日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA31] 科学技術の社会問題を取り上げた小学生向け教育プログラムの評価(1)

意見対立や複数論点を踏まえた意思決定能力

坂本美紀1, 山口悦司#2, 俣野源晃#3, 都倉さゆり#4, 久光克樹#5, 山本智一#6 (1.神戸大学, 2.神戸大学, 3.神戸大学附属小学校, 4.神戸大学, 5.神戸大学, 6.兵庫教育大学)

Keywords:科学技術の社会問題、意思決定、教育プログラム

問題・目的
 現在,科学技術の社会問題を導入した教育が,科学リテラシー育成の観点から注目されている。都倉ら(2018, JSSE研究会)は,科学技術の社会問題に対する解決策の考案を目指した小学生向けの教育プログラムを開発した。本研究では,意見対立や複数の論点を踏まえた意思決定能力の育成に着目し,プログラムの成果を評価する。
方  法
参加者:国立大学法人附属小学校5年生2クラス計63名(男子30名,女子33名)。
教育プログラム:遺伝子組換えによるスギ花粉米をテーマに,基礎的な科学知識を学習した後,賛否の意見を比較検討し,論点を抽出して,対立の解消・緩和に向けた解決策を考案した。
課題:スギ花粉米の開発をめぐる社会問題について,その問題に対する解決策を自由記述させた。授業の開始時と最終回に,集団で実施した。
分析:意見文の各セグメントが,賛否の意見に含まれる3つの論点(人体,経済,環境)のどれに言及しているものかを同定した上で,Table 1の定義に従い,意思決定のレベルを評定した。
結果・考察
 欠損のない61名分の回答を分析対象とした。
1.意思決定で考慮された論点
 作成された意見文における,主張支持意見と対立意見の各論点の記述率を算出した。参加者が記述した論点数の平均値を,テストごとにFigure 1に示す。主張支持意見での論点の記述数は,プレ−ポスト間で差はなかったが,対立意見での論点は,プレテストからポストテストにかけて,記述数が有意に増加した(t(48)=5.322, p<.001)。
2. 意見対立や複数論点を踏まえた意思決定
 各テストでの意思決定のレベル分布をTable 2に示す。授業の前後でレベルの有意な向上が認められ(T=6.542, p<.001),参加者の意見文が,持論補強型の記述から対立の解消・緩和を目指した提案型のものに変化したことが示された。ポストテストでは,ほとんどの参加者が提案を記述し,特に複数の論点を考慮した提案が多く生成されたことが明らかになった。
結  論
 参加者の意思決定が,当該テーマに対する意見対立や複数の論点を踏まえた解決策の提案へと変化し,教育プログラムの効果が示された。
付  記
 JSPS科研費(17H01979,18K18646)の助成ならびに所属の研究倫理審査委員会の承認を受けた。