[PC56] 短期大学生の時間的展望と進路に対する自己効力度との関係
Keywords:短期大学生、時間的展望、進路自己効力度
問題と目的
短期大学に入学した学生(以下短大生)は,入学した年度の後期には卒業後の進路を考えなければならない。ほとんどの短大生は,大学受験-入学-就職活動-卒業(社会への移行)というライフイベントが,ほぼ2年間という短い期間で起きることとなり,この間に自己実現や進路選択という目標や目的達成のための能動的な働きかけを行う必要に迫られる。
短大生の自己意識と職業選択に関する調査については,4年制の大学生(以下大学生)と比べてデータが少なく,短大生の進路決定プロセスやそこでの課題等は明らかにされているとはいえない。
そこで,本研究では進路選択に対して深く関わると考えられる時間的展望(白井,1997)が,進路に対する自己効力度(浦上,1995)に対してどのような影響を及ぼすのかを学科別に検討する。なお,学科を変数としたのは,資格の取得を主たる目的とする学科とそうではない学科による違いを検討するためである。
方 法
研究協力者 A県内のB短期大学の2018年度入学生に対し,授業終了後に質問紙調査を実施した。調査時期は2018年6月である。回答に不備のなかった81名(コミュニティ文化学科:以下C学科28名,食物栄養学科:以下D学科53名)が対象となった。
質問紙 時間的展望体験尺度(白井,1997),進路に対する自己効力度尺度(浦上,1995)を使用した。いずれも4件法で回答を求めた。
結果および考察
学科間の進路に対する自己効力度得点の差を検討するため,学科別に平均値,標準偏差を求めた(Table 1)後,t検定を行なった。その結果,学科間の得点には差が見られ(t (72.64)=2.11,p =.04,d =.45,差の95%CI[0.32,10.85]),C学科よりもD学科の得点が高かった。
学科間の進路に対する自己効力度得点に差が見られたので,学科別に時間的展望が進路に対する自己効力度に与える影響を検討するために,学科別に進路に対する自己効力度を目的変数,時間的展望尺度の下位因子を説明変数とする重回帰分析(強制投入法)を行なった。
重回帰分析の結果,決定係数はC学科で.60,D学科で.39であり,いずれも0.1%水準で有意な値であった。因子間相関とそれぞれの説明変数から目的変数への標準偏回帰係数はTable2とTable3に示したとおりである。
このような結果が見られた理由として,C学科は入学した後に,語学や観光,経営などの領域から自分のやりたいと思えるテーマを見つけ,その中から自分に合った進路を選択していこうとする学生が多いと考えられ,事務職,販売職,サービス職での就職が90%以上であるのに対し,D学科は入学する段階でほぼ全員が栄養士資格の取得を目指しており,卒業時には90%以上が栄養士として就職するというという学科の特徴の違いが背景にあると考えられる。
以上の結果から,入学後に自分にあった進路を探索していこうとする場合には目標指向性と希望が重要な要因となると思われるが,入学前にある程度の進路についての希望を持っている場合には目標指向性が進路に対する自己効力度の重要な要因となると思われ,状況に応じた働きかけの必要性が示唆された。
短期大学に入学した学生(以下短大生)は,入学した年度の後期には卒業後の進路を考えなければならない。ほとんどの短大生は,大学受験-入学-就職活動-卒業(社会への移行)というライフイベントが,ほぼ2年間という短い期間で起きることとなり,この間に自己実現や進路選択という目標や目的達成のための能動的な働きかけを行う必要に迫られる。
短大生の自己意識と職業選択に関する調査については,4年制の大学生(以下大学生)と比べてデータが少なく,短大生の進路決定プロセスやそこでの課題等は明らかにされているとはいえない。
そこで,本研究では進路選択に対して深く関わると考えられる時間的展望(白井,1997)が,進路に対する自己効力度(浦上,1995)に対してどのような影響を及ぼすのかを学科別に検討する。なお,学科を変数としたのは,資格の取得を主たる目的とする学科とそうではない学科による違いを検討するためである。
方 法
研究協力者 A県内のB短期大学の2018年度入学生に対し,授業終了後に質問紙調査を実施した。調査時期は2018年6月である。回答に不備のなかった81名(コミュニティ文化学科:以下C学科28名,食物栄養学科:以下D学科53名)が対象となった。
質問紙 時間的展望体験尺度(白井,1997),進路に対する自己効力度尺度(浦上,1995)を使用した。いずれも4件法で回答を求めた。
結果および考察
学科間の進路に対する自己効力度得点の差を検討するため,学科別に平均値,標準偏差を求めた(Table 1)後,t検定を行なった。その結果,学科間の得点には差が見られ(t (72.64)=2.11,p =.04,d =.45,差の95%CI[0.32,10.85]),C学科よりもD学科の得点が高かった。
学科間の進路に対する自己効力度得点に差が見られたので,学科別に時間的展望が進路に対する自己効力度に与える影響を検討するために,学科別に進路に対する自己効力度を目的変数,時間的展望尺度の下位因子を説明変数とする重回帰分析(強制投入法)を行なった。
重回帰分析の結果,決定係数はC学科で.60,D学科で.39であり,いずれも0.1%水準で有意な値であった。因子間相関とそれぞれの説明変数から目的変数への標準偏回帰係数はTable2とTable3に示したとおりである。
このような結果が見られた理由として,C学科は入学した後に,語学や観光,経営などの領域から自分のやりたいと思えるテーマを見つけ,その中から自分に合った進路を選択していこうとする学生が多いと考えられ,事務職,販売職,サービス職での就職が90%以上であるのに対し,D学科は入学する段階でほぼ全員が栄養士資格の取得を目指しており,卒業時には90%以上が栄養士として就職するというという学科の特徴の違いが背景にあると考えられる。
以上の結果から,入学後に自分にあった進路を探索していこうとする場合には目標指向性と希望が重要な要因となると思われるが,入学前にある程度の進路についての希望を持っている場合には目標指向性が進路に対する自己効力度の重要な要因となると思われ,状況に応じた働きかけの必要性が示唆された。