[PA55] アクティブラーニングを用いた暴力防止プログラムの効果
高校生を対象として
Keywords:一次予防、暴力観、IPV
目 的
近年,ハラスメントやデートDV,DVなどの暴力が問題になっており,早期の一次予防教育が必要とされている。本研究では高校生を対象として暴力防止プログラムを実施し,その効果を検証した。
方 法
手続き 2018年5月,9月,2019年2月の3回にわたり,1回100分のプログラムを高校の授業内で実施した。5月のプログラム前と2月のプログラム後には効果検証アンケートを行った。
参加者 プログラム群は公立A高校2年生21名であり,全員3回とも受講した。プログラムを受講しない同高校2年生25名は対照群として効果検証アンケートのみに参加した。なお,プログラム群1名の社会的望ましさ得点(北村・鈴木, 1986)が18点以上だったため,分析から除外した。
プログラム内容 第1回目はハラスメントや暴力の定義について,第2回目は二次被害・ジェンダーステレオタイプについてとアサーショントレーニング,第3回目は暴力の現状・原因・連鎖についてと暴力防止プログラム作成であった。いずれの回もアクティブラーニングを取り入れ,個人でのワークシート作成・心理尺度やクイズへの回答,4-5名グループでの意見交換・ロールプレイ・グループシートの作成・発表などを行った。
効果検証アンケート内容 参加者はこのアンケートのみで用いるコードネームを作成し回答した。
暴力観 「けがをしない強さで叩く」(身体的暴力),「いやがっているのに身体的接触を求める」(性的暴 力),「相手を否定したり,意見を認めなかったりする」(精神的暴力:軽侮),「別れるなら自分は何をしでかすかわからないと言う」(精神的暴力:脅迫),「交友関係や行動を見張るため相手のスマートフォンや携帯電話をチェックする」(精神的暴力:束縛)の5項目について,「完全に暴力にあたる」~「全く暴力にあたらない」の7件法で回答を求めた。
性差観 性差観スケール(伊藤, 1997)の因子負荷量上位10項目に,4件法で回答を求めた。
共感性 共感性プロセス尺度(葉山・植村・萩原, 2008)の他者感情への敏感性因子と視点取得因子各5項目に,5件法で回答を求めた。
アサーション 青年用アサーション尺度(玉瀬・越智・才能・石川, 2001)の関係形成因子と説得交渉因子各8項目に,5件法で回答を求めた。
倫理的配慮 本研究は福山大学学術研究倫理委員会の承認を得て実施した。また,対象群には効果検証アンケート終了後にプログラム内容をリーフレットにしたものを配布し,説明を行った。
結 果
2(事前・事後)×2(プログラム群・対照群)の分散分析を行ったところ,Table 1に示す結果となった。
考 察
暴力観全体,性的暴力,精神的暴力の脅迫と束縛においてプログラムの効果があり,プログラム受講後はそれらにあたる行為を暴力と認識しやすくなっていた。しかし,性差観,共感性,アサーションではプログラム群と対象群で差がなく,プログラムの効果は見られなかった。これらの変容のためには,プログラム内容の再検討と,より長期にわたる定期的なプログラムの実施が必要だと考えられる。さらに,今後はフォローアップ調査を行い,プログラムの長期的効果を追跡する必要がある。
付 記
本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得た。
近年,ハラスメントやデートDV,DVなどの暴力が問題になっており,早期の一次予防教育が必要とされている。本研究では高校生を対象として暴力防止プログラムを実施し,その効果を検証した。
方 法
手続き 2018年5月,9月,2019年2月の3回にわたり,1回100分のプログラムを高校の授業内で実施した。5月のプログラム前と2月のプログラム後には効果検証アンケートを行った。
参加者 プログラム群は公立A高校2年生21名であり,全員3回とも受講した。プログラムを受講しない同高校2年生25名は対照群として効果検証アンケートのみに参加した。なお,プログラム群1名の社会的望ましさ得点(北村・鈴木, 1986)が18点以上だったため,分析から除外した。
プログラム内容 第1回目はハラスメントや暴力の定義について,第2回目は二次被害・ジェンダーステレオタイプについてとアサーショントレーニング,第3回目は暴力の現状・原因・連鎖についてと暴力防止プログラム作成であった。いずれの回もアクティブラーニングを取り入れ,個人でのワークシート作成・心理尺度やクイズへの回答,4-5名グループでの意見交換・ロールプレイ・グループシートの作成・発表などを行った。
効果検証アンケート内容 参加者はこのアンケートのみで用いるコードネームを作成し回答した。
暴力観 「けがをしない強さで叩く」(身体的暴力),「いやがっているのに身体的接触を求める」(性的暴 力),「相手を否定したり,意見を認めなかったりする」(精神的暴力:軽侮),「別れるなら自分は何をしでかすかわからないと言う」(精神的暴力:脅迫),「交友関係や行動を見張るため相手のスマートフォンや携帯電話をチェックする」(精神的暴力:束縛)の5項目について,「完全に暴力にあたる」~「全く暴力にあたらない」の7件法で回答を求めた。
性差観 性差観スケール(伊藤, 1997)の因子負荷量上位10項目に,4件法で回答を求めた。
共感性 共感性プロセス尺度(葉山・植村・萩原, 2008)の他者感情への敏感性因子と視点取得因子各5項目に,5件法で回答を求めた。
アサーション 青年用アサーション尺度(玉瀬・越智・才能・石川, 2001)の関係形成因子と説得交渉因子各8項目に,5件法で回答を求めた。
倫理的配慮 本研究は福山大学学術研究倫理委員会の承認を得て実施した。また,対象群には効果検証アンケート終了後にプログラム内容をリーフレットにしたものを配布し,説明を行った。
結 果
2(事前・事後)×2(プログラム群・対照群)の分散分析を行ったところ,Table 1に示す結果となった。
考 察
暴力観全体,性的暴力,精神的暴力の脅迫と束縛においてプログラムの効果があり,プログラム受講後はそれらにあたる行為を暴力と認識しやすくなっていた。しかし,性差観,共感性,アサーションではプログラム群と対象群で差がなく,プログラムの効果は見られなかった。これらの変容のためには,プログラム内容の再検討と,より長期にわたる定期的なプログラムの実施が必要だと考えられる。さらに,今後はフォローアップ調査を行い,プログラムの長期的効果を追跡する必要がある。
付 記
本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得た。