日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-66)

Sat. Sep 14, 2019 3:30 PM - 5:30 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号15:30~16:30
偶数番号16:30~17:30

[PC09] 保育学生からみた「気になる子ども」

保育者との比較から

荒谷容子 (岩国短期大学)

Keywords:保育学生、気になる子ども、発達理解

問題と目的
 保育を学ぶ学生(以後,保育学生)にとって,保育現場で多様な子どもについて理解し,他児との調和を図りながら保育を進めていくことは重要な課題の一つであろう。しかし,子どもの理解において,それが気になる範囲であるのかどうかは保育者の経験値によることも大きい(金,2014)という。保育学生は子どもを理解する上では「気になる子ども」をどう捉えるのだろうか。
 本研究では,保育学生が子どもの発達を理解し一人ひとりの子どもに合った保育を考える上で,彼らからみた「気になる子ども」を取り上げる。また,現任保育者にとっての「気になる子ども」との比較も検討した。
方  法
(1)調査対象:保育者養成機関の短期大学 2年生 分析可能人数63名(男12名 女51名)
(2)調査時期:2018年7月中旬
(3)調査内容:調査内容・手続き
 ①「実習等保育現場では,どのような子どもが気になりましたか」自由記述を求めた。
 ②「対象となった気になる子どもの背景として考えられる影響要因について推測してください」自由記述を求めた。
(4)分析方法
1)カテゴリー化
 自由記述された内容からキーワードを抽出し,カテゴリー化された内容について人数分布を行った。(複数回答可)
2)保育者の意識と対応に関する調査(久保山・齋藤・西牧・當島・藤井・滝川;2009)による「気になる子ども」に関する調査結果と比較した。
結果と考察
1.①保育学生の「気になる子ども」
 自由記述された内容について読み取り,2語程度のキーワードを抽出した。それらワードを元にカテゴリーごとに命名した。すなわち,ア.子どもの落ち着きのなさや奇声を上げる 「エネルギッシュ多動」 についての気になる子ども(30.8%),イ. 対人関係において攻撃性,なぐったり,けんかしたり自己中心的「エネルギッシュ攻撃」についての気になる子ども(29.6%),ウ.特に昼食で目にする呑み込みが遅い,または好き嫌いがある 「食に関する」気になる子ども(14.5 %),エ.クラスで指示を聴いて集団活動をする時,勝ち負けへのこだわりや周りを意識する同調性に関する「指示に従う・集団的動き」についての気になる子ども(5.4%),オ. 一人で遊んでいる子やおもらしをずっとしている「精神面」についての気になる子ども(15.1%)であった。
②保育学生の「気になる子どもの要因」
 ①と同様の手続きをしてカテゴリーごとに命名した。すなわち,ア. 親との「コミュニケーション不足」 についての要因(35.3 %)イ. 集中力欠如、多動性の疑いの「多動を主とする」についての要因(28.6 %)ウ.自分の思い通りにしたい「自我の強さ」についての要因(19.0 %)エ.物事への興味が強い「好奇心旺盛」についての場面(16.3 %)であった。またどのカテゴリーにも属さないその他(0.8%)であった。
2.保育者の「気になる子ども」との差
 久保山・齋藤・西牧・當島・藤井・滝川(2009)による保育者への設問「気になる子ども」についての調査結果(自由記述からのカテゴリー化分析)によると,発達上の問題(20.5%),コミュニケーション(16.0%),落ち着きのなさ(15.4%)に回答が多かった。保育学生も,コミュニケーションに関する内容や落ち着きのなさについて回答をしていたが,発達上の問題の回答はなかった。保育者は現場で子どもの発達を捉えながら子どもに関わっている。発達上の問題とは,他児に比べてみえる遅れやアンバランスさが含まれる。つまり保育現場で課題となる観点が回答結果に表れていたのではなかろうか。