[PB39] 児童期から青年中期にわたる居場所の発達的様相
Keywords:心理的居場所、自尊心、親和動機
問題と目的
居場所に関する従来の研究のほとんどは,個人にとっての居場所の有無が,現時点もしくは限られた一定の期間について検討されてきた。しかし,発達心理学では,個人の対人関係が家族から友人,さらに一般的な社会的関係へと発達し,それに伴って人格形成もなされることが明らかにされていることから,対人関係と密接な関係にある心理的居場所についても,発達的変遷があると考えられる。そのため,本研究では,居場所の変遷が特に生起しやすいと考えられる児童期から青年中期における居場所の心理的構造を検討することを目的とする。
方 法
調査対象者:中学生57名(男18名,女39名)
高校生111名(男62名,女49名)
いずれも,中国地方のA県内の生徒と関西地方のB県内の生徒で,その人数はほぼ2:1の割合であり,対象の地域差相殺が狙いである。
調査内容:過去(現在中学生であれば小学生時,現在高校生であれば中学生時),およびそれぞれ現在における自身の居場所の有無とその種類に関する質問紙(筆者ら作成)①に加え,自身の居場所に関して居場所感の強さを測定するために安定感・疎外感・被受容感・没入感・有用感の5因子からなる居場所感尺度(岸・諸井,2011)②,自尊心を測定するための自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982)③,また他者との関係性をどの程度深く築きたいかを測定するための親和動機尺度(杉浦,2000)③が用いられた。
結 果
(1)居場所の種類の発達(下図)
小学生時の居場所は家族と友だちが拮抗して多いが,中学生・高校性では家族が減少し,友達が維持され, さらに高校生では単なる友だちでなく,部活・クラブやその他の学校活動の仲間の場合も増えてくる。
(2)居場所と自尊心・親和動機との関係(下表)
自尊心と居場所の5因子との関連は,小学校時においては,有意な相関が1つであるが,中学生さらに高校性になると有意な相関が増加する。親和動機と居場所の関連は,小学生時にすでに有意な相関が3つあり,中学生から高校生になると有意な相関は4つないし5つ(全因子)になっている。
(3)居場所の継続性と居場所因子の関連
小学校時代から中学時代,また中学時代から高校時代へとそれぞれ自分の居場所が継続している生徒は,それが中断している生徒と比較すると,前者では,ポジティヴな4因子(安定感,被受容感,没入感,有用感)が発達的に強まり,逆にネガティヴな因子(疎外感)は弱まる傾向が認められた。
考 察
小学生時から高校生時における居場所は,単に物理的な場所ではなく,自我や社会性(対人関係)などの発達と相互関連して複雑な発達的様相を呈する,と言えよう。
引用文献
石本雄馬(2010)青年期の居場所感が心理的適応,学校的適応に与える影響。 発達心理学研究 21(3),278ー286
小畑豊美・伊藤義美(2001)青年期の心の居場所の研究―自由記述に表れた心の居場所の分類―。 情報文化研究 14,59-73
居場所に関する従来の研究のほとんどは,個人にとっての居場所の有無が,現時点もしくは限られた一定の期間について検討されてきた。しかし,発達心理学では,個人の対人関係が家族から友人,さらに一般的な社会的関係へと発達し,それに伴って人格形成もなされることが明らかにされていることから,対人関係と密接な関係にある心理的居場所についても,発達的変遷があると考えられる。そのため,本研究では,居場所の変遷が特に生起しやすいと考えられる児童期から青年中期における居場所の心理的構造を検討することを目的とする。
方 法
調査対象者:中学生57名(男18名,女39名)
高校生111名(男62名,女49名)
いずれも,中国地方のA県内の生徒と関西地方のB県内の生徒で,その人数はほぼ2:1の割合であり,対象の地域差相殺が狙いである。
調査内容:過去(現在中学生であれば小学生時,現在高校生であれば中学生時),およびそれぞれ現在における自身の居場所の有無とその種類に関する質問紙(筆者ら作成)①に加え,自身の居場所に関して居場所感の強さを測定するために安定感・疎外感・被受容感・没入感・有用感の5因子からなる居場所感尺度(岸・諸井,2011)②,自尊心を測定するための自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982)③,また他者との関係性をどの程度深く築きたいかを測定するための親和動機尺度(杉浦,2000)③が用いられた。
結 果
(1)居場所の種類の発達(下図)
小学生時の居場所は家族と友だちが拮抗して多いが,中学生・高校性では家族が減少し,友達が維持され, さらに高校生では単なる友だちでなく,部活・クラブやその他の学校活動の仲間の場合も増えてくる。
(2)居場所と自尊心・親和動機との関係(下表)
自尊心と居場所の5因子との関連は,小学校時においては,有意な相関が1つであるが,中学生さらに高校性になると有意な相関が増加する。親和動機と居場所の関連は,小学生時にすでに有意な相関が3つあり,中学生から高校生になると有意な相関は4つないし5つ(全因子)になっている。
(3)居場所の継続性と居場所因子の関連
小学校時代から中学時代,また中学時代から高校時代へとそれぞれ自分の居場所が継続している生徒は,それが中断している生徒と比較すると,前者では,ポジティヴな4因子(安定感,被受容感,没入感,有用感)が発達的に強まり,逆にネガティヴな因子(疎外感)は弱まる傾向が認められた。
考 察
小学生時から高校生時における居場所は,単に物理的な場所ではなく,自我や社会性(対人関係)などの発達と相互関連して複雑な発達的様相を呈する,と言えよう。
引用文献
石本雄馬(2010)青年期の居場所感が心理的適応,学校的適応に与える影響。 発達心理学研究 21(3),278ー286
小畑豊美・伊藤義美(2001)青年期の心の居場所の研究―自由記述に表れた心の居場所の分類―。 情報文化研究 14,59-73