[PG69] 小学校5年生の児童を対象としたソーシャルスキルトレーニングの効果の検討(2)
Keywords:SST, 学級単位, 小学生
目 的
子どもの社会的適応を援助するためのアプローチの一つとして,学級単位でのソーシャルスキルトレーニング(Class-Wide Social Skills Training:以下,CSSTとする)がある。CSSTなどの集団で実施するSSTの利点の一つとして,一度に多くの児童を訓練対象にでき,効率性に優れていることがあげられる。滋野井(2017)において実施されたCSSTでは,自己評定尺度や他者評定尺度の結果から,プログラムの効果が学級全体として認められたが,その効果がソーシャルスキルが不足している児童にも有効であったか検討する必要があると思われる。本研究では,プログラム開始前に学級の中で質問紙の得点が低かった児童(以下,低得点児とする)をソーシャルスキルが不足しているものとし,プログラムを経て質問紙の得点がどのように変化したか,検討した。
方 法
対象児の選定方法 アセスメントに用いた「お友だち付き合いに関するアンケート」の自己評定尺度と,教師評定尺度の合計得点の両方が学級の下位1/3となった児童を対象とした。
対象児 プログラムに参加した小学5年生3学級92名の児童のうち,12名が低得点児となった。
プログラムの内容 事前に実施した質問紙の結果をもとに標的行動を決め,以下の4回のセッションで各標的行動を指導した。第1回「キレない方法を身につけよう」,第2回「上手な頼み方,断り方を身につけよう」,第3回「友だちを励ます方法を身につけよう」,第4回「誰かに相談する方法を身につけよう」であった。
アセスメント 秋田(2001)「お友だち付き合いに関するアンケート」をもとに自己評定尺度(31項目4件法),教師評定尺度(31項目選択式),仲間評定尺度(8項目選択式)を作成した。自己評定尺度はプログラムの前後を含め計5回,教師評定尺度と仲間評定尺度は全学級第2回査定と各学級のプログラム後の計2回実施した。
結果と考察
CSSTプログラム実施前後における低得点児の自己評定尺度,教師評定尺度,仲間評定尺度の変化について検討を行った。Table 1には,第1回査定の学年全体の結果に基づいて標準化した得点を示した(平均値50,標準偏差10)。自己評定尺度得点について,全ての学級において,本プログラムの導入後に得点の上昇がみられた。フォローアップが可能であったA組とB組において,両方の学級でプログラム終了後も得点が上昇していた。
教師評定尺度(Table 2)について,本プログラムの導入後にA組とC組において得点が上昇,B組において得点が減少していた。B組を除けば,担任教師らがベースライン査定で「スキルが不足している」と感じていた児童らに対して,効果的なプログラムが実施出来たと言えるだろう。仲間評定尺度(Table 2)についても,本プログラムの導入後にA組とC組において得点が上昇,B組において得点が減少していた。B組を除けば,児童らの間でもスキルの向上が認められた可能性が示唆された。
このことから,低得点児にも,本プログラムによって社会的スキルを向上させる効果があったと思われる。
子どもの社会的適応を援助するためのアプローチの一つとして,学級単位でのソーシャルスキルトレーニング(Class-Wide Social Skills Training:以下,CSSTとする)がある。CSSTなどの集団で実施するSSTの利点の一つとして,一度に多くの児童を訓練対象にでき,効率性に優れていることがあげられる。滋野井(2017)において実施されたCSSTでは,自己評定尺度や他者評定尺度の結果から,プログラムの効果が学級全体として認められたが,その効果がソーシャルスキルが不足している児童にも有効であったか検討する必要があると思われる。本研究では,プログラム開始前に学級の中で質問紙の得点が低かった児童(以下,低得点児とする)をソーシャルスキルが不足しているものとし,プログラムを経て質問紙の得点がどのように変化したか,検討した。
方 法
対象児の選定方法 アセスメントに用いた「お友だち付き合いに関するアンケート」の自己評定尺度と,教師評定尺度の合計得点の両方が学級の下位1/3となった児童を対象とした。
対象児 プログラムに参加した小学5年生3学級92名の児童のうち,12名が低得点児となった。
プログラムの内容 事前に実施した質問紙の結果をもとに標的行動を決め,以下の4回のセッションで各標的行動を指導した。第1回「キレない方法を身につけよう」,第2回「上手な頼み方,断り方を身につけよう」,第3回「友だちを励ます方法を身につけよう」,第4回「誰かに相談する方法を身につけよう」であった。
アセスメント 秋田(2001)「お友だち付き合いに関するアンケート」をもとに自己評定尺度(31項目4件法),教師評定尺度(31項目選択式),仲間評定尺度(8項目選択式)を作成した。自己評定尺度はプログラムの前後を含め計5回,教師評定尺度と仲間評定尺度は全学級第2回査定と各学級のプログラム後の計2回実施した。
結果と考察
CSSTプログラム実施前後における低得点児の自己評定尺度,教師評定尺度,仲間評定尺度の変化について検討を行った。Table 1には,第1回査定の学年全体の結果に基づいて標準化した得点を示した(平均値50,標準偏差10)。自己評定尺度得点について,全ての学級において,本プログラムの導入後に得点の上昇がみられた。フォローアップが可能であったA組とB組において,両方の学級でプログラム終了後も得点が上昇していた。
教師評定尺度(Table 2)について,本プログラムの導入後にA組とC組において得点が上昇,B組において得点が減少していた。B組を除けば,担任教師らがベースライン査定で「スキルが不足している」と感じていた児童らに対して,効果的なプログラムが実施出来たと言えるだろう。仲間評定尺度(Table 2)についても,本プログラムの導入後にA組とC組において得点が上昇,B組において得点が減少していた。B組を除けば,児童らの間でもスキルの向上が認められた可能性が示唆された。
このことから,低得点児にも,本プログラムによって社会的スキルを向上させる効果があったと思われる。