[PC58] 高校生のネガティブな個人要因と睡眠との関連
Keywords:高校生、睡眠、ネガティブな個人要因
問題と目的
睡眠は身体的健康だけでなく,心理的健康にも影響を及ぼすことが知られている。また,睡眠時間や睡眠リズムの確保といった睡眠行動が何によって生起するのかという視点からすると,特性的自己効力感,自尊心,基本的信頼感等のポジティブな個人要因は,良好な睡眠行動の生起に影響すると考えられる(坂本,2017)。一方,不適切な睡眠行動が心理的健康の悪化と関連することが指摘されているが逆にネガティブな心理的要因が睡眠行動に作用し,睡眠習慣や睡眠の質を悪化させる可能性については十分な検討がなされていない。よって本研究では,高校生の自己不全感,居場所喪失感,学校不適応感およびインターネット依存傾向と睡眠行動の関連について検討することを目的とする。
方 法
2016年6月にF県の私立高校1校に在籍する1~3年生614名(男子371名,女子243名)を対象として自記式質問紙調査を実施した。学校長等に研究の目的と個人情報の保護について文書にて説明し,承認を得た。同様に対象者に対し,質問紙冒頭に記載し同意を得た。睡眠行動を生活習慣チエックリスト学生版(田中, 2006),インターネット依存傾向(以下ネット依存傾向)をDianostic Questionnaire (Young KS, 1998)(邦語版)で評価し,日常生活主訴(坂本,2015)を使用した。調査集計と統計解析にはSPSS Statistics19.0を用いた。
結果と考察
各変数の性差をt検定にて比較したところ,概日リズムは男子が良好であり,自己不全感とネット依存傾向は女子が高い値を示した。分析は全て男女別に行い,ネガティブな個人要因の多くが睡眠との負の相関関係を示した。個人要因毎に睡眠状況との関係を見ていくと,男子においては自己不全感は概日リズムおよび睡眠の主観的満足感,学校不適応感は睡眠時間および主観的満足感,ネット依存傾向は良好な覚醒状態とそれぞれ負の相関関係にあり,同様に女子では自己不全感と学校不適応感が概日リズム,就床前のリラックスおよび主観的満足感と負の相関関係にあり,ネット依存傾向は概日リズムおよび就床前のリラックスとの間に負の相関関係が確認された。次に睡眠行動を基準変数とし,ネガティブな個人要因を説明変数とする重回帰分析の結果を以下に示す(Table 1)。
「なんとなく不安になる」「精神的に疲れたと感じる」等の自己不全感は男子の概日リズム,男女の睡眠の主観的満足感を阻害していた。「友人とうまくいかない」「どこにも居場所がないと感じる」等の居場所喪失感は女子の日中の良好な覚醒状態を阻害し,「学校がおもしろくない」「授業がイヤ」等の学校不適応感は男子の睡眠時間,男女の概日リズム,日中の良好な覚醒状態,就床前のリラックスを阻害していた。不適切な睡眠行動が授業中の居眠りや,学業成績低下につながるとされるが,逆に授業をはじめとする学校生活に満足感を得られないことが高校生の不適切な睡眠行動を助長するという方向性も確認された。ネット依存傾向は女子の睡眠時間を除く全ての睡眠行動と状況を阻害するように作用していた。そのネット依存傾向は,男女ともに自己不全感と正の相関関係にあり,不安感やいらいら感などの心理的な不安定さを紛らわせるためにインターネットを長時間使用し,就床時刻の遅延や不規則化につながる可能性が示された。
睡眠は身体的健康だけでなく,心理的健康にも影響を及ぼすことが知られている。また,睡眠時間や睡眠リズムの確保といった睡眠行動が何によって生起するのかという視点からすると,特性的自己効力感,自尊心,基本的信頼感等のポジティブな個人要因は,良好な睡眠行動の生起に影響すると考えられる(坂本,2017)。一方,不適切な睡眠行動が心理的健康の悪化と関連することが指摘されているが逆にネガティブな心理的要因が睡眠行動に作用し,睡眠習慣や睡眠の質を悪化させる可能性については十分な検討がなされていない。よって本研究では,高校生の自己不全感,居場所喪失感,学校不適応感およびインターネット依存傾向と睡眠行動の関連について検討することを目的とする。
方 法
2016年6月にF県の私立高校1校に在籍する1~3年生614名(男子371名,女子243名)を対象として自記式質問紙調査を実施した。学校長等に研究の目的と個人情報の保護について文書にて説明し,承認を得た。同様に対象者に対し,質問紙冒頭に記載し同意を得た。睡眠行動を生活習慣チエックリスト学生版(田中, 2006),インターネット依存傾向(以下ネット依存傾向)をDianostic Questionnaire (Young KS, 1998)(邦語版)で評価し,日常生活主訴(坂本,2015)を使用した。調査集計と統計解析にはSPSS Statistics19.0を用いた。
結果と考察
各変数の性差をt検定にて比較したところ,概日リズムは男子が良好であり,自己不全感とネット依存傾向は女子が高い値を示した。分析は全て男女別に行い,ネガティブな個人要因の多くが睡眠との負の相関関係を示した。個人要因毎に睡眠状況との関係を見ていくと,男子においては自己不全感は概日リズムおよび睡眠の主観的満足感,学校不適応感は睡眠時間および主観的満足感,ネット依存傾向は良好な覚醒状態とそれぞれ負の相関関係にあり,同様に女子では自己不全感と学校不適応感が概日リズム,就床前のリラックスおよび主観的満足感と負の相関関係にあり,ネット依存傾向は概日リズムおよび就床前のリラックスとの間に負の相関関係が確認された。次に睡眠行動を基準変数とし,ネガティブな個人要因を説明変数とする重回帰分析の結果を以下に示す(Table 1)。
「なんとなく不安になる」「精神的に疲れたと感じる」等の自己不全感は男子の概日リズム,男女の睡眠の主観的満足感を阻害していた。「友人とうまくいかない」「どこにも居場所がないと感じる」等の居場所喪失感は女子の日中の良好な覚醒状態を阻害し,「学校がおもしろくない」「授業がイヤ」等の学校不適応感は男子の睡眠時間,男女の概日リズム,日中の良好な覚醒状態,就床前のリラックスを阻害していた。不適切な睡眠行動が授業中の居眠りや,学業成績低下につながるとされるが,逆に授業をはじめとする学校生活に満足感を得られないことが高校生の不適切な睡眠行動を助長するという方向性も確認された。ネット依存傾向は女子の睡眠時間を除く全ての睡眠行動と状況を阻害するように作用していた。そのネット依存傾向は,男女ともに自己不全感と正の相関関係にあり,不安感やいらいら感などの心理的な不安定さを紛らわせるためにインターネットを長時間使用し,就床時刻の遅延や不規則化につながる可能性が示された。