[PB54] 協同作業認識とソーシャルサポートとの関連
Keywords:協同作業認識、ソーシャルサポート、協同学習
問題と目的
近年,協同学習による授業改善が注目されている。協同学習は様々な効果を生み出すことが認められているが,それらの効果は,メンバー間の相互交流の質を高め,メンバー一人ひとりがグループの学習活動に積極的に貢献するという協同作業場面を創り出すことが前提となる(関田・安永,2005)。さらに,協同作業についての認識を高めることで,協同学習に期待される効果を得ることができると考えられている。
そのような協同作業認識に影響を及ぼす要因の一つとして考えられるのが,ソーシャルサポートである。実際の互恵的な協同学習場面では,学習者は様々な他者からのサポートを知覚していることが考えられる。しかし,児童の協同作業認識とソーシャルサポートの関連について検討した研究は希少である。そこで本研究では児童の協同作業に対する認識とソーシャルサポートの関連について検討する。
方 法
調査対象者 小学校5年生61名(男子35名,女子26名)
調査内容 ①協同作業への認識 協同作業認識尺度(長濱・安永・関田・甲原,2009)を用いた。協同作業認識尺度は,「協同効用」,「個人志向」,「互恵懸念」という3下位尺度25項目で構成されている尺度であるが,本調査では,協同効用から8項目,個人志向から5項目を選定し,小学生用に改変して使用した。
②ソーシャルサポート 大学生用ソーシャルサポート尺度(片受・大貫,2014)を用いた。ソーシャルサポート尺度は,「評価的サポート」,「情報・道具的サポート」,「情緒・所属的サポート」という3下位尺度23項目で構成されていた。本調査では,小学生用に改変して使用した。
結 果
協同作業認識尺度13項目について,確証的因子分析を行った。その結果,すべての項目に対して該当する因子から有意なパスを示した。適合度もGFI=.805,AGFI=.722,CFI=.818,RMSEA=.096であり,許容できる程度の適合度が得られた。また,ソーシャルサポート尺度21項目についても同様に,確証的因子分析を行った。その結果,すべての項目に対して該当する因子から有意なパスを示した。適合度もGFI=.700,AGFI=.627,CFI=.837,RMSEA=.093であり,許容できる程度の適合度が得られた。
次に協同作業認識の2側面に対して,ソーシャルサポートの3下位尺度得点を説明変数とする重回帰分析を行った。その結果,2つの側面の説明率が有意となり,道具・情報的サポートから協同効用に対して,情緒・所属的サポートから協同効用に対して正の関連が示された。また,情緒・所属的サポートから個人志向に対して負の関連が示された(Table1)。
考 察
情報・道具的サポート,情緒・所属的サポートはともに,協同効用に影響していた。協同的な時間を一緒に過ごし,学習仲間から信頼や共感を得るとともに,実際にアドバイスや指示をもらって問題解決の助けとなる情報をやりとりするなかで,協同効用が感じられることが示唆された。
一方,情緒・所属的サポートは,個人志向に負の影響を及ぼしていた。学習仲間からの信頼や共感が,仲間との協同の回避や一人での作業を好む傾向を軽減する可能性が示唆された。
今後は,ソーシャルサポートと協同作業に対する認識の関連について,実際の協同学習場面を取り上げ,さらに検討していく必要があろう。
引用文献
片受 靖・大貫尚子(2014).大学生用ソーシャルサポート尺度の作成と信頼性・妥当性の検討 立正大学心理学研究年報,5,37-46.
長濱文与・安永 悟・関田一彦・甲原定房(2009). 協同作業認識尺度の開発 教育心理学研究,57,24-37.
関田一彦・安永 悟(2005).協同学習の定義と関連用語の整理 協同と教育,1,10-17.
近年,協同学習による授業改善が注目されている。協同学習は様々な効果を生み出すことが認められているが,それらの効果は,メンバー間の相互交流の質を高め,メンバー一人ひとりがグループの学習活動に積極的に貢献するという協同作業場面を創り出すことが前提となる(関田・安永,2005)。さらに,協同作業についての認識を高めることで,協同学習に期待される効果を得ることができると考えられている。
そのような協同作業認識に影響を及ぼす要因の一つとして考えられるのが,ソーシャルサポートである。実際の互恵的な協同学習場面では,学習者は様々な他者からのサポートを知覚していることが考えられる。しかし,児童の協同作業認識とソーシャルサポートの関連について検討した研究は希少である。そこで本研究では児童の協同作業に対する認識とソーシャルサポートの関連について検討する。
方 法
調査対象者 小学校5年生61名(男子35名,女子26名)
調査内容 ①協同作業への認識 協同作業認識尺度(長濱・安永・関田・甲原,2009)を用いた。協同作業認識尺度は,「協同効用」,「個人志向」,「互恵懸念」という3下位尺度25項目で構成されている尺度であるが,本調査では,協同効用から8項目,個人志向から5項目を選定し,小学生用に改変して使用した。
②ソーシャルサポート 大学生用ソーシャルサポート尺度(片受・大貫,2014)を用いた。ソーシャルサポート尺度は,「評価的サポート」,「情報・道具的サポート」,「情緒・所属的サポート」という3下位尺度23項目で構成されていた。本調査では,小学生用に改変して使用した。
結 果
協同作業認識尺度13項目について,確証的因子分析を行った。その結果,すべての項目に対して該当する因子から有意なパスを示した。適合度もGFI=.805,AGFI=.722,CFI=.818,RMSEA=.096であり,許容できる程度の適合度が得られた。また,ソーシャルサポート尺度21項目についても同様に,確証的因子分析を行った。その結果,すべての項目に対して該当する因子から有意なパスを示した。適合度もGFI=.700,AGFI=.627,CFI=.837,RMSEA=.093であり,許容できる程度の適合度が得られた。
次に協同作業認識の2側面に対して,ソーシャルサポートの3下位尺度得点を説明変数とする重回帰分析を行った。その結果,2つの側面の説明率が有意となり,道具・情報的サポートから協同効用に対して,情緒・所属的サポートから協同効用に対して正の関連が示された。また,情緒・所属的サポートから個人志向に対して負の関連が示された(Table1)。
考 察
情報・道具的サポート,情緒・所属的サポートはともに,協同効用に影響していた。協同的な時間を一緒に過ごし,学習仲間から信頼や共感を得るとともに,実際にアドバイスや指示をもらって問題解決の助けとなる情報をやりとりするなかで,協同効用が感じられることが示唆された。
一方,情緒・所属的サポートは,個人志向に負の影響を及ぼしていた。学習仲間からの信頼や共感が,仲間との協同の回避や一人での作業を好む傾向を軽減する可能性が示唆された。
今後は,ソーシャルサポートと協同作業に対する認識の関連について,実際の協同学習場面を取り上げ,さらに検討していく必要があろう。
引用文献
片受 靖・大貫尚子(2014).大学生用ソーシャルサポート尺度の作成と信頼性・妥当性の検討 立正大学心理学研究年報,5,37-46.
長濱文与・安永 悟・関田一彦・甲原定房(2009). 協同作業認識尺度の開発 教育心理学研究,57,24-37.
関田一彦・安永 悟(2005).協同学習の定義と関連用語の整理 協同と教育,1,10-17.