[PC54] PBIS第2水準における気になる子どもの発見尺度(SUTEKI)の開発
中学生不登校傾向との関連について
Keywords:PBIS、不登校傾向、いじめ
問題と目的
本研究は,PBIS第2水準における気になる子ども対象の発見尺度 (SUTEKI) の開発を目的とする。登校しぶり・閉じこもりの子どもでなく,第2水準における不登校傾向の子ども (学校に来にくい傾向があるが登校はしている) を対象とする。①SUTEKI尺度の因子構造を見出し,②不登校傾向の尺度との間での相関関係をみる。
方 法
調査内容 ①公立中学校3学年,各3クラス,計243名対象にSUTEKI尺度項目の収集・実施。小中学校の生徒指導・相談担当教師,スクールカウンセラー等から,気になる子どもの行動を収集。それを基に,気にならない・不登校にならないと考えられる子どもの期待行動 (PBIS) に焦点を当てた行動項目を設定した。最終的に20項目に整理された。各項目は,「全くできない~いつもできる」の中から,並びに「相談相手・頼りにしている」の項目は「0人~4人以上」の中から選択する5件法で,高得点ほど期待行動が高い傾向を示す。いじめ項目は高得点ほど非期待行動が高い項目とした。② 公立中学校1年生,各3クラス計81名を対象に,①のSUTEKI尺度項目ならびに,五十嵐他 (2004) による不登校傾向尺度を使用した。この尺度は,別室登校を希望する (3項目),遊び・非行と関連する (4項目),精神身体症状を伴う (4項目),在宅を希望する (2項目) の計4因子計13項目4件法を用いた。
倫理的配慮 調査校の校長から調査の了承を得た。調査時には,無記名調査で個人を特定しないこと,回答内容により成績等に不利益が生じないこと,回答したことをもって調査協力への同意とすることを文書と口頭で対象者に説明した。
結果と考察
SUTEKI尺度の因子分析結果 固有値の減衰状況から4因子を想定し因子分析 (最尤法・プロマックス回転) を行った。その結果第1因子は,「あなたを頼りにしてくれている,他の人 (先輩や近所の人や先生) は,何人いますか」等の6項目からなる「相談資源」,第2因子は,「あなたは,クラスのルール,規則を守って生活できる」等の7項目からなる「規律遵守」,第3因子は,「あなたは,たとえうまくいかなかったとしても,立ち直ることができる」等の2項目からなる「乗り切り」,第4因子は,「あなたは,今のクラスで,イヤなことや,いじめられるようなことをみたことがある」等の2項目からなる「いじめ」の計4因子計17項目を抽出した。信頼性係数は,順にα=.81,.76,.67,.71と,まずまずの内的整合性が見出された。
相関分析結果 SUTEKI尺度4因子と不登校傾向の尺度4因子との間でPearsonの相関係数(両側検定) を求めた。SUTEKI尺度4因子間の相関をみる。「規律遵守」とその他の各因子間での相関係数は,「相談資源」 (.294),「乗り切り」 (.146),「いじめ」 (-.239) であった。「相談資源」と各因子間では「乗り切り」 (.324),「いじめ」 (-.151) であった。「乗り切り」と「いじめ」と各因子間では (.096) であった。いずれも弱い正の相関か,ほとんど相関が見られなかった。いじめとはいずれの因子とも負の弱い相関であった。SUTEKI尺度4因子と不登校傾向の相間をみる。「相談資源」では,「精神身体症状」並びに「在宅希望」との間で負の相関がみられた (順に,-.441;-.468)。「規律遵守」では,遊び非行と精神身体症状との間で負の弱い相関が見られた (順に,-.302;-.394)。「いじめ」と精神身体症状との間では正の弱い相関 (.318) ,「乗り切り」と在宅希望では負の弱い相関が見出された (-.355)。
今後の課題 第2水準に該当する登校している子どもでなく,閉じこもり・登校しぶりの不登校児対象の検討が求められる。
引用文献
市川千秋・工藤 弘 (2016). 不登校は必ず減らせる 学事出版
五十嵐哲也・萩原久子 (2004). 中学生の不登校傾向と幼少期の父親およびへ母親への愛着との関連 教育心理学研究,52,264-267
工藤 弘・小林 武 (2010). 不登校を激減させた方法~尺度の作成と小学校と中学校の連携による中一ギャップの予防 (その1). 第52回日本教育心理学会論文集
本研究は,PBIS第2水準における気になる子ども対象の発見尺度 (SUTEKI) の開発を目的とする。登校しぶり・閉じこもりの子どもでなく,第2水準における不登校傾向の子ども (学校に来にくい傾向があるが登校はしている) を対象とする。①SUTEKI尺度の因子構造を見出し,②不登校傾向の尺度との間での相関関係をみる。
方 法
調査内容 ①公立中学校3学年,各3クラス,計243名対象にSUTEKI尺度項目の収集・実施。小中学校の生徒指導・相談担当教師,スクールカウンセラー等から,気になる子どもの行動を収集。それを基に,気にならない・不登校にならないと考えられる子どもの期待行動 (PBIS) に焦点を当てた行動項目を設定した。最終的に20項目に整理された。各項目は,「全くできない~いつもできる」の中から,並びに「相談相手・頼りにしている」の項目は「0人~4人以上」の中から選択する5件法で,高得点ほど期待行動が高い傾向を示す。いじめ項目は高得点ほど非期待行動が高い項目とした。② 公立中学校1年生,各3クラス計81名を対象に,①のSUTEKI尺度項目ならびに,五十嵐他 (2004) による不登校傾向尺度を使用した。この尺度は,別室登校を希望する (3項目),遊び・非行と関連する (4項目),精神身体症状を伴う (4項目),在宅を希望する (2項目) の計4因子計13項目4件法を用いた。
倫理的配慮 調査校の校長から調査の了承を得た。調査時には,無記名調査で個人を特定しないこと,回答内容により成績等に不利益が生じないこと,回答したことをもって調査協力への同意とすることを文書と口頭で対象者に説明した。
結果と考察
SUTEKI尺度の因子分析結果 固有値の減衰状況から4因子を想定し因子分析 (最尤法・プロマックス回転) を行った。その結果第1因子は,「あなたを頼りにしてくれている,他の人 (先輩や近所の人や先生) は,何人いますか」等の6項目からなる「相談資源」,第2因子は,「あなたは,クラスのルール,規則を守って生活できる」等の7項目からなる「規律遵守」,第3因子は,「あなたは,たとえうまくいかなかったとしても,立ち直ることができる」等の2項目からなる「乗り切り」,第4因子は,「あなたは,今のクラスで,イヤなことや,いじめられるようなことをみたことがある」等の2項目からなる「いじめ」の計4因子計17項目を抽出した。信頼性係数は,順にα=.81,.76,.67,.71と,まずまずの内的整合性が見出された。
相関分析結果 SUTEKI尺度4因子と不登校傾向の尺度4因子との間でPearsonの相関係数(両側検定) を求めた。SUTEKI尺度4因子間の相関をみる。「規律遵守」とその他の各因子間での相関係数は,「相談資源」 (.294),「乗り切り」 (.146),「いじめ」 (-.239) であった。「相談資源」と各因子間では「乗り切り」 (.324),「いじめ」 (-.151) であった。「乗り切り」と「いじめ」と各因子間では (.096) であった。いずれも弱い正の相関か,ほとんど相関が見られなかった。いじめとはいずれの因子とも負の弱い相関であった。SUTEKI尺度4因子と不登校傾向の相間をみる。「相談資源」では,「精神身体症状」並びに「在宅希望」との間で負の相関がみられた (順に,-.441;-.468)。「規律遵守」では,遊び非行と精神身体症状との間で負の弱い相関が見られた (順に,-.302;-.394)。「いじめ」と精神身体症状との間では正の弱い相関 (.318) ,「乗り切り」と在宅希望では負の弱い相関が見出された (-.355)。
今後の課題 第2水準に該当する登校している子どもでなく,閉じこもり・登校しぶりの不登校児対象の検討が求められる。
引用文献
市川千秋・工藤 弘 (2016). 不登校は必ず減らせる 学事出版
五十嵐哲也・萩原久子 (2004). 中学生の不登校傾向と幼少期の父親およびへ母親への愛着との関連 教育心理学研究,52,264-267
工藤 弘・小林 武 (2010). 不登校を激減させた方法~尺度の作成と小学校と中学校の連携による中一ギャップの予防 (その1). 第52回日本教育心理学会論文集