[PA10] 親の早期の対応が子どもの認知的達成や非認知的成熟に及ぼす影響の効果の評価
Millennium Cohort Studyデータのベイズ的分析
Keywords:読み聞かせ、MCS、ベイズ的階層分析
問 題
MCS(Millennium Cohort Study)は,長期にわたり,出生コホートを追跡した貴重なデータを提供している。このデータを使った研究は膨大な数に上るが,本研究では,親が乳児にどのような態度をとるかを独立変数として,後年の認知的な達成や非認知的社会的成熟度を従属変数として,その間の因果的関連性を明らかにしたい。ただし,当然のことながら,親の対応の違いは,無作為割り当てによるものではない。親の対応に影響を与えてきた共変数や独立変数と従属変数に共に影響を与える交絡変数が存在する。本研究では,共変数の影響を取り除くために,階層的にモデルを作り,その影響の効果をベイズ的に推論する。
分析方法
MCSのデータから独立変数,従属変数,共変数を選択した。独立変数は「1.How often do you read to the child?(回答カテゴリー:(1)毎日,(2)1週に数回,(3)1,2回,(4)月に1回かそれ以下)」,および,「2.Response to baby crying(回答カテゴリー:(1)すぐに抱き上げる,(2)しばらく泣かせておく,(3)こちらの都合による,(4)泣く理由による)」の2つである。従属変数は「British Ability Scale」など9項目の認知的変数,および「can be spiteful to others」, 「easily distracted」など10項目の非認知的社会的変数とし,共変数を「親の収入」とした。
共変数の影響を取り除くためには,線形的に,収入の影響を取り除くことは困難である。本研究で採用した方法は,収入を5段階のクラスに分けて,そのクラスの中では,独立変数と従属変数の因果的関連は同じであると仮定し,それぞれの結果(事後分布)を統合するという方法を取った。この推論においては,各クラスの母平均が交換可能であることを仮定して解の安定を図った。全体母集団の平均の事後分布として,それぞれのクラスの平均の事後分布を統合した。(各クラスの分布はオリジナルの標本分布に基づく。これによって,ミシングデータの問題を避けることができる)。さらに,予測分布を求めた。事後分布,および予測分布は,統計ソフトStanによって計算した。
分析結果
典型的なパタンを示す二つの結果を示す。Figure 1は,独立変数1(read)の4つの回答のそれぞれにおける従属変数の平均の事後分布(上)と,従属変数の予測分布(下)を示す。Figure 2に,独立変数2(crying)の4つの回答のそれぞれにおける従属変数の平均の事後分布を示した。
まとめ
読み聞かせの効果は,親の収入の影響を取り除いても,認知変数にははっきりと表れている。母平均だけではなく,予測分布にもその効果は顕著であった。また,後年の非認知変数へも影響している。一方,泣いている乳児への対応の違いは,認知変数,非認知変数を問わず,後年の発達に影響を与えていない。
MCS(Millennium Cohort Study)は,長期にわたり,出生コホートを追跡した貴重なデータを提供している。このデータを使った研究は膨大な数に上るが,本研究では,親が乳児にどのような態度をとるかを独立変数として,後年の認知的な達成や非認知的社会的成熟度を従属変数として,その間の因果的関連性を明らかにしたい。ただし,当然のことながら,親の対応の違いは,無作為割り当てによるものではない。親の対応に影響を与えてきた共変数や独立変数と従属変数に共に影響を与える交絡変数が存在する。本研究では,共変数の影響を取り除くために,階層的にモデルを作り,その影響の効果をベイズ的に推論する。
分析方法
MCSのデータから独立変数,従属変数,共変数を選択した。独立変数は「1.How often do you read to the child?(回答カテゴリー:(1)毎日,(2)1週に数回,(3)1,2回,(4)月に1回かそれ以下)」,および,「2.Response to baby crying(回答カテゴリー:(1)すぐに抱き上げる,(2)しばらく泣かせておく,(3)こちらの都合による,(4)泣く理由による)」の2つである。従属変数は「British Ability Scale」など9項目の認知的変数,および「can be spiteful to others」, 「easily distracted」など10項目の非認知的社会的変数とし,共変数を「親の収入」とした。
共変数の影響を取り除くためには,線形的に,収入の影響を取り除くことは困難である。本研究で採用した方法は,収入を5段階のクラスに分けて,そのクラスの中では,独立変数と従属変数の因果的関連は同じであると仮定し,それぞれの結果(事後分布)を統合するという方法を取った。この推論においては,各クラスの母平均が交換可能であることを仮定して解の安定を図った。全体母集団の平均の事後分布として,それぞれのクラスの平均の事後分布を統合した。(各クラスの分布はオリジナルの標本分布に基づく。これによって,ミシングデータの問題を避けることができる)。さらに,予測分布を求めた。事後分布,および予測分布は,統計ソフトStanによって計算した。
分析結果
典型的なパタンを示す二つの結果を示す。Figure 1は,独立変数1(read)の4つの回答のそれぞれにおける従属変数の平均の事後分布(上)と,従属変数の予測分布(下)を示す。Figure 2に,独立変数2(crying)の4つの回答のそれぞれにおける従属変数の平均の事後分布を示した。
まとめ
読み聞かせの効果は,親の収入の影響を取り除いても,認知変数にははっきりと表れている。母平均だけではなく,予測分布にもその効果は顕著であった。また,後年の非認知変数へも影響している。一方,泣いている乳児への対応の違いは,認知変数,非認知変数を問わず,後年の発達に影響を与えていない。