[PC61] 小学生の情動知能とストレスとの関連
Keywords:小学生、情動知能、ストレス
はじめに
近年,子どもたちの非認知能力に注目が集まっている(遠藤, 2017)。これは,自己および対人的な社会情動スキルであり,成人で情動知能と呼ばれてきたものである。本研究では小学生を調査対象とし,情動知能の現状とストレスの関連を明らかにする。
方 法
調査時期 2018年9~10月
調査対象者 A市内の小学5,6年生
調査対象者にEQS_C(EQS児童用),PSI小学生用(パブリックストレスインベントリー)を実施した。小学校の学校長と各クラス担任に文書と口頭で調査目的,調査方法について説明し,研究への協力を得た。次に,クラス担任から対象者にEQS_C,PSI調査票の2種類を配布し回答してもらった。5,6年生195名に配布し,EQS_C,PSIともに有効回答が得られたのは154名(男子70名,女子84名)(有効回答率79%)であった。
倫理的配慮
調査にあたっては,所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
結 果
有効回答が得られた154名を分析対象とした。また性別ごとに得点を算出し,性差の検討を行った。EQS_CとPSIの得点をそれぞれFigure 1,2に示す。
EQS_Cについて
領域得点では,自己対応,対人対応の項目で女子の方が男子よりも有意に得点が高かった(p<.05)。対応因子得点では,自己コントロール,共感性,愛他心の項目において女子の方が男子よりも有意に得点が高かった(p<.05)。下位因子得点では,目標追求,自制心,共感性,愛他心,気配りの項目で,女子の方が男子よりも有意に得点が高かった(p<.05)。
PSIについて
本研究ではストレス反応,ストレッサーに着目し,ソーシャルサポートについては分析対象外とした。ストレスとストレッサーの全ての項目で性差は認められなかった。
情動知能とストレスとの関連
情動知能とストレスとの関連を調べるため,EQS_Cの得点,PSIの得点の相関係数を求めた。その結果,全体では「自己対応」と「ストレス反応」(r=-.33),「自己対応」と「ストレッサー」(r=-.24),「対人対応」と「ストレス反応」(r=-.24),「対人対応」と「ストレッサー」(r=-.25),「状況対応」と「ストレス反応」(r=-.31),「状況対応」と「ストレッサー」(r=-.30)においてそれぞれ有意な負の相関が認められた(p<.05)。
以下は,特に相関が高い傾向にあった。全体では「自己対応」と「無力感」(r=-.41),「自制心」と「無力感」(r=-.41),「自己コントロール」と「無力感」(r=-.40)の間にやや高い相関が認められた(p<.05)。男子は「「状況洞察」と「無力感」(r=-.54),「楽天主義」と「無力感」(r=-.51),「自制心」と「不機嫌・怒り」(r=-.47),女子は「自制心」と「友人関係」(r=-.50),「自己コントロール」と「友人関係」(r=-.43)の間に高い負の相関が認められた(p<.05)。
考 察
結果より,EQS_Cの得点が高いとPSIのストレスに関する得点が低いといえる。特に,小学校高学年では自己に対応する情動知能である自制心や自己コントロールを高めると,ストレスが下がる可能性が示唆された。小学生への支援を考える上で,情動知能を上げるためのトレーニングが有用であると考えられる。
近年,子どもたちの非認知能力に注目が集まっている(遠藤, 2017)。これは,自己および対人的な社会情動スキルであり,成人で情動知能と呼ばれてきたものである。本研究では小学生を調査対象とし,情動知能の現状とストレスの関連を明らかにする。
方 法
調査時期 2018年9~10月
調査対象者 A市内の小学5,6年生
調査対象者にEQS_C(EQS児童用),PSI小学生用(パブリックストレスインベントリー)を実施した。小学校の学校長と各クラス担任に文書と口頭で調査目的,調査方法について説明し,研究への協力を得た。次に,クラス担任から対象者にEQS_C,PSI調査票の2種類を配布し回答してもらった。5,6年生195名に配布し,EQS_C,PSIともに有効回答が得られたのは154名(男子70名,女子84名)(有効回答率79%)であった。
倫理的配慮
調査にあたっては,所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
結 果
有効回答が得られた154名を分析対象とした。また性別ごとに得点を算出し,性差の検討を行った。EQS_CとPSIの得点をそれぞれFigure 1,2に示す。
EQS_Cについて
領域得点では,自己対応,対人対応の項目で女子の方が男子よりも有意に得点が高かった(p<.05)。対応因子得点では,自己コントロール,共感性,愛他心の項目において女子の方が男子よりも有意に得点が高かった(p<.05)。下位因子得点では,目標追求,自制心,共感性,愛他心,気配りの項目で,女子の方が男子よりも有意に得点が高かった(p<.05)。
PSIについて
本研究ではストレス反応,ストレッサーに着目し,ソーシャルサポートについては分析対象外とした。ストレスとストレッサーの全ての項目で性差は認められなかった。
情動知能とストレスとの関連
情動知能とストレスとの関連を調べるため,EQS_Cの得点,PSIの得点の相関係数を求めた。その結果,全体では「自己対応」と「ストレス反応」(r=-.33),「自己対応」と「ストレッサー」(r=-.24),「対人対応」と「ストレス反応」(r=-.24),「対人対応」と「ストレッサー」(r=-.25),「状況対応」と「ストレス反応」(r=-.31),「状況対応」と「ストレッサー」(r=-.30)においてそれぞれ有意な負の相関が認められた(p<.05)。
以下は,特に相関が高い傾向にあった。全体では「自己対応」と「無力感」(r=-.41),「自制心」と「無力感」(r=-.41),「自己コントロール」と「無力感」(r=-.40)の間にやや高い相関が認められた(p<.05)。男子は「「状況洞察」と「無力感」(r=-.54),「楽天主義」と「無力感」(r=-.51),「自制心」と「不機嫌・怒り」(r=-.47),女子は「自制心」と「友人関係」(r=-.50),「自己コントロール」と「友人関係」(r=-.43)の間に高い負の相関が認められた(p<.05)。
考 察
結果より,EQS_Cの得点が高いとPSIのストレスに関する得点が低いといえる。特に,小学校高学年では自己に対応する情動知能である自制心や自己コントロールを高めると,ストレスが下がる可能性が示唆された。小学生への支援を考える上で,情動知能を上げるためのトレーニングが有用であると考えられる。