日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA23] 高1への9週間の構造方略教示は説明文理解と学業達成を促すか?(2)

方略使用の変化がもたらす影響プロセス

山本博樹1, 織田涼2 (1.立命館大学, 2.東亜大学)

Keywords:高1、構造方略教示、学業達成

目  的
 「高1クライシス」の解消を図るために構造方略の教示に期待が寄せられている。本研究では9週間にわたる構造方略教示が説明文理解と学業達成に及ぼす効果を検証した。また方略教示が長期間に及ぶため学習適応性が介在すると考えて,その影響を検討した。山本・織田 (2019,日心発表) では教示群の中位・上位群で教示時期が進むにつれて構造方略の使用傾向が高まることを示しており,学習適応性によって異なる効果が期待される。
方  法
参加者:公立高1年の4クラス。151人(男58人,女93人)。2クラスが非教示群で,残り2クラスが教示群。6月段階での教研式「学習適応性検査」に基づいて,下位群,中位群,上位群を構成した。その結果,非教示群で上位群が20人,中位群28,下位群31人となった。教示群では同様に,下位群が29人,24人,19人,となった。
手続き:
事前・事後テスト:非教示群・教示群ともに6月下旬の事前テストと9月上旬の事後テストを実施。
構造方略の使用傾向:構造方略の使用を7段階で評定させた。
説明文理解度: 標識の有無が異なる2つの説明文を提示し,理解度を7段階で評定させた。
学業達成:5教科の理解度を7段階で評定させた。9週間の構造方略教示:教示群には9週の間,1週につき説明文構造の同定課題を1問解答させ,一週間の構造方略の使用状況を評価させた。介入はSHで実施 (非教示群は事後テスト後に実施)。
結果と考察
1) 構造方略教示が各測度にもたらす影響
事後テストの測定値から事前テストの測定値を減じた変化量を算出し,上・中・下群ごとに,教示 (2) ×下述する測度,について分散分析を行った。それらは,構造方略の使用傾向に関する変化量 (方略使用変化),標識有型と標識無型説明文の理解の変化量 (説明文理解変化),学業達成の変化量 (学業達成変化,5教科) の3つであった。
まず下位群では方略使用変化,説明文理解変化,学業達成変化で有意差はみられなかった。
次に中位群の方略使用変化,説明文理解変化で有意差はみられなかったが,学業成績は,教科の主効果,教示と教科の交互作用が有意に認められた (F(4,200)=4.51, p<.01; F(4,200)=2.72, p<.05)。交互作用について単純主効果を分析したところ,英語で教示の単純主効果が有意に認められた。また,教示群で教科の単純主効果が有意であり,多重比較より,英語<理科,国語<理科となった。
最後に上位群の方略使用変化は,教示の主効果,教示と方略使用変化の交互作用が有意に認められた (F(1,47)=5.08, p<.05; F(6,282)=2.81, p<.05)。単純主効果の分析から,「接続詞」と「題名」で教示の単純主効果が有意に認められた。また,教示群で方略使用変化の下位尺度の単純主効果が有意であり,多重比較より「接続詞」<「題名」,「全体像」<「題名」となった。また,説明文理解変化は非有意だったが,学業達成変化は教科の主効果が有意に認められ ( F(4,188)=9.57, p<.01),国語<英語=数学=理科=社会となった。
2) 9週間の構造方略教示がもたらす影響
学習適応性の上・中・下群において,構造方略教示が方略使用変化を介して標識無と有の説明文理解変化を促し,学業達成変化におよぼす影響をモデル化した (Figure 1)。モデルでは群間で構造方略教示からの直接効果を比較することに主眼を置くため,これらのパスには等値制約を設けず,その他のパスには等値制約を設けた。
 AMOS 22.0を使用してパス解析を実施し,母数の推定には最尤法を用いた。適合度指標は,χ2 =8.39, df=13, p=.82, GFI=.977, CFI=.999, RMSEA<.001であり,モデルは適合していると判断した。Figure1より 高1の1学期で構造方略の教示を行うことは有効であり,特に学習適応性の高い生徒においては教示前よりも構造方略の使用傾向を高めて説明文の理解を促し,その結果として学業達成が高まることが示された。
付  記
科研費 (基盤(C):23530877) を受けた。