[PA18] 教員対象の「一人TT方式」研修プログラムの開発(1)
免許状更新講習における実践的教育プログラムの評価
Keywords:一人TT、教員研修、免許状更新講習
教師は,授業場面において,授業全体の流れ,実行している教授活動,学習者の学習行動や認知状態の観察評価など多くの課題をマルチタスク処理している。小川(2018a,b)は,授業者が受講者の状態に対して配慮することを可能にする授業形態として「一人TT」を提案している。「一TT」とは,自分が作成した教材解説ビデオを流し,それに自分で解説を加える形で授業を進める授業実践の形態である。
本研究では,6時間の「一人TT」の教員研修プログラムを開発し,その効果を検討した。
方 法
参加者:A大学における教員免許状更新講習の受講生23名(男性12名,女性11名;平均年齢40.61歳)。校種(高11,中9,小1,特支1)。
講師:A大学B学部の教授1名。
教材:
(1)説明資料:Wordで作成した呈示用資料をPDF化したもの。メール添付で受講生に配布した。
(2)解説ビデオ:上記のPDF資料を使って研修内容を動画形式で録画し,ビデオ教材を作成した。Webページを介して受講生に配布した。
(3)配布資料:研修当日に印刷物として配布した。
研修内容:以下のような研修を行った。
・事前に説明資料ならびに解説ビデオを受講生に配布し,反転学習のための事前学習を行うように指示した。事前学習には,(1)一人TTとは何か,どんな特徴があるかの説明と解説(ビデオ),(2)一人TTのための自作教材の作り方の解説(ビデオ),が含まれていた。受講生は,研修当日,模擬授業を行うので,模擬授業で使う授業用一人TTビデオの作成のために,提示資料を作成して持参するように指示を与えた。
・研修当日は,配布資料をもとに,(1)各自が持参したPDF提示資料を使って一人TT用ビデオ教材を作成し,(2)作成している教材についてグループで話し合い,(3)作成したビデオ教材を使って相互に模擬授業をしたり,(4)模擬授業について相互に評価して改善点を話し合った。
手続き:研修2週間前に,教材(1)と教材(2)を受講者に配布した。教材(1)(2)の配布に電子メールならびにweb経由のファイルダウンロードを利用した。研修当日の最初と最後に,受講者に調査用紙を配布し回答を求めた。データは統計的に処理され個人情報は外部に公表されることはないこと,回答は任意であり回答を中止しても講習の評価には影響しないことを述べ,事前調査後に研修を行い,研修終了時に事後調査を実施した。
結 果
(1) 一人TT研修の関連用語知識についての自己評定を事前事後で比較した結果,「LMS」と「一人TT」に対する自己評価が大きく変化しており,統計的に有意に増加していた(共にp<0.01)。
(2)「最終的に満足のいく教材が作れたかどうか」ついて評価を求めた。評定値は平均2.6(SD 0.66) [2.27-2.85]で中程度評価だった。
(3)自作の教材等で改善が必要な点として「教材PDF」「説明方法」「声の出し方」について評価(0〜4)を求めた。 2.6[2.25-2.97],3.0[2.59-3.41], 2.8 [2.42-3.23]で中程度〜やや高めであった。
(4) 「今後一人TTを利用した教育実践を行っていこうと思うか」についての評定は,2.78 [2.39- 3.17]であった。
(5) 自由記述で今後の一人TTの利用と研修プログラムの感想を求めた。一人TTの利用に前向きな意見が多く見られた。研修内容の改善を求める意見も見られた。
考 察
(1)「一人TT」については事前課題でも学習していたが,研修当日の体験によって明確にイメージが形成されたことが示された。(2)「一人TT」の特徴についての理解が深まったことから,全面的な高評価を得るというよりも,どのように活かすかについて関心が集まる結果になった。
付 記
本研究は,JSPS科研費18K02895の助成を受けたものです。
本研究では,6時間の「一人TT」の教員研修プログラムを開発し,その効果を検討した。
方 法
参加者:A大学における教員免許状更新講習の受講生23名(男性12名,女性11名;平均年齢40.61歳)。校種(高11,中9,小1,特支1)。
講師:A大学B学部の教授1名。
教材:
(1)説明資料:Wordで作成した呈示用資料をPDF化したもの。メール添付で受講生に配布した。
(2)解説ビデオ:上記のPDF資料を使って研修内容を動画形式で録画し,ビデオ教材を作成した。Webページを介して受講生に配布した。
(3)配布資料:研修当日に印刷物として配布した。
研修内容:以下のような研修を行った。
・事前に説明資料ならびに解説ビデオを受講生に配布し,反転学習のための事前学習を行うように指示した。事前学習には,(1)一人TTとは何か,どんな特徴があるかの説明と解説(ビデオ),(2)一人TTのための自作教材の作り方の解説(ビデオ),が含まれていた。受講生は,研修当日,模擬授業を行うので,模擬授業で使う授業用一人TTビデオの作成のために,提示資料を作成して持参するように指示を与えた。
・研修当日は,配布資料をもとに,(1)各自が持参したPDF提示資料を使って一人TT用ビデオ教材を作成し,(2)作成している教材についてグループで話し合い,(3)作成したビデオ教材を使って相互に模擬授業をしたり,(4)模擬授業について相互に評価して改善点を話し合った。
手続き:研修2週間前に,教材(1)と教材(2)を受講者に配布した。教材(1)(2)の配布に電子メールならびにweb経由のファイルダウンロードを利用した。研修当日の最初と最後に,受講者に調査用紙を配布し回答を求めた。データは統計的に処理され個人情報は外部に公表されることはないこと,回答は任意であり回答を中止しても講習の評価には影響しないことを述べ,事前調査後に研修を行い,研修終了時に事後調査を実施した。
結 果
(1) 一人TT研修の関連用語知識についての自己評定を事前事後で比較した結果,「LMS」と「一人TT」に対する自己評価が大きく変化しており,統計的に有意に増加していた(共にp<0.01)。
(2)「最終的に満足のいく教材が作れたかどうか」ついて評価を求めた。評定値は平均2.6(SD 0.66) [2.27-2.85]で中程度評価だった。
(3)自作の教材等で改善が必要な点として「教材PDF」「説明方法」「声の出し方」について評価(0〜4)を求めた。 2.6[2.25-2.97],3.0[2.59-3.41], 2.8 [2.42-3.23]で中程度〜やや高めであった。
(4) 「今後一人TTを利用した教育実践を行っていこうと思うか」についての評定は,2.78 [2.39- 3.17]であった。
(5) 自由記述で今後の一人TTの利用と研修プログラムの感想を求めた。一人TTの利用に前向きな意見が多く見られた。研修内容の改善を求める意見も見られた。
考 察
(1)「一人TT」については事前課題でも学習していたが,研修当日の体験によって明確にイメージが形成されたことが示された。(2)「一人TT」の特徴についての理解が深まったことから,全面的な高評価を得るというよりも,どのように活かすかについて関心が集まる結果になった。
付 記
本研究は,JSPS科研費18K02895の助成を受けたものです。