The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

Mon. Sep 17, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH64] 教師志望学生の教師観と大学に求める授業

増田優子1, 三宮真智子2 (1.大阪大学大学院, 2.大阪大学大学院)

Keywords:教師志望学生, 教師観, 授業

問題と目的
 教師に求められる資質能力として,「教職に対する強い情熱」「教育の専門家としての確かな力量」「総合的な人間力」が掲げられている(文部科学省,2009)。前田ら(2013)は,入学当初の学生の教師観,教育観,および,学生が学びたいことを明らかにすることは,学生が目指す教師像へ近づくために大切であるという。また,寺本(2010)は,大学在学中に学生の教師としての力量を向上させるためには,大学での指導の在り方が重要と考えて,大学2年生の教師観,指導観,児童観を調査している。
 以上より,本研究では,教師を志望する学生の教師観と,大学でどのような授業を期待しているのかについて検討する。それにより,教員養成課程における学生の,教師としての資質能力の育成について,有意な示唆を得ることを目的とする。

方  法
対象者 教員養成大学および総合大学の教師を志望する大学1,2年生346名(男性158名,女性188名),平均年齢19.04歳(SD=1.09)。
手続き ①「教師に必要だと思うスキル」,②「大学に求める授業」,について自由記述で回答を求めた。

結果と考察
「教師に必要だと思うスキル」 同一回答者の回答のうち2つ以上の異なる意味を持つ文を分類した結果,全部で465の回答が得られた。これを実施者と心理学系の大学院生1名でKJ法にて分類した。次に,教職経験者である別の評定者1名が下位カテゴリの各定義を参照して分類し,双方の結果を照合した(一致率:79.00%)。不一致の項目については討議により照合した(Table1)。
「大学に求める授業」 先と同様の評定者・方法で分類した。2つ以上の異なる意味を持つ文を分類した結果,289の回答が得られ, KJ法の結果,上位・中位・下位のカテゴリに分類された。別の評定者の分類結果との照合を行った結果,一致率は82.00%であった。不一致の項目については討議により照合した(Table 2)。
 結果より,「教師に必要だと思うスキル」について,コミュニケーション力などの対人関係形成力が最も多く,次に,共感性や他者視点などを含めた他者理解に関するものが多く挙げられていた。これより,実習前の学生は,他者との関係形成に関するスキルが将来教員になるために必要だと感じていると考えられる。
 「大学に求める授業」では,実際に授業としてある科目(心理学や特定教科など)が挙げられていた。一方で,学生たちは一般常識やマナー,子ども理解,コミュニケーションなどの学びの必要性を感じていた。さらに,現場体験や現場の教員からの直接的な学びについても期待されていることが示された。直接的な学びの場面としては代表的なものに教育実習が挙げられる。しかしながら,教育実習とは別に,学校現場についてよく知りたい,現場と触れ合う機会が欲しいと希望している学生が多いことが伺える。
 興味深いことに両回答はあまり一致しておらず,教師に必要なスキルには,人として一般的に必要だと思えるような回答が多く挙げられていたが,実際に学びたいものは授業や現場体験に即した教職のためのものが多く挙げられていた。