[PH72] 「子どもの話を聞く場面における教師の習慣的態度」に関する質問項目の作成
Keywords:教師の聞く態度, 小学校教員, 質問紙調査
問題・目的
教師が子どもの話を「聞く」ことは,子どもにとっての学校生活の基盤を提供する。職場における積極的傾聴態度評価尺度は既に存在するが,カウンセリング理論に基づき,主に大人同士の関わりを前提とした研究に用いられている。
本研究では,複数の子どもを相手とする教師が,カウンセリングとは異なる状況において,必ずしも相談という形式をとらない子どもの話を聞く際の態度について,より現実に即し,子どものニーズにあった質問項目の作成を試みた。
方 法
調査協力者 兵庫県内の公立小学校に勤務する3市8校の教員に留置き法による質問紙調査を依頼し,112名から回答を得られた。回収率は48.28%であった。回答に不備のあるものを除外した結果,92名(男性39名,女性53名)を分析対象とした。年齢は22~63歳であった(M=38.21,SD=12.04)。有効回答率は40.28%であった。
調査時期 2017年11月上旬から中旬であった。
調査内容 予備調査として,大学生を対象に,学校の先生に「話してよかった」「話さなければよかった」と感じた高校卒業までのエピソードを自由記述で収集・分類した結果,「受容・安定」「洞察・尊重」「支援・応援」「軽視・回避」「決めつけ・否定」の5つのカテゴリが得られた。これらをもとに教師に自己評定を求める30項目を作成した。
この質問項目を用い,それぞれ「1.全くあてはまらない」「2.あてはまらない」「3.あまりあてはまらない」「4.少しあてはまる」「5.あてはまる」「6.よくあてはまる」の6件法で回答を求めた。加えて,積極的傾聴態度評価尺度短縮版(Kubota et al.2004,巽 2010)20項目に6件法で回答を求めた。
結果・考察
項目の評定値について,主因子法による因子分析を行った。固有値の減衰状況(6.54,2.93,
2.19,1.75,1.54,1.41…)と因子の解釈可能性に基づき,3因子解を採用した。主因子法・プロマックス回転による因子分析を行い,共通性初期値が.20に満たない6項目を除外した。24項目について再度因子分析を行った。さらに,1つの因子に対して.35以下の負荷量を示した項目を示した3項目を除外し,残った21項目で再度,因子分析を行った結果,3つの因子が抽出された(Table1)。
予備調査から得られたカテゴリのうち,主に「軽視・回避」「決めつけ・否定」の項目が第1因子にまとまった。話をする子どもではなく,聞く側の教師の立場を優先する態度項目と解釈できる。第2因子は「受容・安定」「支援・応援」の逆転項目から構成された。教師にとっての不全感を表す項目がまとまったと考えられる。さらに,第3因子は「話してよかった」と感じたエピソードから得られた3カテゴリを網羅する態度項目から構成され,個に応じ,安定した受容的・積極的な態度がまとまったと考えられる。
各因子得点は積極的傾聴態度評価尺度の下位因子得点と有意な相関が示された(Table2)。また年齢・教師歴との相関関係は3つの因子のいずれにも見出されなかった。子どものニーズに合った聞き方は,年齢や教師歴の長さで自然に養われるものではないことが示唆された。
教師が子どもの話を「聞く」ことは,子どもにとっての学校生活の基盤を提供する。職場における積極的傾聴態度評価尺度は既に存在するが,カウンセリング理論に基づき,主に大人同士の関わりを前提とした研究に用いられている。
本研究では,複数の子どもを相手とする教師が,カウンセリングとは異なる状況において,必ずしも相談という形式をとらない子どもの話を聞く際の態度について,より現実に即し,子どものニーズにあった質問項目の作成を試みた。
方 法
調査協力者 兵庫県内の公立小学校に勤務する3市8校の教員に留置き法による質問紙調査を依頼し,112名から回答を得られた。回収率は48.28%であった。回答に不備のあるものを除外した結果,92名(男性39名,女性53名)を分析対象とした。年齢は22~63歳であった(M=38.21,SD=12.04)。有効回答率は40.28%であった。
調査時期 2017年11月上旬から中旬であった。
調査内容 予備調査として,大学生を対象に,学校の先生に「話してよかった」「話さなければよかった」と感じた高校卒業までのエピソードを自由記述で収集・分類した結果,「受容・安定」「洞察・尊重」「支援・応援」「軽視・回避」「決めつけ・否定」の5つのカテゴリが得られた。これらをもとに教師に自己評定を求める30項目を作成した。
この質問項目を用い,それぞれ「1.全くあてはまらない」「2.あてはまらない」「3.あまりあてはまらない」「4.少しあてはまる」「5.あてはまる」「6.よくあてはまる」の6件法で回答を求めた。加えて,積極的傾聴態度評価尺度短縮版(Kubota et al.2004,巽 2010)20項目に6件法で回答を求めた。
結果・考察
項目の評定値について,主因子法による因子分析を行った。固有値の減衰状況(6.54,2.93,
2.19,1.75,1.54,1.41…)と因子の解釈可能性に基づき,3因子解を採用した。主因子法・プロマックス回転による因子分析を行い,共通性初期値が.20に満たない6項目を除外した。24項目について再度因子分析を行った。さらに,1つの因子に対して.35以下の負荷量を示した項目を示した3項目を除外し,残った21項目で再度,因子分析を行った結果,3つの因子が抽出された(Table1)。
予備調査から得られたカテゴリのうち,主に「軽視・回避」「決めつけ・否定」の項目が第1因子にまとまった。話をする子どもではなく,聞く側の教師の立場を優先する態度項目と解釈できる。第2因子は「受容・安定」「支援・応援」の逆転項目から構成された。教師にとっての不全感を表す項目がまとまったと考えられる。さらに,第3因子は「話してよかった」と感じたエピソードから得られた3カテゴリを網羅する態度項目から構成され,個に応じ,安定した受容的・積極的な態度がまとまったと考えられる。
各因子得点は積極的傾聴態度評価尺度の下位因子得点と有意な相関が示された(Table2)。また年齢・教師歴との相関関係は3つの因子のいずれにも見出されなかった。子どものニーズに合った聞き方は,年齢や教師歴の長さで自然に養われるものではないことが示唆された。