[PA44] 小学生から高校生までの不登校傾向とレジリエンスとの関連
Keywords:レジリエンス、不登校傾向、
目 的
文部科学省(2018)の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると,2017年度の小中学生の不登校児童生徒数は144,031名となり,1997年以降,10万人以上が続いている。さらに,高校でも不登校生徒数は49,643名と減少の方向にない。不登校の支援の目標として,将来的な社会的自立に向けて支援することが掲げられている。社会で生きていくうえで困難な出来事に出会うことは避けられないことから,困難な出来事に出会っても回復する力を育てておくことが必要である。これはすべての子どもに必要な力であるともいえる。アメリカ心理学会(APA)は「レジリエンスとは,トラウマ,悲劇的な脅威,ストレスの重大な原因などの逆境(家族や重要な他者との関係性の問題,深刻な健康問題,職場や経済的なストレッサーなど)に直面したとき,それにうまく適応するプロセス」であるとしている。そこで本研究は,何らかのストレッサーのために不登校傾向にある子どもたちに,レジリエンスがどのように影響しているかを探索的に明らかにするために,小中高校生を対象とし,不登校傾向とレジリエンスとの関連を明らかにした。
方 法
調査対象 A県の小学4年生から高校3年生までを対象とし,回答に不備がなかった小学生1844名,中学生4146名,高校生1320名の計7310名の回答を用いた
調査内容 子ども用レジリエンス尺度(小林ら,2018)10因子30項目について5件法で回答を求めた。因子は「つながり」「援助行動」「ルーティン行動」「気持ちのコントロール」「セルフケア」「目標達成行動」「自己肯定」「客観的な捉え方」「自己理解」「変化への捉え方」であった。小中学生用不登校傾向尺度(五十嵐,2015)3因子を用いた。
調査時期および実施方法 時期は2018年9~10月で,学級単位で,授業時間を用いて集団で実施された。
結果および考察
不登校傾向の度数分布を確認したところ,「全般的」では中央値が小学生で2.0,中学生で2.2,高校生で2.4であった。
次に,レジリエンスを独立変数,不登校傾向を従属変数とし強制投入法による重回帰分析を行った結果,すべての因子で決定係数が有意となり3つの不登校傾向,かつすべての学校種において標準化係数が有意であったのは「客観的な捉え方」であった。レジリエンスの中でもとりわけ困難なことに対して様々な角度から考え冷静でいられることが,不登校傾向を弱める方向性が明らかとなった。高校生においては特に心理的な不調を予防できると考えられる。また「ルーティン行動」を取ることは「全般的な登校意欲の喪失」にはつながるものの,必ずしも「心理的な不調傾向」とは関連が見られず,単なる習慣化が心理的に安心をもたらすとは言えないことが示唆された。むしろ,「セルフケア」の方が「心理的」に安定をもたらすと考えられ,レジリエンスとは言っても,下位概念によって,不登校傾向との関連性が異なることや,学校種によっても関連性の強さが異なるため,発達的な視点やレジリエンスの要因についてさらに詳細に見ていく必要がある。(キーワード レジリエンス 不登校傾向)
文部科学省(2018)の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると,2017年度の小中学生の不登校児童生徒数は144,031名となり,1997年以降,10万人以上が続いている。さらに,高校でも不登校生徒数は49,643名と減少の方向にない。不登校の支援の目標として,将来的な社会的自立に向けて支援することが掲げられている。社会で生きていくうえで困難な出来事に出会うことは避けられないことから,困難な出来事に出会っても回復する力を育てておくことが必要である。これはすべての子どもに必要な力であるともいえる。アメリカ心理学会(APA)は「レジリエンスとは,トラウマ,悲劇的な脅威,ストレスの重大な原因などの逆境(家族や重要な他者との関係性の問題,深刻な健康問題,職場や経済的なストレッサーなど)に直面したとき,それにうまく適応するプロセス」であるとしている。そこで本研究は,何らかのストレッサーのために不登校傾向にある子どもたちに,レジリエンスがどのように影響しているかを探索的に明らかにするために,小中高校生を対象とし,不登校傾向とレジリエンスとの関連を明らかにした。
方 法
調査対象 A県の小学4年生から高校3年生までを対象とし,回答に不備がなかった小学生1844名,中学生4146名,高校生1320名の計7310名の回答を用いた
調査内容 子ども用レジリエンス尺度(小林ら,2018)10因子30項目について5件法で回答を求めた。因子は「つながり」「援助行動」「ルーティン行動」「気持ちのコントロール」「セルフケア」「目標達成行動」「自己肯定」「客観的な捉え方」「自己理解」「変化への捉え方」であった。小中学生用不登校傾向尺度(五十嵐,2015)3因子を用いた。
調査時期および実施方法 時期は2018年9~10月で,学級単位で,授業時間を用いて集団で実施された。
結果および考察
不登校傾向の度数分布を確認したところ,「全般的」では中央値が小学生で2.0,中学生で2.2,高校生で2.4であった。
次に,レジリエンスを独立変数,不登校傾向を従属変数とし強制投入法による重回帰分析を行った結果,すべての因子で決定係数が有意となり3つの不登校傾向,かつすべての学校種において標準化係数が有意であったのは「客観的な捉え方」であった。レジリエンスの中でもとりわけ困難なことに対して様々な角度から考え冷静でいられることが,不登校傾向を弱める方向性が明らかとなった。高校生においては特に心理的な不調を予防できると考えられる。また「ルーティン行動」を取ることは「全般的な登校意欲の喪失」にはつながるものの,必ずしも「心理的な不調傾向」とは関連が見られず,単なる習慣化が心理的に安心をもたらすとは言えないことが示唆された。むしろ,「セルフケア」の方が「心理的」に安定をもたらすと考えられ,レジリエンスとは言っても,下位概念によって,不登校傾向との関連性が異なることや,学校種によっても関連性の強さが異なるため,発達的な視点やレジリエンスの要因についてさらに詳細に見ていく必要がある。(キーワード レジリエンス 不登校傾向)