[PA16] 取り合わせによる創作を用いた俳句教育実践とその効果の検証
児童の最近接発達領域を考慮した俳句教育の試み
Keywords:俳句教育、取り合わせ、最近接発達領域
問題と目的
俳句は,子どもたちの様々な能力を養うことができる魅力的な教材である。俳句の鑑賞を行うことで,言葉の持つ豊かさを感じ,鑑賞力や想像力を養うことができる。また,俳句の創作を行うことで,豊かな表現力や語彙力を育成することもできる。そのため,俳句を題材とする教育実践研究が多く行われてきた。皆川・横山(2013)でも,季語やその他の用語の取り扱いに焦点をあてた俳句学習の実践研究が行われている。
本研究では,俳句創作の入門期にある小学校4年生の発達水準を考慮し,よりよい入門学習のあり方を探究する。俳句は,その形式によって,季語だけに意識を集中し,その状態や動作を詠む「一物仕立て」と,季語とそれとは離れた情景を組み合わせて詠む「取り合わせ」の二つに分けられる。「取り合わせ」は「一物仕立て」に比べ,高度な観察力,想像力が要求されず創作が行い易いと考えられる。よって,本研究では,「取り合わせ」による創作学習について実践を行うこととした。
本研究における授業実践
2019年11月,協力校(教員養成大学附属小学校)の教頭先生によって行われた,俳句の形式と季語についての2時間の授業に続いて,本研究グループが下記に示す2時間の授業を実施した。
「取り合わせ」の指導の授業
①これまでの俳句知識の復習:俳句のきまりや季語について復習した。
②日記作り:生活の中で楽しかったことやがんばったことなどを書いた。
③俳句の種探し:俳句の種とは,季語とは離れた情景であり,日記の中から十二音で見つけさせた。
④季語選び:どんな情景とも組み合わせやすい,秋の季語を提示し,お気に入りのものを選ばせた。
⑤取り合わせによる俳句の創作:俳句の種と選んだ季語を組み合わせるように指導した。
自由創作の授業
①取り合わせについての復習:俳句の種と季語を組み合わせて作れることを思い出させた。
②俳句の創作:制限を設けず自由に取り組ませた。
③創作した俳句の清書:3句以内を清書させた。
「取り合わせ」の授業における創作俳句の考察
まず,児童が書いた日記に見られる特徴を分析した。その結果,遠足や運動会,ハロウィンといった大きな行事をテーマとして取り上げる児童が多いことがわかった。記憶に残りやすく,その時の感情を表現しやすいからであると考えられる。
次に,俳句の種をみつけるという作業についての分析を行った。その結果,日記のキーワードとなる重要な単語を抜き出すこと,ある文章を言い換えて取り出すこと,文章をそのまま抜き出すことなどの活動がみられた。七音または五音の言葉をそのまま抜き出すという児童が最も多かった。
最後に季語の選択についての分析を行った。その結果,「秋うらら」「秋日和」「秋の声」など,語頭に秋とつく季語が多く用いられていた。イメージしやすい季語を用いていると考えられる。
自由創作の授業における俳句の考察
形式別作成傾向
自由創作の時間に作成された俳句は127句であった。個々の児童が最も多く作成した俳句の形式という観点から,形式別作成傾向を分析した。その結果「取り合わせ傾向」で作成した児童が最も多く,前時の学習経験を活かして俳句作りに取り組んだ児童が多いことがわかった。また,「一物仕立て傾向」で作成した児童も相当数おり,俳句作りにおいて季語を中心に据えて情景を想像することに価値を置いている児童がいることがわかった。
表現の工夫
直接的な感情表現の有無によって俳句を分類した。その結果,直接的な感情表現を使わず,情景から感情を読み取らせる深みのある俳句が多かった。取り合わせによる俳句では特に少なく,取り合わせによる創作は,感情表現を抑える効果があるとわかった。言葉選びの独自性に優れているものも多く,季語と俳句の種がよりよく引き立てあっていた。一物仕立てによる俳句には季語を表現するのに擬態語や擬声語を用いているものもあれば,それよりも高度な想像力や言語力が求められる比喩表現を用いているものもあり,思考力の発達に個人差が生じる時期であることが垣間見えた。
まとめと展望
本実践では「取り合わせによる俳句づくり」ということをもとに,俳句作りが難しいと感じる児童でも取り組みやすい創作の視点を示すことができた。授業では,俳句の種を十二音で探しだすのに困っていた児童もいたので改善が必要である。また,今後は「一物仕立てによる俳句づくり」という視点も加え,より豊かな表現を行えるようになる授業を考案して行きたい。
俳句は,子どもたちの様々な能力を養うことができる魅力的な教材である。俳句の鑑賞を行うことで,言葉の持つ豊かさを感じ,鑑賞力や想像力を養うことができる。また,俳句の創作を行うことで,豊かな表現力や語彙力を育成することもできる。そのため,俳句を題材とする教育実践研究が多く行われてきた。皆川・横山(2013)でも,季語やその他の用語の取り扱いに焦点をあてた俳句学習の実践研究が行われている。
本研究では,俳句創作の入門期にある小学校4年生の発達水準を考慮し,よりよい入門学習のあり方を探究する。俳句は,その形式によって,季語だけに意識を集中し,その状態や動作を詠む「一物仕立て」と,季語とそれとは離れた情景を組み合わせて詠む「取り合わせ」の二つに分けられる。「取り合わせ」は「一物仕立て」に比べ,高度な観察力,想像力が要求されず創作が行い易いと考えられる。よって,本研究では,「取り合わせ」による創作学習について実践を行うこととした。
本研究における授業実践
2019年11月,協力校(教員養成大学附属小学校)の教頭先生によって行われた,俳句の形式と季語についての2時間の授業に続いて,本研究グループが下記に示す2時間の授業を実施した。
「取り合わせ」の指導の授業
①これまでの俳句知識の復習:俳句のきまりや季語について復習した。
②日記作り:生活の中で楽しかったことやがんばったことなどを書いた。
③俳句の種探し:俳句の種とは,季語とは離れた情景であり,日記の中から十二音で見つけさせた。
④季語選び:どんな情景とも組み合わせやすい,秋の季語を提示し,お気に入りのものを選ばせた。
⑤取り合わせによる俳句の創作:俳句の種と選んだ季語を組み合わせるように指導した。
自由創作の授業
①取り合わせについての復習:俳句の種と季語を組み合わせて作れることを思い出させた。
②俳句の創作:制限を設けず自由に取り組ませた。
③創作した俳句の清書:3句以内を清書させた。
「取り合わせ」の授業における創作俳句の考察
まず,児童が書いた日記に見られる特徴を分析した。その結果,遠足や運動会,ハロウィンといった大きな行事をテーマとして取り上げる児童が多いことがわかった。記憶に残りやすく,その時の感情を表現しやすいからであると考えられる。
次に,俳句の種をみつけるという作業についての分析を行った。その結果,日記のキーワードとなる重要な単語を抜き出すこと,ある文章を言い換えて取り出すこと,文章をそのまま抜き出すことなどの活動がみられた。七音または五音の言葉をそのまま抜き出すという児童が最も多かった。
最後に季語の選択についての分析を行った。その結果,「秋うらら」「秋日和」「秋の声」など,語頭に秋とつく季語が多く用いられていた。イメージしやすい季語を用いていると考えられる。
自由創作の授業における俳句の考察
形式別作成傾向
自由創作の時間に作成された俳句は127句であった。個々の児童が最も多く作成した俳句の形式という観点から,形式別作成傾向を分析した。その結果「取り合わせ傾向」で作成した児童が最も多く,前時の学習経験を活かして俳句作りに取り組んだ児童が多いことがわかった。また,「一物仕立て傾向」で作成した児童も相当数おり,俳句作りにおいて季語を中心に据えて情景を想像することに価値を置いている児童がいることがわかった。
表現の工夫
直接的な感情表現の有無によって俳句を分類した。その結果,直接的な感情表現を使わず,情景から感情を読み取らせる深みのある俳句が多かった。取り合わせによる俳句では特に少なく,取り合わせによる創作は,感情表現を抑える効果があるとわかった。言葉選びの独自性に優れているものも多く,季語と俳句の種がよりよく引き立てあっていた。一物仕立てによる俳句には季語を表現するのに擬態語や擬声語を用いているものもあれば,それよりも高度な想像力や言語力が求められる比喩表現を用いているものもあり,思考力の発達に個人差が生じる時期であることが垣間見えた。
まとめと展望
本実践では「取り合わせによる俳句づくり」ということをもとに,俳句作りが難しいと感じる児童でも取り組みやすい創作の視点を示すことができた。授業では,俳句の種を十二音で探しだすのに困っていた児童もいたので改善が必要である。また,今後は「一物仕立てによる俳句づくり」という視点も加え,より豊かな表現を行えるようになる授業を考案して行きたい。