日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-66)

Sat. Sep 14, 2019 3:30 PM - 5:30 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号15:30~16:30
偶数番号16:30~17:30

[PC05] 現代青年の友人関係は現代青年の特徴なのか

1960年以前に出生した成人との比較

大谷宗啓 (滋賀大学)

Keywords:友人関係、現代青年、状況に応じた切替

問題と目的
 今日,「現代青年(現代若者)の友人関係」は大きな研究テーマとなっている。「現代青年」の定義は定かではないが,友人関係研究においては1980年代中頃以降における青年,主として大学生が現代青年とみなされてきた。「現代の友人関係」ではなく「現代青年の友人関係」として論じるならば,過去の青年との差異だけではなく,青年以外の年代との差異も仮定される。しかし,希薄化論・選択化論が共に着目した行動を「状況に応じた切替」(大谷, 2007; 複数の関係対象を切り替える「対象切替」と,複数の自己を切り替える「自己切替」)として取り上げると,大学生はそれを青年期ではなく成人期に必要とされる行動だと捉えていた(大谷, 2018教心JG01, 2019)。従来「現代青年の友人関係」とされてきたものは現代青年の特徴なのであろうか,それとも当の青年たちが捉えているように成人的な行動なのであろうか。
 本研究では,最も大きな差異が想定される比較対照群として,現代青年であった経験を持たない世代の成人を選択し,彼らと大学生との間で,状況に応じた切替,および,1989年から2010年の調査結果が報告されている7項目(岡田, 2016)への回答に差異がみられるかを検討する。
方  法
成人対象調査の実施(非現代青年データ)
 調査の概要 2018年11月,関西地方のシルバー人材センターで質問紙調査を実施した。
 分析対象 1960年以前出生者60名(男性41名,女性19名)。平均年齢68.25歳(SD=5.10)。
 調査内容 (a)状況に応じた切替:大谷(2018教心JG01)の2項目。「ある」と「ない」の択一回答。(b)現代青年の友人関係:岡田(2016)の7項目。「5. 非常にあてはまる」から「1. 全くあてはまらない」までの5件法。
大学生対象調査の参照(現代青年データ)
 状況に応じた切替では大学生260名を対象とした2018年調査結果(大谷, 2018教心JG01)を,現代青年の友人関係では全7項目が揃う中で最新の2007年調査結果(岡田, 2016, PC)を参照した。
結  果
状況に応じた切替の群間比較
 対象切替実行者は大学生39.15%,成人76.27%であり成人の実行率が高かった(χ2=25.16, df=1, p<.001, ES:ω=0.28, 1-β=0.99)。自己切替実行者は大学生50.97%,成人48.33%であり差は有意でなかった(χ2=0.05, df=1, ns, ES:ω=0.01, 1-β=0.05)。
友人関係7項目 の群間比較
 各平均点をt検定(名義有意水準調整:Holm法)により比較した結果,項目1(t (540)=5.27, p<.001, ES:d=0.72, 1-β=0.99)および項目5(t (539)=2.66, p<.05, ES:d=0.36, 1-β=0.76)は大学生が成人よりも高値であった。一方で,項目7(t (539)=3.04, p<.05, ES:d=0.41, 1-β=0.86)および項目2(t (539)=2.39, p<.10, ES:d=0.33, 1-β=0.67)は成人が大学生よりも高値であった(Figure 1)。
討  論
 まず全体として見れば,現代青年と非現代青年の間に際立った差異は見られない。従って「現代青年の友人関係」それ自体が現代青年と非現代青年とを区別する特徴とは考え難い。現代青年の友人関係を異質視するのではなく,現代青年は(成人でないにも係わらず)成人とよく似た友人関係のもち方をしていると捉えた上で,その発達的・社会的意味に迫る必要があるのではないか。側面全体として群間差のない軽躁的・評価懸念の両側面において,大学生>成人の項目と成人>大学生の項目が併存していることに注意したい。こうした機微の内に上述の課題に迫る糸口はないか。
 成人の対象切替実行率の高さは大学生の主観(大谷, 2018教心JG01, 2019)と一致する。また,大学生が成人期前半に必要と捉えている自己切替では群間差は見られない。(OHTANI, Munehiro)