[PA58] キャンパス拡充による学部一貫教育の効果について
キャンパス移動学部在籍学生の授業への取り組みの変化を中心として
Keywords:キャンパス移動、授業への取り組み、出欠席調査
問題と目的
東京都内・私立4年制A大学は,平成27年4月より全学部同一キャンパスによる一貫教育が始動した。以前は,定員数の少ない3学部については都内郊外で既に学部一貫教育を実践していたが,多い2学部については2年間を他学部と共に学び,残りの2年間を都心に移動し専門科目を中心に学ぶ形態であった。一方は4年間一貫教育,他方はキャンパス移動と一大学でありながらも学び方の違いが大きな課題であった。その解決策として十分な時間を費やし検討した結果,前述の施策となった訳だが,このキャンパス拡充・学部再編成が与える教育的効果の一端について,授業への取り組みの変化を中心として検証することを試みる。
方 法
A大学では,30年以上にわたり,必修語学に対する出欠席状況の把握に努めてきた。その結果に基づき面接や各種学生支援策を展開してきてもいる。本稿では学部一貫教育が始まった平成27年の前後4年間を抽出し,検討することとした。
調査対象者 全学部必修語学履修者の内,前述2学部の1・2年生(3000名程度)
調査方法 前期・後期共,必修語学担当教員(250名程度)に,欠席回数が授業回数の1/2以上の学生を抽出してもらうよう受講者名簿を付して依頼・回答を得るという方法。
結 果
移転前4年間(平成23~26年度)の抽出率の平均値は,前期調査では1年生8.9%,2年生18.9%,後期調査では1年生16.9%,2年生27.0%であったが,移転後4年間(平成27~30年度)のそれは,前期調査1年生3.7%(-5.2%),2年生11.9%(-7.0%),後期調査1年生7.0%(-9.9%),2年生12.3%(-14.7%)となった。平成26年度と平成27年度の比較では,前期調査1年生7.3%→3.9%,2年生22.2%→17.2%。後期調査1年生13.7%→1.9%。2年生28.4%→2.7%と激減した。
この出席率改善の要因として,都心型キャンパスは最寄り駅に近く,自宅通学者が増加傾向にあることも一因と推察する。
考 察
調査結果から,A大学では初期教育に力を入れていることもあり,多年にわたり初年次ゼミや必修語学への出席の徹底を期した学生の授業への取り組みに対する指導,各種調査及び面接,さらには学業不振学生の早期発見・早期対応に努めてきているが,他方,中途退学者については高止まりの状況である。交通アクセスや施設が変化することによる教育効果は顕著であることが調査から明確化されたが,移動年度の劇的変化とその後の微増ながらも欠席状況の増加傾向から,今後の推移を注視することと同時に,相乗効果が生じるように更なる施策の構築が必要である。
A大学全体を概観すれば,全学部一貫教育の実行は以前の課題を解消したことになるが,他方,方や都心,方や郊外という新たな物理的なストレスが生じたことも否定できない。教育効果,中途退学者数,学生の満足度等,様々な要因が単独で帰属しているのではなく,スペクトラムとして取り扱われることが重要であることは言うに及ばないが,容易いことではないことがわかる。この点について今後の研究に繋げたいと考える。
なお,キャンパス移転の効果に関わる研究の多くが入学試験制度改革や新入生獲得との関係において論ぜられているものであり,教育効果の視点による検証は,広汎性や多様性に基づく調査項目を設けることにより,新たな研究成果として示せるものと思慮する。
東京都内・私立4年制A大学は,平成27年4月より全学部同一キャンパスによる一貫教育が始動した。以前は,定員数の少ない3学部については都内郊外で既に学部一貫教育を実践していたが,多い2学部については2年間を他学部と共に学び,残りの2年間を都心に移動し専門科目を中心に学ぶ形態であった。一方は4年間一貫教育,他方はキャンパス移動と一大学でありながらも学び方の違いが大きな課題であった。その解決策として十分な時間を費やし検討した結果,前述の施策となった訳だが,このキャンパス拡充・学部再編成が与える教育的効果の一端について,授業への取り組みの変化を中心として検証することを試みる。
方 法
A大学では,30年以上にわたり,必修語学に対する出欠席状況の把握に努めてきた。その結果に基づき面接や各種学生支援策を展開してきてもいる。本稿では学部一貫教育が始まった平成27年の前後4年間を抽出し,検討することとした。
調査対象者 全学部必修語学履修者の内,前述2学部の1・2年生(3000名程度)
調査方法 前期・後期共,必修語学担当教員(250名程度)に,欠席回数が授業回数の1/2以上の学生を抽出してもらうよう受講者名簿を付して依頼・回答を得るという方法。
結 果
移転前4年間(平成23~26年度)の抽出率の平均値は,前期調査では1年生8.9%,2年生18.9%,後期調査では1年生16.9%,2年生27.0%であったが,移転後4年間(平成27~30年度)のそれは,前期調査1年生3.7%(-5.2%),2年生11.9%(-7.0%),後期調査1年生7.0%(-9.9%),2年生12.3%(-14.7%)となった。平成26年度と平成27年度の比較では,前期調査1年生7.3%→3.9%,2年生22.2%→17.2%。後期調査1年生13.7%→1.9%。2年生28.4%→2.7%と激減した。
この出席率改善の要因として,都心型キャンパスは最寄り駅に近く,自宅通学者が増加傾向にあることも一因と推察する。
考 察
調査結果から,A大学では初期教育に力を入れていることもあり,多年にわたり初年次ゼミや必修語学への出席の徹底を期した学生の授業への取り組みに対する指導,各種調査及び面接,さらには学業不振学生の早期発見・早期対応に努めてきているが,他方,中途退学者については高止まりの状況である。交通アクセスや施設が変化することによる教育効果は顕著であることが調査から明確化されたが,移動年度の劇的変化とその後の微増ながらも欠席状況の増加傾向から,今後の推移を注視することと同時に,相乗効果が生じるように更なる施策の構築が必要である。
A大学全体を概観すれば,全学部一貫教育の実行は以前の課題を解消したことになるが,他方,方や都心,方や郊外という新たな物理的なストレスが生じたことも否定できない。教育効果,中途退学者数,学生の満足度等,様々な要因が単独で帰属しているのではなく,スペクトラムとして取り扱われることが重要であることは言うに及ばないが,容易いことではないことがわかる。この点について今後の研究に繋げたいと考える。
なお,キャンパス移転の効果に関わる研究の多くが入学試験制度改革や新入生獲得との関係において論ぜられているものであり,教育効果の視点による検証は,広汎性や多様性に基づく調査項目を設けることにより,新たな研究成果として示せるものと思慮する。