日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA40] 自尊感情を高める教師の指導について(1)

自尊感情の領域の観点から

青木多寿子1, 持田魁斗#2, 高山瑞己3 (1.岡山大学, 2.神戸市立向洋小学校, 3.岡山大学)

Keywords:領域特定的な自尊感情、教師の指導、小学生

目  的
 近年, 教育現場で自尊感情や自己肯定感を高めることが重視されている。そしてこれらを高める鍵は教師の働きかけであろう。自尊感情を高める教師の働きかけを考える際,2つの働きかけ方を想定できる。一つは学業や得意なこと等,児童の小さな良さを見つけて励ます方法,もう一つは,学級への適応を促し,クラスとの一体感を通して働きかける方法である。加えて,有効な教師の働きかけは,児童生徒の年齢や性別によっても異なると予測できる。
 他方で自尊感情は学業成績や容姿等,様々な下位領域で構成されることが知られている (中間 2016)。これらの領域と自尊感情の関係を検討すれば,教師はどの領域に注目することで児童の自尊感情を育むことができるのかを知ることができるかもしれない。そこで本稿では,小学生の自尊感情を構成する下位領域を明らかにし,自尊感情全体との関係を検討することで,教師の具体的な支援の方向性を探ることを目的とする。
方  法
 A県内の公立小学校に質問紙を配布し,回答を求めた。調査時期は2018年9月である。分析対象となった調査対象者は小学5, 6年生286名 (5年男子73名,5年女子76名,6年男子65名,6年女子72名)。質問紙は無記名で行なった。回答は「1.あてはまらない」~「4.かなりあてはまる」の4件法で行った。
質問紙の構成 自尊感情は山本・松井・山成 (1982) の自尊感情尺度から全10項目採用した。「領域特定的な自尊感情」については,まず,下位領域として6つの領域 (「学業」「社会」「運動」「容姿」「家族」「社交性」) を設定した。次に,先行研究 (高知県教育センター,2006) を参考に,各領域の質問項目を設定した。具体的には,6領域のそれぞれに,自尊感情の3つの構成概念(①包み込まれ感覚,②自己効力感,③自己受容感)を問う3項目ずつの質問を作成した。
結果と考察
領域を特定する因子分析 自尊感情の下位領域を明らかにするために, 領域特定的な自尊感情として設定した質問項目について, 最尤法・プロマックス回転による因子分析を行った。その結果,信頼性の高い5因子「学業 (α=.805)」「運動 (α=.819)」「容姿(α=757)」「家族 (α=780)」「社交性 (α=.804)」の5領域が抽出された。
領域と自尊感情の関係 自尊感情得点 (自尊感情尺度;α=.847) を従属変数, 5つの領域の得点を説明変数とし,重回帰分析を行なった。その結果,男女を込みにした分析では,全ての領域が同程度に自尊感情に関係していることが窺えた。そこで男女別に分析すると,男女ともに「学業」が高い値を示した。加えて男子は「運動」,女子は「学業」が他の領域より高いことがわかった。性差は「家族」に見られ,女子では関連が高く,男子では差が見られなかった。
 以上の結果から,児童の自尊感情は,男女ともに学業が大きな比重を占めることが示唆された。つまり,教師が基礎学力の充実に力を注ぐという,最も基本的な指導が,児童の自己肯定感や自尊感情を高めることが窺えた。加えて男子では自分の力を高める運動,女子では周囲との調和を図る家族,社交性が自尊感情と関わっていた。
引用文献
中間玲子(2016). 自尊感情の心理学 金子書房
山本真理子・松井豊・山成由紀子(1982). 認知された自己の諸側面 教育心理学研究,30,64-68.
高知県教育センター(2005).子どもの自尊感情を育む教育についての一考察,「確かな学力」と「豊
かな心」を育む新しい教育の創造,7-15.