The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

Mon. Sep 17, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH25] 小学校4年生のタブレット活用授業における教師の指導に関する考察

1学級の授業観察と教師インタビューから

李知苑 (東京大学大学院)

Keywords:タブレット, ICT活用, 教科指導

問題と目的
 教育の情報化(文部科学省,2011)は教師の「教科指導におけるICT活用」が一つの大きな軸となって推進されている。これまでの先行研究では,教師のICT活用への態度や意識,ICTの活用事例などが数多く報告されている(e.g., 堀田他,2008)。一方,ICTを取り入れた授業において教師がねらいや意図を児童に伝えるためにどのように指導しているかについてはあまり明らかではない。そこで本研究では,これまで十分に検討されてこなかった1人1台タブレット環境における教師の教科指導について検討する。その際,授業観察と教師のインタビューから得られたデータをもとに,授業中に行われた指導内容と教師が実感したタブレット活用の効果を関連づけて考察する。

方  法
対象 京都府にあるA小学校4年生1学級の担任教師1名と児童35名(男児19名,女児16名)である。A小学校の全教室には電子黒板や指導者用コンピュータ,校内無線LANが整備されている。担任教師は児童の情報活用能力の育成やタブレット活用授業に積極的に取り組んでいる39歳の男性で(教職年数17年),2016年9月から児童に1人1台タブレット(iPad,iPad mini)を持たせて授業を行っていた。教師と児童はICT機器の操作に習熟していた。
手続き 観察は2016年11月7日から11日まで実施した。授業の様子をビデオカメラ3台で撮影した。責任者に,音声・映像・画像等の記録を取ることを説明した上で同意を得た。教師へのインタビュー(各回1時間弱,計3回)は放課後に行い,授業中に行った指導内容やその意図,授業中の児童の反応への認識,ICT活用に対する態度や考え方について尋ねた。本研究では担任教師が担当し,タブレットを多く用いた国語(4コマ),社会(6コマ),理科(3コマ)を分析の対象にした。

結果と考察
 教師のインタビュー内容から「効果的」,「良かった」,「集中した」などと語っている授業場面と,「アナログの方が速い」などタブレットを思い通り活用できなかったと語っている授業場面を抽出し,教師の指導がどのように異なるかを分析した。まず,教師が効果があると感じた授業として,社会の<京都市で1年間おきた火事の件数のグラフを読み取る>授業と理科の<学習問題を解決しよう>という授業が挙げられた。二つの授業場面から教師の指導において共通点が見出された。
【本時で取り組む学習内容についての明示】「今日は社会科の深まりを少しやります。このグラフから重要なことが分かってくるんですね。」,「今日はこんなことを解決していきます。太陽と月が重なるときがあるのか。」
【タブレットを用いた具体的な取り組み方についての指示】「それ(画面)を見ながらそれに書き込んで気づくことを書いていってください。」,「自分の中で気になることをインターネットとか友達が何個か資料を送ってくれています(中略)それをもとに解決していってください。」
【時間の設定とその後の対応についての説明】「時間は5分ぐらいにします。できたら提出箱を作るので出して下さい。」,「解決に使う時間は20分間にします。20分終わったら交流します。」
【学習内容に関する発問や補足】「読み取れることだけで終わったらあかんから。そこでどんなことがさらに疑問に思うのか。」,「何個疑問を解決できるかはこの勉強の中で重要なところです。」
 一方,教師が意図通りタブレットを活用できなかったと考えた授業は,国語<本文の写真について,それぞれ説明している段落をみつけよう>の授業で,教師は上述とほぼ同様の指導を行った。しかし,【タブレットを用いた具体的な取り組み方についての指示】において「ここの段落をトリミング,切り取ることできる?難しかったらそこの本文だけ写真に撮って(中略)それができにくい人は(紙)ノートでやったらいいです。」,「どちらが速くできるかそれを考えてやっていきましょう。」と児童に学習ツールを選択させ,児童のほとんどは教師が先に提案したタブレットの使用を優先していた。その結果,本来の学習活動よりも教科書の画像を使って段落を切り取るという非本質的な活動に与えられた時間を費やす様子が見られ,タブレット活用授業では教師の指導によって児童の学習活動が影響を受け,教師の狙い通りの授業ができない可能性があることが示された。