[PD02] 思春期の攻撃性に関する縦断的検討(4)
攻撃性の発達的変化パターンと心理的統制の関連
Keywords:思春期、攻撃性、心理的統制
目 的
小学校高学年から中学生までの思春期の始まりの段階においては,いじめや反社会的問題行動など,攻撃性に関連した問題の増加が懸念されている。しかし,思春期の発達的変化には個人差が大きく,多様性が認められている。
この点に関して,平石・渡邉・谷(2019)では小学6年生に対する縦断調査によって攻撃行動得点の発達的変化には4つの異なるパターンがあることを見出している。しかし,そこでは攻撃行動の変化の類型を確認するだけに留まっており,その類型の規定要因や関連要因については明らかにされていない。そこで,本研究ではこの攻撃性の発達的変化パターンの関連要因として母親からの心理的統制を取りあげ,両者の関連について探索的な検討を行うことを目的とした。
方 法
1.調査協力者:東海地区の公立小学校6年生に対し,年1回合計3回の縦断調査を実施した。本研究における分析の対象となった有効回答数は213名(男子92名,女子121名)であった。
2.調査時期および実施方法:調査時期は第1回(小学6年生)2014年12月,第2回(中学1年生)
2015年12月,第3回(中学2年生)2016年12月であった。実施方法は,担任教諭から封入した調査用紙および調査依頼文を児童生徒に配布し,自宅に持ち帰って保護者と児童生徒の同意を得た上で回答するように求めた。また,終了後は学校に持参し,担任教諭に提出するように依頼した。
3.調査内容:攻撃行動の発現頻度を測定するために,攻撃行動尺度(高橋他,2009)9項目(5件法,0〜4点)を用いた。また,母親からの心理的統制を測定するために内海(2013)の青年期養育尺度の下位尺度である心理的統制尺度6項目(7件法,1〜7点)を使用した。尺度得点は項目平均値を算出した。
結果・考察
1.攻撃行動の発達的変化の類型化
本研究では平石・渡邉・谷(2019)と同様に非階層的クラスタ分析(kmeans法)を行い,4クラスタを抽出した。第1クラスタ(CL.1)は攻撃行動得点が一貫して低い群である。第2クラスタ(CL.2)は,学年が上がるにつれて直線的に攻撃行動得点が上昇している群である。第3クラスタ(CL.3)は小学校6年生では中程度の攻撃行動得点であったが,中学生で大きく得点が低下している群である。最後に第4クラスタ(CL.4)は一貫して高い攻撃行動得点を示しているが中学生になるにつれて緩やかに得点が低下している群である。
2.攻撃行動の発達的変化パターンと母親からの心理的統制の関連
攻撃行動の発達的変化パターンと母親からの心理的統制との関連を探索的に検討するために,攻撃行動の各群毎に3時点の心理的統制得点を算出し,2要因混合計画の分散分析を行った(Table 1を参照)。
その結果,群(F(3,209)=15.66,p<.001,偏イータ二乗=.18)と時点(F(2,418)=7.25,p<.001,偏イータ二乗=.03)の主効果,交互作用(F(6,418)=4.34,p<.001,偏イータ二乗=.06)のいずれも有意であった。単純主効果検定の結果は,群と時点のいずれも有意であった。続いて多重比較(Bonferroni)を行った結果,Time1では,CL.1の心理的統制得点はCL.3とCL.4の得点よりも有意(p<.001)に低く,CL.2の得点はCL.4よりも有意(p<.01)に低かった。Time2では,CL1.の得点はCL.2とCL.4よりも有意(p<.05)に低かった。そして,Time3では,CL.1の得点はCL.2(p<.001),CL.3(p<.05),CL.4(p<.001)よりも有意に低く,CL.2(p<.01)とCL.3(p<.001)はCL.4よりも有意に得点が低かった。
各群毎の時点間の得点差はCL.2とCL.4においてのみ有意であった。CL.2では,Time1の得点がTime2とTime3の得点よりも有意(p<.01)に低かった。CL.4ではTime1(p<.05)とTime2(p<.01)の得点が,Time3よりも有意に低かった。
以上の結果より,攻撃行動と心理的統制には概ね有意な関連が認められたが,CL.4では心理的統制と攻撃行動の変化は一致していなかった。今後は他の要因との相乗効果や調整効果についても検討する必要がある。
小学校高学年から中学生までの思春期の始まりの段階においては,いじめや反社会的問題行動など,攻撃性に関連した問題の増加が懸念されている。しかし,思春期の発達的変化には個人差が大きく,多様性が認められている。
この点に関して,平石・渡邉・谷(2019)では小学6年生に対する縦断調査によって攻撃行動得点の発達的変化には4つの異なるパターンがあることを見出している。しかし,そこでは攻撃行動の変化の類型を確認するだけに留まっており,その類型の規定要因や関連要因については明らかにされていない。そこで,本研究ではこの攻撃性の発達的変化パターンの関連要因として母親からの心理的統制を取りあげ,両者の関連について探索的な検討を行うことを目的とした。
方 法
1.調査協力者:東海地区の公立小学校6年生に対し,年1回合計3回の縦断調査を実施した。本研究における分析の対象となった有効回答数は213名(男子92名,女子121名)であった。
2.調査時期および実施方法:調査時期は第1回(小学6年生)2014年12月,第2回(中学1年生)
2015年12月,第3回(中学2年生)2016年12月であった。実施方法は,担任教諭から封入した調査用紙および調査依頼文を児童生徒に配布し,自宅に持ち帰って保護者と児童生徒の同意を得た上で回答するように求めた。また,終了後は学校に持参し,担任教諭に提出するように依頼した。
3.調査内容:攻撃行動の発現頻度を測定するために,攻撃行動尺度(高橋他,2009)9項目(5件法,0〜4点)を用いた。また,母親からの心理的統制を測定するために内海(2013)の青年期養育尺度の下位尺度である心理的統制尺度6項目(7件法,1〜7点)を使用した。尺度得点は項目平均値を算出した。
結果・考察
1.攻撃行動の発達的変化の類型化
本研究では平石・渡邉・谷(2019)と同様に非階層的クラスタ分析(kmeans法)を行い,4クラスタを抽出した。第1クラスタ(CL.1)は攻撃行動得点が一貫して低い群である。第2クラスタ(CL.2)は,学年が上がるにつれて直線的に攻撃行動得点が上昇している群である。第3クラスタ(CL.3)は小学校6年生では中程度の攻撃行動得点であったが,中学生で大きく得点が低下している群である。最後に第4クラスタ(CL.4)は一貫して高い攻撃行動得点を示しているが中学生になるにつれて緩やかに得点が低下している群である。
2.攻撃行動の発達的変化パターンと母親からの心理的統制の関連
攻撃行動の発達的変化パターンと母親からの心理的統制との関連を探索的に検討するために,攻撃行動の各群毎に3時点の心理的統制得点を算出し,2要因混合計画の分散分析を行った(Table 1を参照)。
その結果,群(F(3,209)=15.66,p<.001,偏イータ二乗=.18)と時点(F(2,418)=7.25,p<.001,偏イータ二乗=.03)の主効果,交互作用(F(6,418)=4.34,p<.001,偏イータ二乗=.06)のいずれも有意であった。単純主効果検定の結果は,群と時点のいずれも有意であった。続いて多重比較(Bonferroni)を行った結果,Time1では,CL.1の心理的統制得点はCL.3とCL.4の得点よりも有意(p<.001)に低く,CL.2の得点はCL.4よりも有意(p<.01)に低かった。Time2では,CL1.の得点はCL.2とCL.4よりも有意(p<.05)に低かった。そして,Time3では,CL.1の得点はCL.2(p<.001),CL.3(p<.05),CL.4(p<.001)よりも有意に低く,CL.2(p<.01)とCL.3(p<.001)はCL.4よりも有意に得点が低かった。
各群毎の時点間の得点差はCL.2とCL.4においてのみ有意であった。CL.2では,Time1の得点がTime2とTime3の得点よりも有意(p<.01)に低かった。CL.4ではTime1(p<.05)とTime2(p<.01)の得点が,Time3よりも有意に低かった。
以上の結果より,攻撃行動と心理的統制には概ね有意な関連が認められたが,CL.4では心理的統制と攻撃行動の変化は一致していなかった。今後は他の要因との相乗効果や調整効果についても検討する必要がある。