日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA12] タブレットPCを利用した小学校4年生ペア学習前後における音読の変化(2)

間(ポーズ)の取り方の変容について

東原文子1, 鳥海楓華2 (1.聖徳大学, 2.放課後等デイサービス ハッピーテラス)

Keywords:音読、ICT、小学生

はじめに
 本研究では東原・鳥海(2018)の音読学習を小学校4年生の10組のペアに実施し,ペア学習前後の児童の音読を比較した。余郷(2000)の小学校2年生を対象とした研究では,指導後は指導前よりも「間」の時間が長くなり,意味構造やイメージに即した「間」を取る傾向が認められたと述べている。そこで本報告は,タブレット上のセルごとの音読の「間」(ポーズ)を計測し比較する方法で,タブレットPCを活用した小学生によるペア学習の前後における音読の変化を,間(ポーズ)の取り方の観点から明らかにすることを目的とした。
方  法
(1)対象・時期・場所(前掲報告(1)に同じ)
 平成30年4月~10月に,朝のドリル学習時に空き教室で実施した。対象児童は,小学校4年生 20名(男女10名ずつ)。男女1名ずつのペアごとに,東原・鳥海(2018)の教材を用いた音読のペア学習を行った。ICレコーダーで音声を録音した。本研究は聖徳大学倫理委員会の承認を得ている。
(2)手続き(前掲報告(1)に同じ)
 <プレ1>タブレットPC画面を見ながら1名ずつの音読。<プレ2>プレ1の約2ヵ月後に音読を再実施。<ペア学習>二人で交互にタブレット教材を操作し,話し合いながら文字の大きさを変更したり背景を着色したりするペア学習。<ポスト1>ペア学習後すぐ,完成品を見ながら音読。<ポスト2>プレ1の画面に戻し,再び音読。
(3)分析方法
 エクセルの各セルに縦書きで「かぼちゃのつるが」の詩の「かぼちゃの」といった文言が縦2セル×横12列にわたり記入されており,児童はそれを読む。それを録音し,音声分析ソフト(NCHソフトウエアWavePad ver.7.08)を用いて,セルごとの音読のポーズを音声波形から計測し,プレ1とプレ2,及びプレ2,ポスト1,ポスト2の間(ポーズ)の比較を行った。
結果及び考察
(1)20名のプレ1とプレ2の間(ポーズ)比較
 ウィルコクソン符号付順位和検定(両側)により,20名のプレ1とプレ2のポーズの中央値を比較した結果,ポーズが有意に短くなった箇所はあっても長くなった箇所はなかった。つまり,2ヵ月の間隔を置いて実施した2回の個別実施の音読の間に,ポーズが長くなるという変容は見られなかった。そのため,本研究の介入以外の要因では「間(ポーズ)を長く取るようになる」という変容はなかったものとして同教材で実験を進めた。
(2)ペア学習前後の間(ポーズ)の変化
 フリードマン検定及びシェッフェの対比較による多重比較を行った。各セル間において20名分のポーズの中央値に差があるかを見た分析では,プレ2,ポスト1,ポスト2の3回のポーズの5ヵ所のセル間でペア学習前より後の方が有意に長くなった。それらは意味のまとまりの切れ目であった。児童ごとに,セル間23箇所のポーズの中央値に差があるかを見た分析においては,20名中7名はペア学習前より後の方が有意に長くなった。
(3)ペア学習前後の変容が見られた代表事例
 音読の間(ポーズ)に変容が特徴的であったペア8を抽出して紹介する。男児女児の音読における,セル間のポーズの中央値をFigure1に示す。フリードマン検定の結果,女児(χ2(2)=6.07,p<.05)男児(χ2(2)=6.58,p<.05)いずれも有意差があり,女児はプレ2<ポスト1,男児はポスト1<ポスト2という有意差が見られた。女児はペア学習の結果,文字の大きさを変化させた文面を見て間を長く取るようになり,文字の大きさ等を元に戻してもそれは維持されていた。男児はもともとゆったりとした間を取っていたが,一連の学習の後,さらに間を長く取るようになった。「間を長く取るようになる」という観点でみると,ペア学習により,間の短かった児童も,もともと間が長かった児童も共に伸びる可能性が示された。
引用文献
東原文子・鳥海楓華(2018)タブレットを用いた音読学習教材の活用可能性.教心60.
余郷裕次(2000)パソコンによる音読音声の分析―会話表現の音読を中心に―.大阪国語教育研究会編『野地潤家先生傘寿記念論集』,63-72.