日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

Sat. Sep 14, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB40] 教員養成学部生における教職志望変化のパターンと自他への信頼の関連

若松養亮 (滋賀大学)

Keywords:教員養成、大学生、教職志望

問題と目的
 教育学部に入学しても,教職を選択するとは限らなく,また志望意識も変動する。筆者はこれまで教職志望意識の個人差と,学生が自身の力量,教師という職業,そこで関わる他者への信頼との関連を検討してきた(発心2017,教心2017)。本報告では4年間の縦断調査データから,その変動のパターンと上記の信頼との関連を検討した。
方  法
調査の概要
 国立大学教員養成学部の2014年度入学生に対して,1~3年次は秋に,4年次は2月に質問紙を実施し,その場で回収した。有効回答は各年次214,202,200,221名で,4時点通して教職志望度を回答したのは117名(うち女性は60名)であった。調査は無記名で行い,属性で突合した。
調査の内容
 教職(保育士含む)の志望度は回答時点,および転機となる時点(教育実習の前・後など)を想起させ,「4.ぜひ目指そうと思う」~「1.目指そうと思わない」の4件法で評定させた。
 自他への信頼は,最も希望する(または最も身近な)校種を1つ想定させ,提示した各項目に「5.そう思う」~「1.そう思わない」の5件法で評定させた。本報告では,4年間通して評定させた「教職への不信」,「能力への信頼」,「同僚への信頼」,「生徒への信頼」,の4指標を取り上げる。
結  果
教職志望変動のパターン
 教職志望意識の評定を,入学時,2年次秋,3年次6月(実習前),3年次11月(実習後),4年次4月(採用試験出願前)の5時点についてクラスタ分析(Ward法)にかけ,6クラスタ解を得た。Figure 1に示すように,一貫高志望群(36名),中途に低下群(25名),一貫非志望群(14名),すぐに非志望群(12名),転向志望群(8名),志望度弱化群(22名)と命名した。
自他への信頼の得点化と比較
 自他への信頼の4つの下位尺度について,用意した項目を主成分分析にかけ,得点を得た。いずれも1成分にまとまった。ただし「生徒への信頼」のみ2年次の測定値がない。
 次にこの得点を6クラスタ×4時点で比較を行い,対応あり1要因(想起した時点)を含む2元配置の分散分析を行った結果を以下に述べる。
 まず「教職への不信」では,時点の主効果が有意ではなく,群の主効果が有意(F(5, 108)=8.59, p<.001)であった。一貫非志望群とすぐに非志望群が全時点を通じて高かった。「能力への信頼」においても時点の主効果は有意ではなく,群の主効果が有意(F(5, 108)=3.78, p<.01)であった。一貫高志望群と転向志望群が上昇基調であるのに対して,一貫非志望群は低く,志望度弱化群は2年次から3年次にかけて低下していた(Figure 2)。
 「同僚への信頼」については時点の主効果が有意でなく,群の主効果は有意傾向(F(5, 108)=2.24, p<.10)であった。志望度が最終的に高い2群においても,成分得点の平均値は0付近の値であった。最後に「生徒への信頼」は,時点の主効果が有意でなく,群の主効果は有意(F(5, 108)=2.32, p<.05)であった。単純主効果の検定では1年次のみ有意で,非志望の2群が低い値であったが,3年次・4年次と向上し,有意差ではなくなっていた。
考  察
 4つの指標のなかでは自身の能力に信頼がもてることが重要と推測される。信頼がもてない場合でも教職を志望する要因や,他の信頼との補完関係についても検討することが課題となる。
付記 本研究は科学研究費補助金(課題番号 26380880)の支援を受けています。