日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD17] 学びのパフォーマンスのデザイン(3)

「対話」に基づく性教育デザインの基礎研究

宮川亜実1, 郡司菜津美2, 有元典文3 (1.横浜国立大学大学院, 2.国士舘大学, 3.横浜国立大学)

Keywords:性教育、学習環境デザイン、対話

問題と目的 
 学習指導要領において性に関する内容は各学年で取り扱われているものの(森, 2016)それらは,明確な内容を示していないと斎藤(2018)は指摘する。また,性について教え方が分からない(佐光, 2014)という指導者側の課題もあげられる。そこで,性について学習する授業デザインの一助になることを目指し,本研究では対話に着目した。「対話」とは,ルールと目的を設定した上で行われる正解のない他者との言葉のやり取りと定義する。本研究の目的は,「対話」に基づく効果的な性教育を検討するにあたり潜在している課題に着目し,今後の性教育デザインの基礎研究とすることである。
方  法
 2018年10月から11月上旬にかけて首都圏の大学生(女性166人,男性169人)を対象に自記式の質問紙調査1を実施した。有効回答者は300 名(平均年齢20.01歳)であった。質問項目をTable 1に示す。
 質問紙調査から得られた記述は,意味のあるまとまりを1切片とし,KJ法を援用して分類した。
結果と考察
 女性が男性に月経について話すことができるかについては,「話せる」が14人(10%)「関係性
による」が102人(76%)「話せない」が19人(14%)であった。一方男性が女性に月経について聞くことが出来るかについては,「聞ける」11人(7%)「関係性による」93人(56%)「聞けない」61人(37%)という結果だった。各項目の記述の内容をTable 2,Table 3に示す。
 女性は恥ずかしさという感情や、話す相手と自分との関係性によって話しやすさが変化する。一方、男性は聞く相手との関係性に加え、月経に関する話をモラル・プライバシーの問題として捉え,女性に比較して話せないと感じている割合が高い傾向にあることが推察される。この結果から,性に関する捉え方や抵抗感の度合いは男女間で異なる可能性が明らかになった。
総合考察
 月経に対する捉え方に性差がある結果と男性の4割が異性の性について聞けないと回答した結果から,児童生徒にとって性に関する内容を異なる異性と「対話」することはリスクが大きいことが示唆された。よって、性差によるリスクを踏まえた上で「対話」に基づく授業デザインの検討が必要である。

1 調査を実施する際,倫理的配慮とし「月経を経験したことがある方」「月経を経験したことがない方」の2つの質問用紙を配布し,該当する方のみを回答するよう求めた。