[PC22] 習慣化をサポートするアプリケーションの基礎的調査
時間管理の習慣化を支援するアプリケーションの開発をめざして
Keywords:習慣化、アプリケーション、時間管理
問題と目的
発達障害のある大学生を対象に時間管理上の課題を調査した濱田(2019)では,「メモ・手帳」および「時間管理アプリ」への記入と確認が習慣化されていないといった課題が報告され,さらに自己管理を育てる継続的,段階的な働きかけや支援者が身近にいない場合を想定した電子機器による遠隔的な支援が提案された。一方,濱田(2018)が行った大学生の時間管理をサポートするアプリの調査においては,予定や課題の記入と確認を促す機能は確認されていない。
今後,電子機器を用いて大学の支援部署と学生を遠隔的につなぎ,時間管理の習慣化を支援する機能も含めた時間管理の支援アプリを開発するにあたり,本研究では現在開発されている習慣化をサポートするアプリを調査し,時間管理の支援アプリに導入する機能を検討する。
方 法
本研究ではApple社製のデジタル機器に対応しているアプリのダウンロードサイトiTunesにて2018年11月27日に検索を行った。検索の際に使用したキーワードは“習慣化”であった。検索結果の中から日本語対応していないアプリ,ゲームなど習慣化を促す機能が見当たらないもの,長らく更新されていないものは調査対象から省き,何らかの習慣化を助ける目的や機能のあるアプリのみ残した。収集されたアプリについて,2019年3月31日までの間に順次機能の説明の確認や,実際にダウンロードすることで可能な限り機能を調査した。課金により機能が追加される場合は,課金を行い調査した。
結 果
61のアプリが収集され,同一シリーズを1つとして数えると55のアプリが調査対象となった。各アプリが対象とする習慣化をめざす行動はTable 1の通りである。また習慣化をサポートする機能はTable 2のように分類された。
考 察
習慣化をサポートするアプリの中でも利用者が設定する任意の行動を対象とし,汎用性のあるものが最も多かった。一方,予定や課題の記入と確認に特化したものは今回見つけることができなかった。したがって,他の行動を対象としたアプリの機能を時間管理の習慣化へ応用するよう検討したい。
習慣化をサポートする機能について,「記録」は自身が行動を継続してきた様子を視覚的に捉えることができ,継続の様子がグラフ化される機能なども確認された。時間管理においてもスケジュールの記入や確認の有無を記録することで,習慣化の形成の様子を視覚的に確認できるだろう。「リマインダー」はするべき行動を想起させる機能として有用である。スケジュールと照合し,適した「実行時刻の自動設定」機能も確認されており,これらを参考に,時間管理においても予定や課題の記入と確認を適切な時刻にリマインドする機能が想定される。また,「励まし」のメッセージ,他者からのコメントやグループで取り組むなど「他のユーザーとのつながり」,行動に伴い得ることのできる「報酬」は,行動の動機づけや社会的促進につながる。時間管理の支援アプリにおいても,ポイント制や支援者からの励まし,他の学生との交流といった機能の導入が考えられる。一方で,支援部署と学生をつないだアプリでは,支援を徐々に減らし,行動を自発的に行えるようになることが目標である。予定や課題の記入と確認によって得られた成功体験を振り返るなど,内発的動機づけを高める工夫も併せて検討したい。
加えて,習慣化に関する先行研究を調査し,習慣化を促進する要因を整理することで,まだ開発されていない新たな機能の導入も試みたい。
付 記
本研究は,JSPS科研費(課題番号17K14061)の助成を受けたものである。
発達障害のある大学生を対象に時間管理上の課題を調査した濱田(2019)では,「メモ・手帳」および「時間管理アプリ」への記入と確認が習慣化されていないといった課題が報告され,さらに自己管理を育てる継続的,段階的な働きかけや支援者が身近にいない場合を想定した電子機器による遠隔的な支援が提案された。一方,濱田(2018)が行った大学生の時間管理をサポートするアプリの調査においては,予定や課題の記入と確認を促す機能は確認されていない。
今後,電子機器を用いて大学の支援部署と学生を遠隔的につなぎ,時間管理の習慣化を支援する機能も含めた時間管理の支援アプリを開発するにあたり,本研究では現在開発されている習慣化をサポートするアプリを調査し,時間管理の支援アプリに導入する機能を検討する。
方 法
本研究ではApple社製のデジタル機器に対応しているアプリのダウンロードサイトiTunesにて2018年11月27日に検索を行った。検索の際に使用したキーワードは“習慣化”であった。検索結果の中から日本語対応していないアプリ,ゲームなど習慣化を促す機能が見当たらないもの,長らく更新されていないものは調査対象から省き,何らかの習慣化を助ける目的や機能のあるアプリのみ残した。収集されたアプリについて,2019年3月31日までの間に順次機能の説明の確認や,実際にダウンロードすることで可能な限り機能を調査した。課金により機能が追加される場合は,課金を行い調査した。
結 果
61のアプリが収集され,同一シリーズを1つとして数えると55のアプリが調査対象となった。各アプリが対象とする習慣化をめざす行動はTable 1の通りである。また習慣化をサポートする機能はTable 2のように分類された。
考 察
習慣化をサポートするアプリの中でも利用者が設定する任意の行動を対象とし,汎用性のあるものが最も多かった。一方,予定や課題の記入と確認に特化したものは今回見つけることができなかった。したがって,他の行動を対象としたアプリの機能を時間管理の習慣化へ応用するよう検討したい。
習慣化をサポートする機能について,「記録」は自身が行動を継続してきた様子を視覚的に捉えることができ,継続の様子がグラフ化される機能なども確認された。時間管理においてもスケジュールの記入や確認の有無を記録することで,習慣化の形成の様子を視覚的に確認できるだろう。「リマインダー」はするべき行動を想起させる機能として有用である。スケジュールと照合し,適した「実行時刻の自動設定」機能も確認されており,これらを参考に,時間管理においても予定や課題の記入と確認を適切な時刻にリマインドする機能が想定される。また,「励まし」のメッセージ,他者からのコメントやグループで取り組むなど「他のユーザーとのつながり」,行動に伴い得ることのできる「報酬」は,行動の動機づけや社会的促進につながる。時間管理の支援アプリにおいても,ポイント制や支援者からの励まし,他の学生との交流といった機能の導入が考えられる。一方で,支援部署と学生をつないだアプリでは,支援を徐々に減らし,行動を自発的に行えるようになることが目標である。予定や課題の記入と確認によって得られた成功体験を振り返るなど,内発的動機づけを高める工夫も併せて検討したい。
加えて,習慣化に関する先行研究を調査し,習慣化を促進する要因を整理することで,まだ開発されていない新たな機能の導入も試みたい。
付 記
本研究は,JSPS科研費(課題番号17K14061)の助成を受けたものである。