[PH68] 小学4年生を対象としたアンガーマネージメントプログラムの効果に関する検討
Keywords:アンガーマネージメント, 向社会的スキル, 予防教育
問題と目的
文部科学省(2011)は,「最近の児童生徒の傾向として,感情を抑えられず,考えや気持ちを言葉でうまく伝えたり人の話を聞いたりする能力が低下していること」を指摘している。学校現場でも子どもたちの人間関係を形成する力の低下や学校不適応に対する予防教育の必要性が高まり,学級単位の社会的スキル訓練(以下SST)が多くなされている(相川・藤枝, 2001)。また栗原(2017)は学校での適応感と学校以外での適応感を反映した「生活満足感」に対して,他者への援助や他者との関係を作ろうとする「向社会的スキル」が最も強く影響を与えていることを示唆しており,SSTの需要が現在でも十分にあることが窺える。
SSTが社会的スキル獲得に貢献していることは様々な研究によって明らかにされているが,スキルだけを学んでも不安定な感情状態では客観的に状況を見る力が低下し,うまくスキルを使えない可能性が考えられる。本田(2014)はこのような問題に対して,①生理的反応への対応②認知的反応への対応③向社会的判断力・行動力の育成を目的としたアンガーマネジメントDプログラム(以下Dプログラム)を作成している(Table1)。しかしその教育効果はまだ明確には検討されていない。
そこで本研究では,予防教育の一環として学校適応感に注目し,Dプログラムの効果測定を目的とする。
方 法
調査対象 A県内の私立小学校第4学年3学級103名(男子68名,女子35名)が調査対象であった。
調査時期 20XX年1月~3月に全6回実施した。
質問紙尺度 効果測定には,標準化されている学校環境適応感尺度「ASSESS:Adaptation Scale for School Environments on Six Spheres(以下アセス)」(栗原・井上, 2010)を用いた。
結 果
有効回答は,事前事後ともに回答のあった101名であった。Dプログラムの実施前と実施後に回収したアセス得点を比較するために,各々の得点の平均と標準偏差を求め,対応のあるt検定を行った(Table2)。その結果,向社会的スキルにおいて事前と事後の間で有意差が見られた(t(100)=4.26, p<.001)。
考 察
分析結果から,Dプログラムの実施が子どもたちの向社会的スキルに効果的に影響する可能性が明らかになった。子どもたちの向社会的判断や行動に対する意識が変化したのは,Dプログラムを通して不安定な感情や認知への対応スキルを獲得したことで,学んだ向社会的スキルを使おうと思えるようになったためではないかと考えられる。
また,有意差はでていないが生活満足感,教師サポート,友人サポートも事前に比べて得点が上がっている。これは栗原(2017)の学校適応感の構造とも合致している。本研究では学校適応感の向上において向社会的スキルが重要であること,アンガーマネジメントDプログラムが向社会的スキルを高め,ひいては学校適応感に効果的である可能性があることが示唆された。
文部科学省(2011)は,「最近の児童生徒の傾向として,感情を抑えられず,考えや気持ちを言葉でうまく伝えたり人の話を聞いたりする能力が低下していること」を指摘している。学校現場でも子どもたちの人間関係を形成する力の低下や学校不適応に対する予防教育の必要性が高まり,学級単位の社会的スキル訓練(以下SST)が多くなされている(相川・藤枝, 2001)。また栗原(2017)は学校での適応感と学校以外での適応感を反映した「生活満足感」に対して,他者への援助や他者との関係を作ろうとする「向社会的スキル」が最も強く影響を与えていることを示唆しており,SSTの需要が現在でも十分にあることが窺える。
SSTが社会的スキル獲得に貢献していることは様々な研究によって明らかにされているが,スキルだけを学んでも不安定な感情状態では客観的に状況を見る力が低下し,うまくスキルを使えない可能性が考えられる。本田(2014)はこのような問題に対して,①生理的反応への対応②認知的反応への対応③向社会的判断力・行動力の育成を目的としたアンガーマネジメントDプログラム(以下Dプログラム)を作成している(Table1)。しかしその教育効果はまだ明確には検討されていない。
そこで本研究では,予防教育の一環として学校適応感に注目し,Dプログラムの効果測定を目的とする。
方 法
調査対象 A県内の私立小学校第4学年3学級103名(男子68名,女子35名)が調査対象であった。
調査時期 20XX年1月~3月に全6回実施した。
質問紙尺度 効果測定には,標準化されている学校環境適応感尺度「ASSESS:Adaptation Scale for School Environments on Six Spheres(以下アセス)」(栗原・井上, 2010)を用いた。
結 果
有効回答は,事前事後ともに回答のあった101名であった。Dプログラムの実施前と実施後に回収したアセス得点を比較するために,各々の得点の平均と標準偏差を求め,対応のあるt検定を行った(Table2)。その結果,向社会的スキルにおいて事前と事後の間で有意差が見られた(t(100)=4.26, p<.001)。
考 察
分析結果から,Dプログラムの実施が子どもたちの向社会的スキルに効果的に影響する可能性が明らかになった。子どもたちの向社会的判断や行動に対する意識が変化したのは,Dプログラムを通して不安定な感情や認知への対応スキルを獲得したことで,学んだ向社会的スキルを使おうと思えるようになったためではないかと考えられる。
また,有意差はでていないが生活満足感,教師サポート,友人サポートも事前に比べて得点が上がっている。これは栗原(2017)の学校適応感の構造とも合致している。本研究では学校適応感の向上において向社会的スキルが重要であること,アンガーマネジメントDプログラムが向社会的スキルを高め,ひいては学校適応感に効果的である可能性があることが示唆された。