日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD13] 幼児の相互作用場面における位置関係の変化

保護者と教師からみた幼児の特性に着目して

神田まほろ1, 島義弘2 (1.鹿児島県立鹿児島養護学校, 2.鹿児島大学)

Keywords:幼児、位置関係、発達

目  的
 幼児同士で着席位置を決めるとき,タテの位置関係(対面やななめ)よりもヨコの位置関係(隣や直角)を好むことが外山(1998)で示されている。また,自由遊び場面においても3・4歳児はヨコの位置関係を好む傾向が見られ,年齢とともにタテの位置関係や円の位置関係を好むようになることが示された(神田・島,2018)。
 しかし,人の行動はその人の特性,もしくは,特性と状況の相互作用によって生起するものであるため(若林,1993),幼児の特性も加味した検討が必要であることから神田・島(2018)で幼児の特性に着目して位置関係に違いがでるか検討し,幼児の特性では神経質・順応性によって好まれる位置関係が異なることが示唆された。ここで,同年代が多い幼稚園での環境と家庭での環境では,幼児の姿は異なると考え,幼稚園の活動の中で幼児同士の位置関係が,保護者と教師からみた幼児の特性の違いによって変化があるのか検討する。
方  法
観察対象 A幼稚園に通う3歳児クラス,4歳児クラス,5歳児クラス。対象者は全員,入園時に研究参加について保護者の代諾が得られており,所属長と担任に説明し,観察実施の許可を得た。
観察手続き 幼児が登園してから降園するまでの9:00~11:00,9:00~14:30まで観察した。観察方法は対象児を追う追跡調査を用いた。
調査 幼児の特性を検討するために,武井ら(2007)の簡易版幼児気質質問紙(18項目)を使用した。この質問紙では幼児の普段の様子について否定的感情・神経質・順応性の低さ・外向性・規則性・注意の転導性の6因子について,4件法(「全くない~いつもある」)で回答を求めた。
調査対象 観察対象児の保護者と担任の教師から観察対象児についてそれぞれ回答を求めた。
結果と考察
 Table 1は各観察対象児の保護者と教師の各下位尺度得点のうち,回答範囲が1~4であることをふまえて,保護者と教師の回答の差が1.5以上あった幼児3名の結果である。
 B児(4歳女児)は,ヨコの位置関係での関わりが多く,友達に誘導されているものがほとんどであった。また,B児は教師との関わりを積極的に取っていることから教師評定では外向性が高いという結果になったと考えられる。次に,C児(5歳男児)は興味や関心のある遊びに対して積極的に遊びを見たり,介入したりしていたが,遊びそのものに興味がある様子であったため幼児同士の位置関係は観察からは確認できなかった。しかし,多くの遊びに介入していることから教師評定では外向性が高い結果になっていると考えられる。
 D児(5歳男児)は,観察からはタテやヨコ,円の位置関係など多様な位置関係から関わっており,環境を考慮して関わっていた。順応性は新しい環境や人への慣れということから,保護者は日常の生活からそのような場面を共にすることが多いが,教師は機会が少ないことから保護者評定との差が出たと考えられる。
 以上のような保護者と教師との各下位尺度得点の違いは,幼児同士や教師との関わりを主として見ている幼稚園と親と子どもという関係から見ている家庭では見える姿が異なっているためであると考えられる。幼児の特性を評定するためには多方面から評定をしていく必要がある。