[PG40] 授業内容による教師のリヴォイシングの活用
Keywords:リヴォイシング, 授業分析
問題と目的
平成29年度公示の新学習要領では,言語活動の充実や対話的な学びの重要性が挙げられているが,中でも「聞くこと」の育成は重要な課題の1つに位置付けられている。それは,言語活動や対話においてはまず,他の児童の発言を聞き,その発言や思考を用いて学習することが求められていることによる。
聞くことを支援する教師の方略の1つとして,「リヴォイシング」がある。本研究では,リヴォイシングの定義を,「授業中に教師が行う,口頭もしくは板書による,教師および他の児童の発話の復唱」(O‘Connor&Michaels,1996参考)と定める。
先行研究では,教師のリヴォイシングが児童の発言内容を明確にし,自分と結びつけて聞く機会を与えることや,一つの発言についてより多くの時間考えることを可能にする,といったリヴォイシングの効果が示されている(一柳,2012)。また,リヴォイシングは形状・機能・後続する発話の3つの観点からそれぞれ分類される(藤江,2000)。
しかし,リヴォイシングの具体的な特徴に基づいた教育心理学研究,また,教師のリヴォイシングの活用に関わる教育心理学研究は未だ十分になされていない。そこで,本研究では,リヴォイシングの分類を基にリヴォイシングの特徴を明らかにし,授業内容による教師のリヴォイシングの活用について検討する。
方 法
授業観察を基に,授業中のリヴォイシングを詳細に分類し,授業内容によって教師がどのようなリヴォイシングを活用しているのかについて検討した。
調査対象 都内公立小学校第3学年および第4学年の各1学級,担任およびそれぞれの学級に在籍する児童(第3学年:32名,第4学年:34名)であった。
期間 2017年10月から12月に実施した。
授業観察 研究対象とした2学級について,それぞれ国語科・社会科を2時間ずつ観察した。授業では,対象学級の担任教師が,1時間は普段通りの授業(条件なし),もう1時間は授業者が意識的にリヴォイシングを行う授業(条件あり)を行った。
リヴォイシングの分類 授業観察を基に,授業中のリヴォイシングを分類した。本研究では,リヴォイシングが授業にどう活用されるのかを検討する目的から,「後続する発話」の分類に着目した。
結 果
リヴォイシングの特徴の各項目について,対象とした学級ごとに,リヴォイシング条件(あり・なし),教科(国語科・社会科),教科ごと条件(教科×リヴォイシング条件)の3つの観点から分析を行った。
第3学年における,リヴォイシングに後続する発話について,教科の観点から分析した結果,国語科の授業において「質問」が後続するリヴォイシングが,社会科の授業において「次の話題」が後続するリヴォイシングが有意に多いことが示された(χ² =22.081, df =6, p <.01)。また,第4学年においては,国語科の授業において「繰り返し」が後続するリヴォイシングが,社会科の授業において「説明」後続するリヴォイシングが有意に多いことが示された(χ² =30.593, df =6,
p <.01)。
考 察
対象とした第3学年の国語科の授業内容は,物語文の読解,第4学年は,慣用句の定義およびいろいろな慣用句の意味についてであり,教師の意図するねらいや正答が明確であった。一方,第3学年の社会科の授業は,買い物の様子について,第4学年は,警察および消防の仕事についてであり,日常の生活に基づいて,児童がさまざまな回答を出し合う内容であった。
以上の授業内容と,リヴォイシングに後続する発話についての結果から,教師のねらいや正答が明確な授業においては,リヴォイシングの後に,根拠を引き出す質問や,繰り返しを続けることで,児童らを一つの内容についてさらに深い理解へと導くことができると推察される。一方,明確なねらいや正答よりも,児童の多様な回答を軸に進行する授業においては,リヴォイシングの後は,児童の一つ一つの発話に基づいた説明を加えたり,新たな課題に移る等,次の話題に切り替えたりすることで,複数の意見を正確に取り上げて,広い理解へと導くことができると推察される。
以上のように,教師が授業を行う際には,授業の内容に合わせて,リヴォイシングを適切に活用することが重要であると言える。
平成29年度公示の新学習要領では,言語活動の充実や対話的な学びの重要性が挙げられているが,中でも「聞くこと」の育成は重要な課題の1つに位置付けられている。それは,言語活動や対話においてはまず,他の児童の発言を聞き,その発言や思考を用いて学習することが求められていることによる。
聞くことを支援する教師の方略の1つとして,「リヴォイシング」がある。本研究では,リヴォイシングの定義を,「授業中に教師が行う,口頭もしくは板書による,教師および他の児童の発話の復唱」(O‘Connor&Michaels,1996参考)と定める。
先行研究では,教師のリヴォイシングが児童の発言内容を明確にし,自分と結びつけて聞く機会を与えることや,一つの発言についてより多くの時間考えることを可能にする,といったリヴォイシングの効果が示されている(一柳,2012)。また,リヴォイシングは形状・機能・後続する発話の3つの観点からそれぞれ分類される(藤江,2000)。
しかし,リヴォイシングの具体的な特徴に基づいた教育心理学研究,また,教師のリヴォイシングの活用に関わる教育心理学研究は未だ十分になされていない。そこで,本研究では,リヴォイシングの分類を基にリヴォイシングの特徴を明らかにし,授業内容による教師のリヴォイシングの活用について検討する。
方 法
授業観察を基に,授業中のリヴォイシングを詳細に分類し,授業内容によって教師がどのようなリヴォイシングを活用しているのかについて検討した。
調査対象 都内公立小学校第3学年および第4学年の各1学級,担任およびそれぞれの学級に在籍する児童(第3学年:32名,第4学年:34名)であった。
期間 2017年10月から12月に実施した。
授業観察 研究対象とした2学級について,それぞれ国語科・社会科を2時間ずつ観察した。授業では,対象学級の担任教師が,1時間は普段通りの授業(条件なし),もう1時間は授業者が意識的にリヴォイシングを行う授業(条件あり)を行った。
リヴォイシングの分類 授業観察を基に,授業中のリヴォイシングを分類した。本研究では,リヴォイシングが授業にどう活用されるのかを検討する目的から,「後続する発話」の分類に着目した。
結 果
リヴォイシングの特徴の各項目について,対象とした学級ごとに,リヴォイシング条件(あり・なし),教科(国語科・社会科),教科ごと条件(教科×リヴォイシング条件)の3つの観点から分析を行った。
第3学年における,リヴォイシングに後続する発話について,教科の観点から分析した結果,国語科の授業において「質問」が後続するリヴォイシングが,社会科の授業において「次の話題」が後続するリヴォイシングが有意に多いことが示された(χ² =22.081, df =6, p <.01)。また,第4学年においては,国語科の授業において「繰り返し」が後続するリヴォイシングが,社会科の授業において「説明」後続するリヴォイシングが有意に多いことが示された(χ² =30.593, df =6,
p <.01)。
考 察
対象とした第3学年の国語科の授業内容は,物語文の読解,第4学年は,慣用句の定義およびいろいろな慣用句の意味についてであり,教師の意図するねらいや正答が明確であった。一方,第3学年の社会科の授業は,買い物の様子について,第4学年は,警察および消防の仕事についてであり,日常の生活に基づいて,児童がさまざまな回答を出し合う内容であった。
以上の授業内容と,リヴォイシングに後続する発話についての結果から,教師のねらいや正答が明確な授業においては,リヴォイシングの後に,根拠を引き出す質問や,繰り返しを続けることで,児童らを一つの内容についてさらに深い理解へと導くことができると推察される。一方,明確なねらいや正答よりも,児童の多様な回答を軸に進行する授業においては,リヴォイシングの後は,児童の一つ一つの発話に基づいた説明を加えたり,新たな課題に移る等,次の話題に切り替えたりすることで,複数の意見を正確に取り上げて,広い理解へと導くことができると推察される。
以上のように,教師が授業を行う際には,授業の内容に合わせて,リヴォイシングを適切に活用することが重要であると言える。