(中野,2001)と定義される。1990年代以降,社会教育,演劇,美術,まちづくり,企業研修など多様な分野で急速に広まってきた。学校教育でも,人権教育,国際理解教育,メディアリテラシー教育,演劇教育,コミュニケーション教育などの領域を中心にワークショップ型授業の実践が行われている。
学校教育でワークショップが活用されるには,教師がワークショップにおける学びについて理解することが必要である。森(2012)は,教授経験の有無がワークショップの理解に影響を与える可能性があることから,教員養成課程の学生を対象に,ワークショップについて学ぶコースを開発した。本研究では,教授経験のある現職教員がワークショップに対する理解を深め実践できるようになることを目的として,プログラム開発と評価を行う。
方 法
教員養成系大学の大学院専門科目の授業(週1回,90分,全15回)として実施した。受講生は大学院生21名(うち現職教員8名,企画運営経験あり5名,参加経験あり8名)であった。ワークショップの学習観とプログラムデザインを中心に内容を設計した(Table 1)。講義は必要最小限にとどめ,講義内容に関連するディスカッションやグループ課題に多くの時間を当てた。毎回,授業時間外にA4用紙1枚程度の振り返りレポートが宿題として課された。授業は可動式の机・椅子・ホワイトボードが設置されているアクティブラーニング教室で実施された。グループ課題の成果物や提出されたレポート,ワークシートを資料として収集し,プログラム実施後に分析を行った。
結 果
(1)自己評価
最終回に5段階で自己評価を行った。肯定的な評価をした割合は,「ワークショップに参加したい」が95.2%,「企画運営に携わりたい」が81.0%,「学校の中で実践したい」が85.7%,「学びを支援する方法を身につけることができた」が57.1%であった。ワークショップへの関心は高いものの,実践力については半数しか習得を実感していない。これは企画案を考えただけで実践の場がなかったためだと考えられる。
(2)ワークショップに対する理解の深まり
最終回にワークショップとはどのようなものかを自由記述で回答してもらったところ,「体験・主体的な参加」「他者との共同・異なる価値観」「学び・創造」「プロセス・振り返り」に関するキーワードが挙げられた。また,知りたいことや学びたいこととして,「学校でどのように実践するか」「教師はファシリテーターになれるか」「内向的な学習者への配慮」「評価方法」など,学校にワークショップ取り入れることを想定した内容が挙げられた。
(3)成果物とプロセス
4つのグループに分かれて依頼内容に応じたワークショップを企画した。「学習目標(学び)」と「活動目標(創造)」の関連づけ,グループ内の意見共有や調整に課題がみられた。
まとめと今後の課題
学習観とプログラムデザインに焦点化したことで,ワークショップの学びに対する理解の深まりや,実践への意欲の高まりがみられた。一方,本来のワークショップとワークショップ型授業の違い,ファシリテーターと教師の違いなど,学校教育でワークショップを活用する上での問題点や限界も明らかになった。また,実践の場をどのように確保するかが今後の課題である。
引用文献
森 玲奈(2012).ワークショップに関する理解向上を目的とした教員養成授業におけるコース開発 日本教育工学会論文誌,36, 61-64.
中野民夫(2001).ワークショップ―新しい学びと創造の場― 岩波新書
付 記
本研究はJSPS科研費25870255の助成を受けたものです。
ワークショップは「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく,参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学びあったり,創り出したりする学びと創造のスタイル」(中野,2001)と定義される。1990年代以降,社会教育,演劇,美術,まちづくり,企業研修など多様な分野で急速に広まってきた。学校教育でも,人権教育,国際理解教育,メディアリテラシー教育,演劇教育,コミュニケーション教育などの領域を中心にワークショップ型授業の実践が行われている。
学校教育でワークショップが活用されるには,教師がワークショップにおける学びについて理解することが必要である。森(2012)は,教授経験の有無がワークショップの理解に影響を与える可能性があることから,教員養成課程の学生を対象に,ワークショップについて学ぶコースを開発した。本研究では,教授経験のある現職教員がワークショップに対する理解を深め実践できるようになることを目的として,プログラム開発と評価を行う。
方 法
教員養成系大学の大学院専門科目の授業(週1回,90分,全15回)として実施した。受講生は大学院生21名(うち現職教員8名,企画運営経験あり5名,参加経験あり8名)であった。ワークショップの学習観とプログラムデザインを中心に内容を設計した(Table 1)。講義は必要最小限にとどめ,講義内容に関連するディスカッションやグループ課題に多くの時間を当てた。毎回,授業時間外にA4用紙1枚程度の振り返りレポートが宿題として課された。授業は可動式の机・椅子・ホワイトボードが設置されているアクティブラーニング教室で実施された。グループ課題の成果物や提出されたレポート,ワークシートを資料として収集し,プログラム実施後に分析を行った。
結 果
(1)自己評価
最終回に5段階で自己評価を行った。肯定的な評価をした割合は,「ワークショップに参加したい」が95.2%,「企画運営に携わりたい」が81.0%,「学校の中で実践したい」が85.7%,「学びを支援する方法を身につけることができた」が57.1%であった。ワークショップへの関心は高いものの,実践力については半数しか習得を実感していない。これは企画案を考えただけで実践の場がなかったためだと考えられる。
(2)ワークショップに対する理解の深まり
最終回にワークショップとはどのようなものかを自由記述で回答してもらったところ,「体験・主体的な参加」「他者との共同・異なる価値観」「学び・創造」「プロセス・振り返り」に関するキーワードが挙げられた。また,知りたいことや学びたいこととして,「学校でどのように実践するか」「教師はファシリテーターになれるか」「内向的な学習者への配慮」「評価方法」など,学校にワークショップ取り入れることを想定した内容が挙げられた。
(3)成果物とプロセス
4つのグループに分かれて依頼内容に応じたワークショップを企画した。「学習目標(学び)」と「活動目標(創造)」の関連づけ,グループ内の意見共有や調整に課題がみられた。
まとめと今後の課題
学習観とプログラムデザインに焦点化したことで,ワークショップの学びに対する理解の深まりや,実践への意欲の高まりがみられた。一方,本来のワークショップとワークショップ型授業の違い,ファシリテーターと教師の違いなど,学校教育でワークショップを活用する上での問題点や限界も明らかになった。また,実践の場をどのように確保するかが今後の課題である。
引用文献
森 玲奈(2012).ワークショップに関する理解向上を目的とした教員養成授業におけるコース開発 日本教育工学会論文誌,36, 61-64.
中野民夫(2001).ワークショップ―新しい学びと創造の場― 岩波新書
付 記
本研究はJSPS科研費25870255の助成を受けたものです。