[PA50] ポストモダンにおける大学生の成長モデルと時間的展望獲得に関する探索的研究(5)
3つの成長モデルにおける大学生活充実度
Keywords:成長、不安、大学生活
問題と目的
本研究の目的は,「大きな物語」を喪失し,価値観が多様化したポストモダンを生きる現代大学生にとっての成長を把握することにある。筆者らは,女子大学心理学系学部生28名を対象に,彼女らが4年間の学生生活の中でどのように成長するのかを記録するため,半年~1年毎の一問一答インタビューを卒業まで繰り返した。この記録を分析した結果,変容パターン(成長モデル)として3つの群を抽出した(川上他,2014,2018;佐久田他,2014,2019)。第1に,とりあえず交友関係を中心に目前の日常を「楽しく」過ごすが,長期的な展望や自己の変容・成長の実感に乏しい「日常享楽」群,第2に,将来への不安が低く,大学を学びの場であると捉えて専門的な学びを楽しみに大学生活を送り,卒業時には自己の成長を実感し,大学生活全体を充実したものと捉える「日常学業充実」群,第3に,将来についての不安や焦りが高く,今現在の学業や自分についての満足や成長の実感に乏しい「不安切迫」群である。本研究では,これら3群における大学生活充実度の在学4年間の変化を縦断データに基づいて分析する。
方 法
調査対象者 心理学を専攻する女子大学生。在学4年間の縦断データにおいて,上記3群に分類された17名を調査の対象とした。
実施時期 調査対象者の1年春期および1年から4年の各秋期。
調査内容 上記調査各時期に大学生活充実度尺度(SoULS-12;佐久田他,投稿中)を実施した。
結果と考察
各時期のSoULS-12下位尺度(交友満足,学業満足,不安のなさ,大学へのコミットメント)の平均値を群ごとに算出した。各時期における群差に関する一元配置分散分析を,SoULS-12の下位尺度ごとに実施したところ,学業満足(Figure 1)については,2年秋期(F(2, 11) = 4.11, p < .05)に群間の差(不安切迫<日常学業充実,p < .05)が認められた。不安のなさについては,1年春期(F(2, 14) = 3.17, p < .10)に群間の差(不安切迫<日常学業充実,p < .10)の傾向が認められた。大学へのコミットメント(Figure 2)については,1年秋期(F(2, 12) = 6.38, p < .05;日常享楽<日常学業充実,p < .05),2年秋期(F(2, 11) = 6.22, p < .05;日常享楽<日常学業充実,p < .05,不安切迫<日常学業充実,p < .10)に群間の差が認められた。交友満足については,群間に差は認められなかった。
以上より,日常学業充実群は在学中一貫して学業満足や大学へのコミットメントが高く,充実した大学生活を過ごせていると推察される。不安切迫群は,2年秋期に学業満足や大学へのコミットメントも低くなり,大学生活充実度が低い状態に陥りやすくなることが示された。日常享楽群は,大学へのコミットメントは日常学業充実群ほど高まらないものの,不安切迫群のような不安に対する敏感さを持たないために,学内の「終わりなき日常」を,ほどほどの充実感を持ちつつ享受していると考えられる。本研究の結果は,インタビューデータに基づく現代大学生の成長モデル・変容パターン(佐久田他,2019)を大学生活充実度の観点から裏打ちし,改めて支持するものである。
本研究の目的は,「大きな物語」を喪失し,価値観が多様化したポストモダンを生きる現代大学生にとっての成長を把握することにある。筆者らは,女子大学心理学系学部生28名を対象に,彼女らが4年間の学生生活の中でどのように成長するのかを記録するため,半年~1年毎の一問一答インタビューを卒業まで繰り返した。この記録を分析した結果,変容パターン(成長モデル)として3つの群を抽出した(川上他,2014,2018;佐久田他,2014,2019)。第1に,とりあえず交友関係を中心に目前の日常を「楽しく」過ごすが,長期的な展望や自己の変容・成長の実感に乏しい「日常享楽」群,第2に,将来への不安が低く,大学を学びの場であると捉えて専門的な学びを楽しみに大学生活を送り,卒業時には自己の成長を実感し,大学生活全体を充実したものと捉える「日常学業充実」群,第3に,将来についての不安や焦りが高く,今現在の学業や自分についての満足や成長の実感に乏しい「不安切迫」群である。本研究では,これら3群における大学生活充実度の在学4年間の変化を縦断データに基づいて分析する。
方 法
調査対象者 心理学を専攻する女子大学生。在学4年間の縦断データにおいて,上記3群に分類された17名を調査の対象とした。
実施時期 調査対象者の1年春期および1年から4年の各秋期。
調査内容 上記調査各時期に大学生活充実度尺度(SoULS-12;佐久田他,投稿中)を実施した。
結果と考察
各時期のSoULS-12下位尺度(交友満足,学業満足,不安のなさ,大学へのコミットメント)の平均値を群ごとに算出した。各時期における群差に関する一元配置分散分析を,SoULS-12の下位尺度ごとに実施したところ,学業満足(Figure 1)については,2年秋期(F(2, 11) = 4.11, p < .05)に群間の差(不安切迫<日常学業充実,p < .05)が認められた。不安のなさについては,1年春期(F(2, 14) = 3.17, p < .10)に群間の差(不安切迫<日常学業充実,p < .10)の傾向が認められた。大学へのコミットメント(Figure 2)については,1年秋期(F(2, 12) = 6.38, p < .05;日常享楽<日常学業充実,p < .05),2年秋期(F(2, 11) = 6.22, p < .05;日常享楽<日常学業充実,p < .05,不安切迫<日常学業充実,p < .10)に群間の差が認められた。交友満足については,群間に差は認められなかった。
以上より,日常学業充実群は在学中一貫して学業満足や大学へのコミットメントが高く,充実した大学生活を過ごせていると推察される。不安切迫群は,2年秋期に学業満足や大学へのコミットメントも低くなり,大学生活充実度が低い状態に陥りやすくなることが示された。日常享楽群は,大学へのコミットメントは日常学業充実群ほど高まらないものの,不安切迫群のような不安に対する敏感さを持たないために,学内の「終わりなき日常」を,ほどほどの充実感を持ちつつ享受していると考えられる。本研究の結果は,インタビューデータに基づく現代大学生の成長モデル・変容パターン(佐久田他,2019)を大学生活充実度の観点から裏打ちし,改めて支持するものである。