日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

Sat. Sep 14, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB52] 「精神的充足・社会的適応力」評価尺度の縦断的活用に関する検討(2)

測定結果に対する生徒自身の振り返りに基づいた検討

綿井雅康1, 加藤陽子2 (1.十文字学園女子大学, 2.十文字学園女子大学)

Keywords:KJQマトリックス、振り返り

 「精神的充足・社会的適応力」評価尺度(菅野・綿井,2002)は,生徒理解用の心理検査(KJQマトリックス)として学校教育で活用されている。本検査は,結果シートを児童生徒にも返却しており,自身による自己理解の促進を目指している。この趣旨は現行の学習指導要領における「振り返り学習を工夫して行うこと」と一致するものである。児童生徒が自らの学び・活動・姿を振り返って次の問題発見・解決につなげていくことは,教科学習のみならず自己成長をはかり,主体的な学びを実現する上で重要な役割を果たすと考えられる。
 児童生徒が本評価尺度の結果シートから自己を振り返り,自己理解と課題の解決に取り組むには反復実施が必要となる。そこで本研究は,同一学年集団に評価尺度を反復実施した縦断的な取り組みを対象として,結果シートの返却に基づく振り返りが「精神的充足・社会適応力」の様子とどのように関連するのかについて検討する。
方  法
調査対象 首都圏にある公立中学校の同一学年の生徒145名(男子63名,女子82名)。以下に述べる尺度・調査に全て回答した生徒を対象とした。
調査時期 調査は3回実施した。1回目は2017年7・9月(2年生),2回目は2017年12月(2年生),3回目は2018年11月(3年生)。
調査内容と実施方法 ①「精神的充足・社会的適応力」評価尺度(菅野ら,2002;計57項目,4件法)と②評価尺度への回答および測定結果に対する生徒の振り返りに関する調査(以下,調査。計12項目,5件法)。①の尺度に回答した数週間後に,結果シートが,HR等で学級内で担任教員からワークブックとともに返却された。生徒自身が結果を確認した後に②を実施した。
結果と考察
(1)振り返り調査の分析 調査項目の構造を確認するために,12項目に対する計3回の回答結果について因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。共通性の低かった1項目を除いた11項目に対して3因子が抽出された。第1因子は「向上意欲(4項目)」で,負荷量が大きかった項目は「『心のエネルギー』を高めようと思った」「結果シートを読んで,自分の課題を発見することができた」であった。第2因子は「振返確認(5項目)」で,「自分の結果について家族に話した」「家に帰ってから結果シートを読み返した」であった。第3因子は「特性理解(2項目)」で,「『社会生活の技術』とは何かがよくわかった(わかっている)」であった。
(2)振り返り調査への回答に基づく生徒の分類
 「向上意欲」・「振返確認」と評価尺度結果との関連を検討するため,調査回答に基づいて生徒の分類を行った。各実施回での調査への回答を因子ごとに得点に換算して集計した結果がTable 1である(全くあてはまらない:0点~とてもよくあてはまる:4点)。さらに生徒ごとに3回分の得点の合計点を算出し,全生徒の平均・SDを基準として,向上意欲・振返確認の2因子別に,高中低の3群に分類した。
(3)評価尺度と調査との関連
 精神的充足/社会適応力の各合計得点について,向上意欲/振返確認の各3群と実施回ごとに集計した(Table 2)。各合計得点の実施回・群間での差異を2要因分散分析(対応あり:回数,なし:群)により検討した。その結果,いずれの場合も,回数と群の主効果が有意となり,1回目>3回目,低群<高群という差異が示された。先行研究(猪熊ら,2012)と同様に回数を重ねるごとに得点が低下したものの,結果に基づいた課題解決や振り返りへの意欲が高い生徒ほど得点が高く保たれていることが明らかになったといえる。
(WATAI Masayasu, KATO Akiko)