日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA35] 人間を還元して観るということ

自然科学主義的人間観の測定尺度の作成過程

吉田光成1, 小田友理恵#2, 新川拓哉#3 (1.専修大学大学院, 2.法政大学大学院, 3.Ecole Normale Superieure)

Keywords:自然科学主義・還元主義、心の哲学、人間観・心理観

問題と目的
 物理現象を対象とする自然科学の成功と発展に伴い,近年では人間や心も自然科学的な方法論に基づいて研究されている。こうした研究手法は大きな成果を上げてきたが,同時に「人間や心はモノとして扱える」という考え方を促進しているのではないか。そして,こうした自然科学主義的な人間観・心理観は,私たちの社会のあり方に影響を与えているのではないか。こうした問いに取り組むための準備的研究として,本研究では自然科学主義的な人間観・心理観を定量的に計測するための指標の開発を行う。ここでは,その予備調査の結果と尺度作成過程を報告する。
方  法
調査手続き:都内1大学での集合調査。
分析対象:臨床心理学概論を履修する大学生80名(有効回答率88.9%),年齢はM=20.33(SD=1.31),男性29名,女性49名であった。
調査内容(本発表で使用した項目のみ):尺度案は,哲学理論に基づき,(1)要素主義,(2)決定論的機械論,(3)物理主義,(4)行動主義,(5)認知神経科学的人間観の5概念,31項目であった。尺度作成は,第二著者(心理学理論から)と第三著者(心の哲学から)が概念設定と項目案を策定,第一著者が社会調査法の観点から文章表現を修正した。さらに文章表現の妥当性を確認するため,心理学を専門とする大学生・大学院生・修了生と「Crowd Works」から参加した心理学の学術研究に高い関心を持つ成人の全29名に対し予備調査を行い,内容理解が困難だと回答された項目の文章表現を修正した。なお,測定時は「直感的に」答えることを教示した。
結  果
 測定項目の単一概念性の確認のため,理論的仮説に基づく各項目群を主成分分析で解いた。その結果,2概念で1成分が,残り3概念で2成分が抽出された。各項目の記述統計および成分負荷量,相関パターンから修正対象の項目を選定し,概念と文章表現の検討を行った。
考  察
 分析結果から,5つの哲学的構成概念が概ね定量的に測定できたものと解釈された。結果を元に著者らで概念と文章表現を再度協議し,全36項目の還元主義的人間観尺度を作成した(下表参照)。