The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

Cancelled

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

Mon. Sep 17, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH12] 異年齢児の遊び空間における対人葛藤場面に対する第三者幼児の介入行動

濱田祥子1, 大上芽来#2 (1.比治山大学, 2.ロータスプリスクール横川)

Keywords:異年齢, 対人葛藤, 介入行動

目  的
 保育所等において,異年齢児が共に過ごす場を設けただけでは異年齢における関わりは成立し難い(菅田,2008)。しかし,異年齢児が共にいること自体に教育的意義があるともいわれる(夏堀,2007)。本調査は,異年齢児が共に過ごす遊び空間で生じた対人葛藤に対する第三者幼児の介入行動から,異年齢保育の意義について検討することを目的とする。

方  法
内容:異年齢児が同じ保育室で過ごす,降園前の自由遊び場面(15時30分~18時30分)を観察し,記録した。記録方法は,幼児の言動をメモし,その後逐語化した。
対象者:日中は同年齢保育をしている保育所の年少児,年中児,年長児各34名。ただし,観察時間が降園前であるため,観察日や時間帯によって対象者の人数は異なる。
期間:2017年4月,5月のうち8日間(約24時間)。
第三者幼児の介入行動のカテゴリー:越中(2001),吉田・竹村(2016),松原・本山(2016)のカテゴリーを参考に,大カテゴリー「加勢」,「仲裁」,「関心」,「阻害」の4つを設定した。「加勢」は「物の付与」,「主張」,「同調・支持」,「慰め」,「注意」,「言語的攻撃」,「身体的攻撃」の7カテゴリー,「仲裁」は「提案」,「制止」,「ルールの導入」,「身代わり」,「おどける」の5カテゴリー,「関心」は「保育者への伝達」,「注視」,「声かけ」,「事実確認」,「説明」の6カテゴリー,「阻害」は「阻害」1カテゴリーの計18種類のカテゴリーを設定した。

結果と考察
第三者幼児の介入行動の回数:対人葛藤場面に対する第三者幼児の介入行動の回数は,年少児4事例,年中児13事例,年長児7事例であった。
年少児の介入行動:第三者の介入があった対人葛藤4事例は,いずれも年少児同士,つまり同年齢児の対人葛藤に同年齢児が介入するというものであった。介入行動は「注視」2事例,「阻害」1事例,「身体的攻撃」1事例であった。また,そのうち3事例は保育者の介入があった。いずれの介入行動も対人葛藤場面の解決には至らなかった。
年中児の介入行動:第三者幼児の介入があった対人葛藤13事例は,年中児同士の対人葛藤が10事例,年長児同士の対人葛藤が1事例,年中児と年長児の対人葛藤が2事例であった。同年齢児に対する介入行動は,「主張」1事例,「注意」1事例,「加わる」1事例,「慰め」2事例,「おどける」1事例,「注視」3事例,「保育者への伝達」1事例であった。異年齢児に対する介入行動は,年長児同士の対人葛藤では「注視」1事例,年中児と年長児の対人葛藤では「注視」1事例,「保育者への伝達」1事例であった。
年長児の介入行動:第三者幼児の介入があった対人葛藤7事例は,年長児同士の対人葛藤が6事例,年中児同士の対人葛藤が1事例であった。同年齢児に対する介入行動は,「主張」2事例,「注意」1事例,「制止」2事例,「注視」1事例であった。異年齢児である,年中児同士の対人葛藤1事例に対する介入行動は「注視」であった。

まとめと今後の課題
 異年齢児が共に過ごす空間における対人葛藤に対する第三者幼児の介入行動について,各年齢の特徴は以下の通りであった。
 まず,年少児の特徴は,対人葛藤,介入行動のいずれも年少児,つまり同年齢同士の事例のみであった。また,対人葛藤を解決に導く介入行動はなかった。年少児,それも進級したばかりの時期は異年齢児との関わりは少なく,同年齢児の対人葛藤へ関心があったとしても,問題解決に有効な方略をとることの困難さが示唆された。
 年中児と年長児の介入行動は,年少児では観察されなかった異年齢児に対するものがあった。異年齢児に対する介入行動は,「注視」と「保育者の伝達」という間接的なもののみであった。直接的な介入行動は,同年齢児の対人葛藤では観察された。介入行動は普段の関係性が影響する(越中,2001)ため,日中別々に過ごしている異年齢児の対人葛藤への介入は難しいことが示唆された。ただし,観察された介入行動の「注視」は関心,「保育者への伝達」は解決の意図の現れであると考えられる。異年齢児の対人葛藤に対して直接的な介入行動をとることは難しくても,無関心ではないといえる。対人葛藤への介入行動の特徴は年齢によって異なるため(吉田・竹村,2016),直接的関わりはなくても,共に過ごすことで,異なる年齢の幼児の介入行動を学ぶ可能性がある。
 今後の課題は,日中に異年齢保育を実施している園でも調査を実施することである。日中の異年齢児との関係性と,異年齢児の対人葛藤に対する介入行動との関連を検討したい。