日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA36] 中国大学生の進路選択に対する自己効力感と就業動機が進路未決定に及ぼす影響

馬場久志1, 劉文静#2 (1.埼玉大学, 2.埼玉大学大学院)

Keywords:進路選択に対する自己効力感、就業動機、進路未決定

問題と目的
 近年,中国では,卒業後すぐに就職しない大学生が少なくない。2017年の中国大学卒業生795万人に対して,卒業半年後の未就職者数は64.4万人,未就業率は8.1%に達し,社会的注目を集めている。この問題をもたらした要因は社会構造,経済問題などと多岐にわたるが,その中でも大学生の就職意識の問題が大きいと指摘されている(高 静,2014)。しかし,大学生の未就職に関する研究は大都市に集中し(趙 曉晨,2017),地域間格差の激しい中国の事情を説明するには限界がある。したがって,地方大学の学生について進路未決定の要因を検討することが必要である。大学生における進路意思決定に関する研究では,進路選択に対する自己効力感が大きく影響を与える実証研究が数多く蓄積されてきた(町田,2016)。しかし,これまでの研究では自己効力感が進路意思決定に与える直接的な影響に焦点があてられ(劉 毅,2017) ,自己効力感の間接,調整的影響の研究については,海外では散見されているが,中国では焦点があてられてこなかった。間接的な影響に関して,進路選択に対する自己効力感が職業に対する内発的な動機を反映した自己向上志向を介して職業未決定を抑制している(安達,2001)という知見がある。そこで,本研究は中国の地方大学生を対象として進路選択に対する自己効力感が職業に対する内発的な動機を媒介として職業未決定を抑制している影響を検討する。
方  法
参加者 中国の地方大学4年生303人(男性121人,女性176人,不明6人)。
調査時期 2018年5月
質問紙 ①就職先決定の有無1項目。②進路選択に対する自己効力感尺度 (CDSE-SF): Taylor&Betz(1996)を傅瑜弘が中国語に翻訳した25項目。③就業動機尺度(安達 , 2001):尺度は,自己向上志向21項目,対人志向10項目,上位志向10項目の3因子41項目から構成されている。
結  果
 就業動機,進路選択に対する自己効力感が進路意思決定にどのように影響しているかについて,パス解析を行った(Figure 1)。
 就業動機の自己向上志向因子が進路選択に対する自己効力感を媒介して進路意思決定へ肯定的な影響を及ぼす。就業動機の対人志向,上位志向因子が進路意思決定に有意な影響を及ぼしていない。
考  察
 内発的な自己向上志向動機と高い進路選択に対する自己効力感と繋がって,就職未決定を抑制することが示された。
主な引用文献
安達智子 (2001). 就業動機尺度の概念的妥当性―動機, 自己効力との関連性について― 実験社会心理学研究, 41, 45-51.