The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

Mon. Sep 17, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH26] トゥールミンの三角ロジックを用いた論証トレーニングの効果検証

選択式・即時フィードバックの論証トレーニングの効果

冨永敦子1, 神樹#2 (1.公立はこだて未来大学, 2.公立はこだて未来大学)

Keywords:eラーニング, 論証, 即時フィードバック

背  景
 トゥールミン・モデルは論証モデルの一つであり,特にClaim・Data・Warrantで構成されるものを三角ロジックと呼ぶ。Claim(主張)は書き手の意見や考え,Data(データ)はClaimの証拠となる事実を指す。Warrant(論拠)は,ClaimとDataを論理的につなぐ役割を担う。なぜそのDataからそのClaimが成立するのかを示す。この三角ロジックを文章指導に取り入れている教育現場も多い。通常,三角ロジックを用いてエッセイを書かせ,それに対し教員がフィードバックしているが,エッセイの執筆もフィードバックも多くの時間がかかるため,繰り返し行うことが難しい。もし,論証に関する選択問題に取り組むだけで論証のスキルを養うことができれば,学習を効率化することが可能である。そこで,本研究では,選択式・即時フィードバックの論証トレーニングを作成し,その学習効果を検証することを目的とする。

方  法
 実験協力者は情報系大学生20人(男性17人,女性3人;1年生11人,2年生9人),三角ロジックについて解説した動画教材(Camtasia9.1)と論証トレーニング(Moodle)を作成した。論証トレーニングは,社会的なトピックについて,提示されたClaim,Dataに合う最も適切なWarrantを選択する問題12問である。選択肢は4種類(正解,ClaimとつながらないWarrant,DataとつながらないWarrant,ClaimともDataともつながらないWarrant)であった。不正解の場合は,不正解の理由が即時フィードバックされ,再度問題に取り組める。正解するまで次の問題に進めない。
 実験は,実験協力承諾書の記入,動画教材の視聴,Preエッセイ執筆,論証トレーニング,Postエッセイ執筆の順に進めた。Pre/Postエッセイのテーマは「これからの大学生の就職活動」,テーマに関する事実6つを提示し,これらの事実を用いてエッセイを書くように指示した。

結果および考察
 Pre/Postエッセイは,5観点(①Claim:テーマにそったClaimがなされているか,②Data:指定されたデータを正しく用いているか,③Warrant:複数のWarrantから構成されており,論理的な飛躍がないか,④WarrantとClaim:WarrantとClaimが適切につながっているか,⑤WarrantとData:WarrantとDataが適切につながっているか)について,0点・1点・2点の3段階で採点した。
 採点結果について,対応ありのt検定を行ったところ,①Claim,②Dataは有意でなかった。これらは,Pre/Postともに天井効果を示していたことから,トレーニング前からほぼできていたと推測される。
 ③Warrant,④WarrantとClaimのつながりは有意傾向(t(19)=2.15, p <.10 ; t(19)=1.79, p <.10)であったが,⑤WarrantとDataのつながりは1%水準で有意(t(19)=3.68, p <.01)であった。①~⑤の合計得点については,1%水準で有意(t(19)=3.04, p <.01)であった(効果量についてはTable1参照)。
 これらの結果から,選択式・即時フィードバックの論証トレーニングに取り組んだことにより,学習者はData・Warrant・Claimのつながりを意識し,ほぼつながっている文章を書けるようになったことが示唆された。しかしながら,③Warrantの効果量が小程度であることから,この論証トレーニングの効果が限定的であることも示された。トレーニングでは,Warrantは1文だけであったが,エッセイでは複数の文により構成しなければならなかった。Warrantを1文だけ選ぶトレーニングでは,複数の文を論理的に組み立てられるまでには至らないと考えられる。